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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 桜桃
第三章 水仙家

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前進

 男性が村の中で、胸に刀を刺されて死ぬ。

 この場で「男性」と呼べるのは一人。


「…………琴平(ことひ)


 紅音が顔を青くし、震える唇で琴平の名を呼ぶ。

 当の本人は、表情を変えず顎に手を当て考え込んでいた。……え、余裕?


「で、でも。琴平と決まったわけじゃないよね? これから誰かと出会う可能性だってあるし」

『気が動転してるのは分かるけど、一度落ち着いたら? 考えるべきは”誰が死ぬ”じゃない。”誰かが死ぬ”だよ。だけど、確実に琴平だろうね、可能性が高いのは。……だよね、件』

『…………はい』

「うそっ………」


 琴平が、死ぬ?

 刀……となると──


「…………靖弥」

『決めつけはよくない。それこそ足元をすくわれるよ。刀を使う者は他にもいるし、百目もそうだ。他の妖の可能性もある』

「そ、うだね……」


 思わず琴平を見るが、表情は変わらない。眉一つ動かさず、ただ冷静。


「琴平、大丈夫?」

「問題ないと言えば嘘になるな。まさか、このような予言をされるとは思わなかった」


 一拍置いて、件に問いかける。


「件、周りの状況は分かるか?」

『周り?』

「俺の周囲だ。琴平がそのような状態になっているということは、紅音や夏楓も戦闘中のはずだ。式神の状態や戦況、闇命様の安否も知りたい」


 戦況が分かれば、回避できるかもしれない。

 予言は絶対じゃないはずだ。穴はある。……あってほしい。


『……少し、待ってください』

「あぁ」


 また俺を見る。いや、もう十分怖いんだけど……。


『…………分からない』

「……え?」

『見えません。周りが真っ暗で……闇の中にいるような……』


 見えない? 暗闇……。

 つまり、琴平は一人で──?


『あ……見えた。でも、これは……言うのが、怖いです』


 件が体を抱えて震え出す。


「く、件? どうした?」


 肩に手を置いても、震えるだけで何も言わない。


 ……何が来るんだよ。


「…………怖いんだが」

『それは琴平だろ。いい? これから絶対に一人になるな。僕か紅音のそばにいろ。別行動は禁止』

「はい、気をつけます」


 闇命君の指示に、琴平は素直にうなずいた。

 そのまま件を御札に戻し、馬車は再び動き出す。


「…………」


 誰かが死ぬ。

 また、助けられないのか。


 怖い。また同じことを繰り返すのか。


「…………靖弥…………」

『……っ、しっかりしろ!』

「っ!」


 闇命君の声が鋭く飛ぶ。


『今弱気になってどうする? 考えるべきは”その時”じゃない。”そうさせない方法”だろう?!』


 口調が強い。

 ……闇命君も、怖いんだ。


「…………そうだね。未来は変わる。変えないといけない。ここで止まるわけにはいかない」

『当たり前のこと言わないで。ウザい』

「一回埋める?」

「その前にワタシが貴様を埋める」

「大変申し訳ございませんでした」


 やばい、紅音の前で言った。

 完全にミス。


 夏楓はクスクス笑ってるし……いや助けて。

 紅音の目、ガチで怖いんだけど。


『…………ばーか』

「……スイマセンデシタ」


 こんの、クソガキがぁぁぁあああ!!!!!


