口調
「闇命君、ちょっと」
円から離れて呼ぶと、闇命君は素直についてきた。
『なに?』
「陰陽頭がいない今、不安定な漆家に取り入るなら今がチャンスだ。まずは漆家から攻めない?」
『どうするつもり? 陰陽頭は面倒だし、動きにくくなるから嫌だよ』
「ならならなくていい。管理が安倍家になるなら、口を出す権利くらいはあるはずだ。陰陽頭を探しつつ内情も探る。その上で、実力主義の規定を変える。そうすれば、実力だけで子供が上に立たされることも減ると思う」
『それはどうでもいいけど……漆家から変えるのは賛成。土台が崩れてる今なら、やりやすい』
言い方は完全に悪役だが、否定できない。
そのまま円に戻る。
「陰陽頭は陰陽允の人を軸に考えるとして、管理は安倍家。もしくは他の寮に協力を仰ぐ。その際、必ず闇命君か琴平を同席させてください」
「なぜだ」
「目的、忘れてませんよね。陰陽寮の暗黙の規定を変える。そのためには情報が必要です。交渉の場に入れないと困る」
正面から言う。
すると、雨燕さんの表情が険しくなる。
「……まだワシは許していない。闇命が外に出ることをな」
「……そうですか。なら、いいです。勝手にやります」
「なに?」
あ、これ言い過ぎた。
「貴様……」
「すみませんすみません!! 調子乗りました!! 本当にすみません!!!!」
怖っっっっ!!!
やばい、完全に地雷踏んだ。
『雨燕』
「何を言われても変わらん。貴様は安倍家の人間だ。出ることも、漆家に関わることも許さん」
……まずい。
どうする。
何を言えば――
その時。
『…………あーもう、うるさいな』
「え?」
空気が変わる。
闇命君が、震えている。
『どいつもこいつも、うるさいんだよ!!』
「ちょ、闇命君!?」
声が違う。
『安倍家だの、天才だの、子供だの……もううんざりだ。縛られてるだけの人生なんて、もう嫌なんだよ!!』
――ああ。
そうか。
ずっと我慢してきたんだ。
革命もできなかった。
環境も変わらなかった。
ただ、耐えるだけ。
でも今は違う。
手が届きそうなんだ。
だから――伸ばした。
『わかってる。簡単じゃないことくらい』
「なら――」
『今までの安倍家ならね』
闇命君は笑う。
強気に。
「……そこまで考えていたのか?」
『いや、そこまでは。でも、“やれ”って言ったのはそっちでしょ?』
……何の話だ?
困惑していると、琴平が口を開いた。
「……もう諦めてください。我々の意思は変わりません。必要なら、件で証明します。闇命様の式神のね」
件。
それを“使う”のか。
「ここでワシが折れても、他がどう動くか分からんぞ」
『それでもいい。まずは一人目の邪魔を排除できる』
「言い方!!」
火に油すぎる!!
でも――止まらない。
『何を言われても変えない。もう嫌なんだ。ここまで来て、諦めたくないんだ』
一歩、前に出る。
『やりたいことも、継いだ想いも……もう、無駄にしたくない』
そして。
『もう――私を縛らないでくれ!!!』
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