☆服
「これから君達は安倍家の人間ではなく、旅人として動く事になるだろう。だから、狩衣など、目立つ服装は避けた方がいい。こちらで手配した物を着ると良いよ」
「何から何まで、ありがとうございます」
「こちらは大変な依頼を頼んでしまっているからね。このぐらいはしないと対等ではないだろう?」
『確かにそうだね』
「こらっ!」
紫苑さんは始終笑みを崩さないで話してくれた。
服装とかは琴平達に渡してくれたらしく、あともう少しでこの部屋に来るだろうということ。
………この部屋に? 新しい服が汚れてしまうのではないか?
『陰陽助、琴平です』
「入ってもいいよ」
琴平の声。襖が開くと、隣には紅音も一緒にいるのもわかった。手には袋を持っているな。
夏楓も無事に合流出来たようで、紅音や琴平と同じく手に袋を持っている。いや、袋じゃなくて、あれは風呂敷っていうんだっけ。
「優夏、話はもう聞いているか?」
「さっき聞いたよ」
「それなら良かった。俺達も直接陰陽頭から話があってな。これを渡された」
陰陽頭から直接?! まじかよ、す、すげぇな……。
「ものすごい眉間に皺を寄せていたみたいだがな」
「納得」
紅音の言葉でその光景を瞬時に想像出来た。
紫苑さんも言っていたからね、陰陽頭は納得していないと。それでも、こうして服を渡してくれるなんて、本当にどうやって説得したのか気になるなぁ。
「早速見せて欲しい。隣が空いているはずだから着替えておいで」
紫苑さんに言われ、俺達は隣の部屋へと移動し着替え始める。さすがに、女性と一緒というわけにもいかないから、空いている部屋を二つ使った。
琴平から預かった風呂敷を開けると、中からは子供用の小さな服一式が入っている。えっと、な、何から着ればいいんだ?
あれ、ワイシャツっぽい服があるな。袖は狩衣と同じく広いし、ズボンは七分丈っぽいな。なんだこれ……。着物とかじゃないんだ。というか、ワイシャツってこの時代にあるの?
「何を固まっているんだ?」
「いや、なんか予想外すぎて……」
「そうか? とりあえず、早く着替えるとしよう。時間がもったいないからな」
「あ、そうだね」
とりあえず、ワイシャツは中だよね。間違えないように気をつけよう。
☆
俺と琴平は着替え終わった。鏡の前に立ち姿を確認してみたんだけど。
「へぇ、この時代にこんな服あるんだね」
俺が着たのは、狩衣のような袖の広い青色の長い上着に、中は白いワイシャツ。ズボンは七分丈だ。
肩あたりに関節の折り曲げがしやすくなのか、切れ目が入っている。腰あたりに長い上着を固定させるためのベルト。
なんか、郵便屋さんみたいな雰囲気もあるな。へぇ、オシャレェ〜。
「結構動きやすいし、軽い。これ、何で出来ているんだろう……」
「それは特に考えなくてもいいだろう」
「いや、少し気になっ──こんの、いけめんがぁぁああああああ!!!!!」
「っ、いきなりどうした?」
琴平も着替え終わったみたいだけどさ!!! 服を変えただけで、今までよりめっちゃ輝かしいモデルみたいになっているのはなんなんだよ!!!
というか、西洋風っぽくない? いや、でも和風といえば和風か。
袖が広い青色のロングコート。中も青色の袴を着ているのか? ズボンは完璧袴だね。
琴平は氷を扱うから青主体なのか? くそっ、大人の服……か。色っぽさが醸し出されているよ。
「とりあえず、紅音と夏楓も着替え終わっている可能性がある。一度、陰陽助の部屋へと戻ろう」
「うん……」
「優夏」
「なに?」
「すごく似合っている。さすが闇命様だ」
「あ、ありがとう? 褒められているのが俺じゃないとわかる最後の言葉……。悲しいなぁ」
「あはは、仕方がないだろ。優夏本人の姿を俺は知らないんだから。褒めようにも無理だ」
確かにそうなんだけどさぁ。俺本人が仮に、こんなかっこいい服を着たとして…………地味な姿で終わりそう。それか、服に着られている人。はぁ、ある意味闇命君の姿で良かったのかもしれないな。
そんな会話を交わしながら部屋を出て、紫苑さんの部屋へと戻る。
まだ紅音達は着換え終わっていないみたいだな。部屋には紫苑さん一人で資料を見ている姿。
二人はどんな感じの服なんだろう。見た目は凄く綺麗な二人だし、どんな服も似合うんだろうなぁ。
「おや、着替え終わったみたいだね。うん、思った通り、よく似合っている。お取り寄せしたかいがあるよ」
「わざわざありがとうございます」
「私が着て欲しかっただけだから気にしなくていいよ。おそらく、女性二人ももう少しで着替えが終わると思うから、楽しみに待っていようか」
「分かりました」
ひとまず、新しい服が汚れないように、筆の近くには近づかないようにしよう……。せっかくの新品が黒く染ったら嫌だしなぁ。
「闇命様、今後の行動について話し合いたいのですが、姿を現して頂いてもよろしいですか?」
『別にいいけど、僕の姿は変わらないからね。変に期待しないで』
「…………大丈夫です。本当に話し合いがしたいだけなので……」
いや、闇命君の変わらない姿を見て、明らかに落ち込んでんじゃん琴平……。
見たかったのね、半透明闇命君でも。見た目は全く一緒なんだから、僕でもいいと思うんだけど……。雰囲気が違うのかな、やっぱり。
とりあえず、その事は隣に置いておいて、紅音達が戻ってくるまでこれからの話をしようか。
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