 ※


「件は“村”と言っていた。つまり……どこの村?」

『まずは考えてから口にする事を覚えなよ』

「うん。今のはマジで反省した」


 これから向かう場所。結局、何も絞れなかったな。

 ……あ。魔魅ちゃん、めっちゃ不安そうだ。俺の服を掴んだまま何も言わない。


「大丈夫だよ。ごめん、不安にさせて」

『ほんとだよ。そんなんでこれからやっていけるの?』

「我慢だ、俺……我慢……」


 頭を撫でていると、魔魅ちゃんが俺の手を両手で包み、顔の近くへ持っていく。


「……いたいのいたいの飛んでいけ」

「魔魅ちゃん……ありがとう」


 素直でいい子だな。本当に。

 どこかの天才陰陽師とは大違いだ。


『噛まれたいみたいだね。鼠に戻ろうか?』

「紅音と夏楓と俺の耳の為にやめてください」


 闇命君は二人の間にちょこんと座っている。

 ……そこ選ぶ? まぁ、二人が嬉しそうだからいいか。


「闇命様。この先に、水神が住むと言われている水歌(すいか)村があります。水仙(すいせん)家もそこに」

『そうなの? ありがとう夏楓。なら、水仙家に向かおう。七人ミサキの共有と、関係作りだね。……説明はこいつに任せるけど』

 

 はい、俺ですね。

 もうここまで来たら、いきあたりばったりだ。


『変な事言ったら噛むから』

「ウィッス」


 こえぇぇえええ!!!


 ※


「ここから先は歩きだが、大丈夫か?」

「あ、うん。降りようか」


 馬車を降りた先には、見た事もないほど巨大な木々。

 安倍家の周りとは比べ物にならない。まさに巨木。


 夕暮れの光が差し込んで、森全体がオレンジに染まっている。


 ……すごいな、これ。


「おおきい……」

「だね。こんな木、見た事ある?」

「ううん」

「俺も初めて。うまく言えないけど……すごい」

「うん!! すごくおおきい!!」


 無邪気だなぁ……かわいい。


 魔魅ちゃんの頭を撫でながら前を見る。

 ……なんとなく、この大きな巨木、中の村を隠している感じがするんだよなぁ。


 小さな村って言ってたし、守るためかもな。


「優夏、足元に気を付けろ」

「あ、うん。ありがとう」


 紅音と夏楓も慎重に後ろを歩いてくる。

 まだ明るいけど、長居は出来ない。森で夜を明かすのは避けたい。


「闇命君、大丈夫?」

『何が』

「状況とか、精神的に」

『問題ない。あんたに心配されるほどじゃないよ』

「……もういいです」


 心配して損した。

 でも俺はまだ怖い。この先、何が起きるのか。


「優夏。何を考えているかは知らんが、今は気にするな。俺も気にしていない」

「琴平……」


 一番当事者なのに、平然としてる。

 ……本人が気にしないと言っているんだから、切り替えないとな。


「あ、そういえば。水仙家ってどんな陰陽寮?」

「詳しくは知らんが、水を扱う一族だったはずだ」

「水?」


 水を扱う、とは?


「あと、水神様が住む湖が近くになるとかも聞いたことがあるな」

「水神様?」


 聞き返すが、これ以上のことは、琴平もわからないらしい。

 すると、夏楓が手を上げた。


「水神様については、“穢れた者には罰を、清らかな者には幸を”と伝えられています」

「へぇ、なるほど。つまり、水を大事にすれば水神様の怒りには触れないという事か。幸も欲しいけど、高望みしてはいけないよね」

『高望みするくらいの技量、君自身にはあるの? ほとんど僕の力で助けられているくせに』

「はいはい、スイマセンデシタ」


 ちょっと言っただけでこれだよ……。


「道が開けてきたぞ」

「村、近い?」

「あぁ。だが優夏、こっちを見てみろ」

「え?」


 呼ばれて近づくと──


「……っ、すごい」


 木々の隙間から、透き通った湖が見えた。

 波もなく、夕日を反射して輝いている。


「闇命君!! 見てる!? めっちゃ綺麗!!」

『見えてるに決まってるでしょ。子供みたいに騒がないで』

 

 ……いや、目キラキラしてるじゃん。

 口と表情があってないよ。


「そろそろ行くぞ」

「あ、うん」


 紅音に肩を叩かれ、後ろ髪引っ張られるような気持ちで歩き出す。


 水仙家との接触。

 七人ミサキ。

 そして靖弥。


 やる事は多い。


 ──でも。


 件が見た未来になんて、絶対にさせない。

 絶対に、覆してやる。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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