死への予言
魔魅ちゃんの準備も整い、俺達は馬車に乗る。
それにしても、魔魅ちゃん、可愛い姿になったなぁ。
袴を基調とした服に、淡いピンクの髪飾りで黒い髪をおさげに。桜色の羽織を肩から掛け、草履を履いている。
「かわいいね、魔魅ちゃん」
「っ!! …………」
あれ、顔を逸らされてしまった。何か嫌だったかな。
『そういう事、あまり言わないで』
「え、思ったから言っただけなんだけど……」
『それでもやめて』
「わ、わかったよ……」
なんか、闇命君が複雑そうな顔をしてる。
なんでだろう。まぁいいか、気をつけよう。
「それじゃ、行ってくる」
「お気をつけてください!!! 何かあれば、必ず戻ってきてください!! ここは貴方の居場所ですのでぇぇえ!!」
岱平さんが魔魅ちゃんの荷物を持ち、服を直して笑顔で見送っている。
なんだか、お父さん……いや、お兄ちゃんみたいだな。俺は一人っ子だし、少し羨ましい。
「それでは岱平さん。魔魅ちゃんをお預かりします」
「怪我をさせたら許さぬからな!!!」
「き、肝に銘じます……」
最後に挨拶をして馬車に乗り込む。魔魅ちゃんの荷物は夏楓が持ってくれている。
岱平さんの他にも数人、見届けてくれているが、どこか義務的だ。これが陰陽寮なんだろうな。
まだ漆家は岱平さんのような人が上にいる分、ましかもしれない。他は安倍家のように腐っている可能性もある。
俺は、そんな陰陽寮を変えられるのだろうか。
いや、変えるんだ。俺達で。
外を眺めていると、魔魅ちゃんが俺の服を引っ張ってきた。不安なのかな。
「魔魅ちゃん、大丈夫だよ」
「…………不安、ないよ」
「え、不安じゃないの?」
「うん。だって、お兄ちゃんがいるから!!」
勢いのまま、魔魅ちゃんが抱きついてきた──ん?!
「え、どうしたの魔魅ちゃん!?」
「お兄ちゃん、ありがとう」
え、あ、ん????
「え、えっと。どういたしまして?」
胸に顔を埋めていた魔魅ちゃんが顔を上げる。
その表情は幼く、優しく、楽しそうに笑っている。
…………この笑顔が見れただけで、十分かも。
「これからよろしくね、魔魅ちゃん」
「うん!!!」
※
「『件、我々の道を指す道標となれ。急急如律令』」
馬車の中で、次の行き先を決めるため、件の予知を聞くことにした。
肩の上には鼠姿の闇命君。左隣には魔魅ちゃん。向かいには夏楓と紅音。琴平は御者席から小窓越しに様子を見ている。
そして、目の前に現れた件。
……俺の知っている件じゃなかった。
「え、どなた様?」
『件ですよ、主』
「…………俺の知ってる件じゃない」
いやいやいや!!! 絶対違うだろ!!!
なんで人型になってるの?! しかも美形の少年なんだけど?!
牛の体どこ行った?!
「俺、間違えて出した?」
『式神になると、術者の理想が少し影響されるんだよ。美形になってほしいとか思ってたんじゃない?』
「思ってない思ってない。それに河童はそのままだったじゃん」
『逆に、あれ以外の河童って想像できる?』
「…………できないな」
金髪に、金色の瞳。
貴族の子供のような姿。
よく見ると、少しだけ牛要素も残っている。ズボンにアップリケみたいな牛の顔。
「……理想が反映されるなら、百目が整ってるのって闇命君の理想?」
『元々悪くなかったらしいよ。姫の護衛もしてたくらいだし』
「へぇ。……“らしい”?」
『父さんの式神だからね。詳しくは知らない』
「あぁ、なるほど」
そんな話をしていると、紅音からの無言の圧。はい、すいません。
「えっと、件。俺達の未来を見てほしい」
『主の仰せのままに』
件は正座し、金色の瞳を向けてくる。
……ちょっと怖い。吸い込まれそうだ。
目を逸らさないようにしていると、瞳が一瞬光った気がした。
『…………っ!!』
次の瞬間、件の表情が変わる。
「な、何が見えたの……?」
『……そ、それが……』
言いにくそうに視線を逸らす。先は御者席。
「琴平?」
件は気まずそうに琴平を見ている。
「どうしたんだ、件」
『…………次、村。一人の男の胸に──……』
その予言は、全員を動揺させるには十分だった。
「…………胸に刀が刺さり──死ぬ?」
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