心からの安らぎⅤ
『ち、力が欲しいか? 君は……?』
『私の名前は安倍闇命。安倍家の者だよ。多分、父さんに会ったことあるんじゃないかな』
『と、うさん? も、もしかして、煌命さん?』
『そう、私の父さん。……君、まだ現実を受け止めきれていないみたいだけど、このまま同じ生活を続けたい?』
その言葉は、心を覗かれているようだった。
闇命様の目も、すべてを見透かしているように光って見える。
すぐには頷けない。
思わず後ろの紅音を見ると、同じように顔を青くしていた。
『……現実を受け止められていないっていうのは分からない。でも、最初の言葉はどういう意味だ? 力が欲しいって』
『私達のもとで陰陽師にならない? 君達のような存在が欲しい』
強い言葉だった。
目も、まっすぐで――嘘には見えない。
紅音も気になったのか、隣に来て闇命様を見下ろしている。
『簡単に言えば、安倍家に来ないかってこと。無理強いはしないよ。でも……今の君達は、見ていられない。来てくれたら嬉しい』
まっすぐすぎる言葉だった。
断る理由が、出てこない。
気づけば、頷いていた。
『ほんと? やった!』
闇命様は満面の笑みを浮かべ、子供みたいに喜ぶ。
その様子に少し戸惑う。
けど――
そろそろ、変わらなきゃいけないとも思った。
それから俺達は安倍家に入り、闇命様と煌命様のもとで陰陽術を学び、力を得た。
紅音は巫女の力を手に入れ、さらに体も鍛え始めた。
少しでも力になろうと、努力し続けてくれた。
それが、どれだけ支えになっていたか――
何度も逃げたくなった。
この、胸糞の悪い場所から。
それでも、闇命様と煌命様のため。
そう決めたから、やりきった。
――だが。
『私の命は、もう長くない。次の陰陽頭は闇命にするつもりだ』
『で、ですが……闇命様はまだ……』
『ああ。早いのは分かっている。周りも認めないだろう』
煌命様は、静かに続けた。
『だから、闇命が成長するまで、別の者に任せる。この家では立場なんて名前だけだ。正直、誰がなっても構わない』
そこで、一度言葉を切る。
『……だから、変えてほしい。この陰陽寮を。私にできなかったことを』
その言葉を最後に、煌命様は目を閉じた。
それから――変えようとした。
闇命様と、一緒に。
途中で夏楓も加わり、事情を話して協力を求めた。
それでも――何も変わらなかった。
すべてがもみ消される。
行動も制限される。
すべて監視される。
もう、結局、諦めるしかなかった。
そして今。
闇命様は遠巻きにされ、自由を奪われている。
理由をつけられ、行動範囲も狭められた。
世界が、どんどん小さくなっていく。
――俺達は、何もできなかった。
煌命様の想いを、受け継ぐことを。
途中で、諦めてしまったんだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んで頂けると嬉しいです
出来れば評価などよろしくお願いいたします( *´꒳`* )




