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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 桜桃
第二章 死絡村

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無力

「何をしているんだ、セイヤ」

「申し訳ありません。捕まえたと同時に噛まれてしまい、少し取り乱しました」


 いや、確かに噛んだけど。


 今、大袈裟によろけなかったか?

 わざと鈴を鳴らしたように感じるんだけど。


 …………目が、道満とは違う。

 濁ってはいるけど、その中には強い何かを感じる。


 使命や忠誠心とも違う。

 まるで後悔の念のようなものが、今のこいつを雁字搦めにしているように見える。


 この、妙に感じる違和感はなんだ?


「まぁ、良い。ひとまず、晴明の子孫を──」

『や、やめろ!! 僕に触れるな!!!』


 道満が僕の体に手を伸ばす。

 やめろ、僕の体にその汚い手を近づけるな!!


 ――――ガシッ


「見つけたぞ闇命よ。貴様がやられるとはな」


 っ! 遅いよ……くそじじぃ。


「どこから湧いて出てきた。安倍家の者よ」


 じじぃだから耳が遠いかと思ったけど、鈴の音はしっかり聞こえていたみたいで安心したよ。


 雨燕が、僕の体に伸ばされた道満の手首を掴み、動きを止めて睨みつけている。

 その瞳は鋭く、射抜くような眼光。そこだけは認めてあげるよ。


 それでも、道満の余裕そうな笑みは消えない。雨燕の様子を見て楽しんでいるようにも見える。


 何がそんなに面白いんだ。

 気持ち悪く口角を上げるな。吐き気がする。


 とりあえず、これで僕の体は大丈夫だろう。

 嫌いだろうと、雨燕は僕の体を守るはずだ。


 不愉快だけど、今は仕方がない。

 こっちはこっちで行動するか。


『お前、何を考えているんだ』

「何の話だ」

『とぼけるな。さっきの行動といい、今も。なぜ殺そうとしない』

「殺したところで、他の憑依対象に移るだけだと分かっているからだ。意味のないことはしない」

『そんなの分からないだろ』

「殺して欲しければ殺す。今ここから地面に叩き落とせば、鼠といえどただでは済まないだろう」


 ちっ、今はこいつに主導権を握られている。

 変に挑発するとまずいか。


 っ、何の前触れもなく、セイヤが木から落ちるように降りた。


「セイヤ。早くこいつを殺れ」

「承知しました」


 えっ、承知しました?


『わっ!!』


 ────ポテッ!


 いたた…………。地面に落とすなんて……。

 僕が体に戻ったら絶対に復讐してやるからね!


 僕から目を離したセイヤが、刀を雨燕に向けて構えだす。

 夕暮れの光を反射し、鋭く光っている。掠っただけでも簡単に肉がえぐれそうだ。


「若造に任せるとはな」


 雨燕は武器である小刀を懐から取り出し、セイヤへと構えた。

 それを出したということは、割と本気だな。


 あっちはもう、雨燕に任せよう。

 こっちは、セイヤが僕を自由にしたとはいえ、何も出来ない。


 せめて、優夏を起こすか。

 体に衝撃を与えれば起きるだろう、多分。


 まだ気絶している優夏の耳を、傷がつかない程度にガブガブと噛むが、起きる気配がない。


『おい、早く起きろ! このままじゃまずいぞ! 起きろって!!』


 くそっ、起きる気配がないな。

 今ここで姿を現すわけにもいかないし、半透明じゃどっちにしろ何も出来ない。


 今の僕は、本当に何もできない。

 ただの役立たず…………。


『くっ、くそ…………なんでさ、なんでなのさ』


 …………早く起きてよ、優夏。


『優夏、早く起きっ──え』


 風を切る音。上を向くと、何故か小刀が回転しながら落ちてき……なっ!?


 カツン────


 あ、危な。あともう少し横にずれていたら、僕の顔に傷がついていたよ。


 いや、それでは済まされなかったかもしれない。というか、小刀って──


『っ、なんで、あんたが押されてるんだよ……』


 やっぱり二人を相手にするのは、いくら雨燕でも無理があったということか。


 セイヤの刀を、雨燕が鬼熊を出して何とか防いでいる。

 鬼熊の見た目はただの熊だけど、野生の熊とは比べ物にならないほど腕力が強く、一撃一撃が重いのが特徴だったはず。


 それなのに、セイヤは速さを活かして鬼熊を斬る。


 もう一体は、道満の式神だな。

 陰摩羅鬼(おんもらき)だ。


 確か、新しい死体から生じた気が化けたものだったはずだ。

 十分な供養がされなかったとか。


 見た目は鳥だけど、人のような顔。

 くすんだ濃い緑色の羽を大きく羽ばたかせ、雨燕の式神に突進している。


 鬼熊も決して弱くない。むしろ強いだろう。

 それでも押されている。雨燕が集中できていないのも原因だろうね。


 陰摩羅鬼だけなら互角かそれ以上で戦えるだろうけど、そこにセイヤが加わっている。

 セイヤが雨燕の集中力を削いでいるため、鬼熊が本来の力を出し切れていない。


 雨燕の武器。これを渡せば、また戦況は変わるはず。

 でも、どうやって……?


 物すらまともにつかめない僕がここにいても、なんもできない。


『────紅音、琴平。早く来てよ』


 陰陽師の力がない僕は、こんなにも無力なんだな。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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