悪業罰示式神
「……──と、こんな感じだ。うまく説明できず、すまない。当時は余裕がなくてな」
「ううん。ありがとう」
琴平は終始、淡々としていた。
感情を押し殺しているのかもしれない。
でも、これ以上は聞かない方がいい気がした。
「でも、闇命君……変わったんだね」
「ああ。変わってしまった」
“しまった”。
その一言が重かった。
環境が悪すぎたんだろう。
革命は失敗し、父の意思も継げなかった。
「でも、驚いたな。昔の闇命君たちも、俺と同じことを考えてたなんて」
「……力不足だった。だが今回は一人多い。可能性は低いが、やる価値はある」
「あくまで低いんだな」
琴平は否定しなかった。
「昔、あちこちに喧嘩を売ったからな。今の方が動きづらい」
なるほど。
信用がないのか。
「それで優夏。これからどうする。陰陽助は邪魔をしてくるぞ」
「なら、もう一人の陰陽助に頼る。それでも駄目ならこじ開ける」
それが、できる。
「今は闇命君たちもいるしね」
それだけで、できる気がした。
絶対に失敗できない。
今度こそ。
煌命様の願いを――
「……あっ」
「どうした?」
そこで気づいた。
「俺、闇命君にすごく酷いこと言ってしまった」
「ひどいこと?」
「何もしないで諦めてる、みたいなこと」
琴平が黙る。
「でも、実際は違った」
革命を起こそうとしていた。
途中で潰されただけだ。
「そうだな」
琴平は頷く。
「闇命様は気にしていないと思うが、気になるなら謝ればいい」
「うん。謝る」
「いい子だ」
ぽん。
頭を撫でられた。
「子供扱いしないでよ……」
「子供だからな」
反論できなかった。
「戻るぞ。闇命様もまだ起きている」
「うん」
宿へ戻る。
襖を開けると、闇命君を囲んで夏楓と紅音が話していた。
「あ、おかえりなさい」
「…………」
夏楓は笑顔。
紅音は無言。
闇命君は、閉じていた目を開いた。
『なに?』
完全に察している顔だった。
『何か言いたそうだけど』
「うん。もし可能なら、半透明になってくれない?」
怪訝そうにしながらも、闇命君は姿を変える。
すると琴平が空気を読んで立ち上がった。
「行くぞ」
紅音と夏楓もついていく。
襖が閉まった。
『それで?』
闇命君の前に座る。
そして頭を下げた。
「ごめんなさい!!」
『……は?』
「俺、何も知らないくせに偉そうなこと言った!」
沈黙。
『ああ』
闇命君が納得したように頷いたみたい。
『琴平に聞いたんだね』
「うん」
『別に謝らなくていいよ』
「え?」
『君は知らなかったんだから』
顔を上げると、闇命君は肩をすくめていた。
『それに、僕も話してなかったし』
「でも……」
『怒る理由がない』
本気で不思議そうだった。
「でも、俺は――」
『それに』
闇命君が遮る。
『結局、結果を出せなかった』
静かな声だった。
『途中で諦めたんだから、何もしていないのと同じだよ』
「そんなこと……」
『ある』
即答だった。
『現に、君は勘違いした』
「うっ」
痛い。
反論できない。
『でも、今回は違う』
闇命君が笑う。
『絶対に結果を出す』
強い目だった。
『周りの大人を認めさせる』
そして。
『革命を起こす』
吹っ切れた顔だった。
「――うん!!」
大きく頷く。
『なら、バカなことをバカみたいに長々と考えてないで、次の行動を少しでも考えなよバカ』
「なんで最後に馬鹿って言うの!?」
本当にひどい。
※
一晩明けた。
俺と闇命君は再び、井戸の中にいる。
『いるね』
「もう復活したのか」
暗闇の奥。
人ではない気配。
水音が響く。
肌がざわつく。
『これ以上は危ない』
「どうするの?」
倒しても転生する。
『倒す直前に式神にする』
闇命君が言う。
『まずは動きを止める方法だけど――』
考え込む。
その間、俺は周囲を見回した。
「……ん?」
天井に何かある。
御札だ。
一枚。
二枚。
十枚以上。
これで封じていたのか。
『見つけた』
闇命君が顔を上げる。
『方法がある』
「ほんと?」
『ただし一人じゃ無理』
「なんで?」
『件の予言は視界内が対象だから』
なるほど。
見られたら終わりか。
『よし。暗闇を使う』
「うん」
『雷火を出して』
「え」
『早く』
「あ、はい」
説明がないのはいつものことだ。
「『雷火、光となれ、急急如律令』」
雷火が現れる。
だが次の瞬間。
『件の視界を潰せ』
閃光。
「っ、眩し!?」
目が焼ける。
直後。
件の叫び声が響いた。
視界が戻る。
件は目を押さえていた。
『今だ! 川天狗を!』
「っ! 分かった!」
札を投げる。
「『川天狗、人の先を見るモノを溺れさせよ、急急如律令!!』」
川天狗が現れた。
件の頭を押さえつける。
『やめろ……』
件が震える。
『やめろぉぉぉ!!』
絶叫。
怯えている。
何を見せられてるんだ?
やがて。
件は動かなくなった。
「何したの?」
『後で』
即答だった。
『今は式神化』
「あ、うん」
気になるけど!
『真似して。力を札に流す』
「分かった」
深呼吸。
そして、唱える。
「『現世を放浪するモノ、名を件。我を主とし、下僕となれ。屈服せよ――急急如律令』」
光が弾けた。
件が札へ吸い込まれていく。
力が流れ込む。
綺麗だった。
苦しくない。
温かい。
やがて光が消える。
「……成功?」
『多分』
一拍。
「はぁぁぁぁぁああああああ!!」
腰が抜けそうだった。
怖かったぁぁぁああ!!
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




