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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 桜桃
第三章 水仙家

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洗脳

 無事に俺達は、件を式神にすることに成功した。

 井戸から出ると、心配そうな顔の琴平と紅音が駆け寄ってくる。その後ろには雨燕さん。さらに、複雑な表情の村長もいた。


「優夏、無事だったか?」

「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう、琴平」

「闇命様の体に何かあったら困るからな」

「俺の心配もしてほしい……」


 いや、それ俺にも当てはまるけど。

 ……でも、なんか違う。違うんだよな。


 紅音は紅音で、半透明の闇命君に一直線。

 俺は素通り。……まぁ、いいけどさ。


 はぁ……。結構頑張ったんだけどな。虚しい。


 ――ん?


 頭に、温かい感触。


「ん? どうした、琴平」

「優夏もお疲れ様だ。本当に無事でよかった」


 琴平が、頭を撫でていた。


 不意打ちだった。

 思考が追いつかない。


 でも――どうでもよくなる。


 懐かしい。

 父さんや母さんに撫でられていた時みたいな感覚。


 欲しかったわけじゃない。

 甘えたいわけでもない。


 それなのに、体がじんわり温かくなって――目の奥が熱い。


「ど、どうした優夏。嫌だったか?」

「っ、優夏? 大丈夫か?」


 二人が顔を覗き込む。

 そりゃそうだ。急に泣いたんだから。


「だ、大丈夫……」


 そう言っても、撫でる手も、背中をさする手も止まらない。


 ……なんだ、これ。


 違う。

 これは、俺の感情じゃない。


 温かい。優しい。心地いい。

 でも、この涙は違う。


 何かが、心を掴んでくる。


 違和感。


 ふと、前を見る。


 闇命君と目が合った。


「これ、もしかしてあん──」

『とりあえず、件は式神にできた。僕達の勝ちだよ』


 ――話を逸らしやがった。


 まったく。素直じゃないガキだ。


 あーもう。涙止まらねぇし。


『雨燕。多少引っかかる点はあるけど、件は手に入った。これで道満とセイヤの居場所を探り、陰陽寮を辿る。情報を共有しながら、革命を起こす』


 隣に立つ。

 涙を拭いながら、雨燕さんを見上げる。


『最終目標はセイヤの奪還と、陰陽寮の規則改定。それと蘆屋道満の対処。動きは件で予測する。得た情報は安倍家にも共有する。悪い話じゃないと思うけど――それでも邪魔する?』


 件を手に入れた。

 俺達は一歩進んだ。


 ここからは、今まで通りじゃダメだ。

 変えないといけない。


 この、どうしようもない常識を。


 ※


 もうこの村に用はない。

 それにしても、不気味な村だ。


 隠れていたとはいえ、誰も気づかない。

 気にもしない。


 おかしいだろ。


「……村長」

「どうしましたか?」


 村長の家へ向かう途中、声をかける。


「なんでこんなに平和でいられるんだ? いいことだけど……正直、不気味だ」

「件がこれまで予言をしておりました。それを守ってきたのです。何が起きても、件がいれば大丈夫――そう思っているのでしょう」


 なるほど。


「だから、俺達の行動も気にしなかった?」

「……そういう面もあるかと」


 納得はできる。


 でも――怖い。


 これ、ほぼ洗脳だろ。


 この村にとって、件は神様。

 だから近づいた人間は、罰を受ける。


 理解はできる。納得はしない。


「……信仰、強すぎだろ」


 ふと、現代のことを思い出す。

 よくインターホン押してくる、ああいう人達。


 ……ドア、開けなくて正解だったな。


 ※


「どっこいしょっと」

「ん? なんだそれ」

「優夏、それは何かの祝詞か?」


 え、嘘だろ。どっこいしょ知らないのか?


 琴平と紅音が同時に首を傾げる。

 ……なんか似てるな、この二人。


『今はどうでもいい。早く本題に入るよ』

「どうでもいいけど、言い方……」


 村長の家で円になり、向かい合う。


 改めて見ると――顔面偏差値、高すぎだろ。

 美男美女しかいない。……今の俺もだけど。


『じゃあ、まずこの村について。この村は件で成り立っていた。その件はもう僕のものだ。このままだと、いずれ立ち行かなくなる』

「どうするつもりですか」

『前にも言ったけど、安倍家で管理するか、他の寮に任せるか。もし、安倍家なら雨燕に任せる』

「勝手に決めるな」

『最適案を言ってるだけ。説得は得意でしょ。件の“信仰”を塗り替えればいい』

「洗脳ではない」

『はいはい』


 軽いな……。


『とにかく、この村はそうやって存続させる。次に漆家。次の陰陽頭は決まってないはず。側近はいなかったの?』


 闇命君の視線が、琴平に向く。

 ほかの寮、本当に興味がなかったんだなぁ。


「詳しくはないが……側近はいたはずだ。志美津という女性だ」

「うろ覚え?」

「ああ。目立たなかった。陰陽頭の後ろにずっといた印象だ」

「なるほど」


 整理すると――

 陰陽頭が魔魅。側近が志美津。陰陽助は別。


「陰陽助は?」

「いますが、よくいなくなるのでいないものとして見ています」

「自由すぎない?」

「女性に目がない方ですので」


 ……なるほど。

 なんか、最近女性好きな人の話、聞いたなぁ。過去話で。


「じゃあ、その人が次の陰陽頭になるんじゃ?」

「僕は反対です」


 即否定。まあ、そうなるか。


「他にいないのか」

「陰陽助は一人だけです。漆家はそこまで大きくありませんので」

「そりゃそうか」


 話が詰まる。

 なら、その下は――


『陰陽允って言いたい?』

「それ。それって下の位?」

『違うけど、上層ではある。資料管理とか担当だね。漆家なら、その人でもいいかも。でも、いきなりは厳しい』

「だよな……。それなら、一時的に安倍家から貸し出し、とか無理かな」

『……アリだな』

「え?」


 あ、アリ? 貸出が?


『雨燕』

「断る」

『まだ何も言ってない』

「分かる」


 ……まあ、そうなるよな。


 雨燕さんを漆家に、って考えたんだろう。

 無理に決まってる。


「闇命様が漆家の陰陽頭代理になるのはどうでしょう!?」

『紅音、今は黙ってて』

「……はい」


 しょんぼりするなって。

 琴平も肩叩いてるし。


 ……でも、闇命君が陰陽頭か。


 悪くはない。

 けど――動きにくい。


 これから動くのは、現場だ。

 縛られる立場じゃない。


 別の形で、漆家に食い込めないか――。

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回も読んでいただけると嬉しいです


出来れば評価などよろしくお願いいたします( *´꒳`* )

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