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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 桜桃
第一章 安倍家

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三角関係?

 部屋を出ると、廊下が左右どちらにも続いていた。


 天井には俺の知っている電気はなく、灯っているのは灯篭だけ。だからなのか、周りは薄暗い。


 気をつけて歩かないと転んでしまいそうだ。


「………えっ……と?」


 左右の廊下を何度か見比べてみるが、特に変わったものはない。だから、とりあえず左へ進むことにした。


 行く場所に迷ったら勘に頼るしかない。地図アプリなんてないし。


「──にしても、すごく大きな屋敷なんだなぁ」


 廊下は、人が二人並んで歩いても余裕があるほど広い。飾り気はなく、シンプルな廊下がひたすら続いている。


「…………」


 なんで俺がこうして異世界転生してしまったのか。靖弥はどうなったのか。

 わからないことだらけだな……。


 それに、俺が死ぬ前に聞こえた子どものような声。あの声の主って、もしかして闇命君、とか?


 まぁ、とりあえず。ここの人たちに俺の存在を疑われないように、話し方や距離感に気をつけて関わっていこう。


 琴平たちから聞いた闇命という少年は、わがままで自由奔放。それを意識して行動しないとな。


 気は引けるけど、人が嫌がることを子どもっぽくやればいいかな。


 ────っ、おっと!


「っ、おい、どこを見て──」

「あ、すいません。考え事をしていて、よそ見をしてしまいました。大丈夫ですか?」


 やべ、曲がり角から人が来ていたみたいだ。咄嗟に避けられて良かった。


 怒りそうだったけど、俺がすぐに謝ったからか、前から来た男性は「お、おう……」と困惑した様子で去っていった。


「危ない危ない」


 考え事をしながら歩くのは危ないな。人とぶつかってしまう。


 周りを見ながら歩かないと。


 ────えっと、闇命君になりきるには、まず人に嫌われることだったな。


 まずは、自分の意志を何を言われても通せばいいのかな。

 漫画だと、理不尽に怒ったりすると嫌われてた気がする。


 たとえば、曲がり角でぶつかりそうになったら理不尽に暴言をはっ──


「────あ!!」


 振り返るが、気づいた時にはもう遅かった。


 さっきの人は、もういない。


 …………あぁ、なるほど。


 さっきの人があんなに困惑していた理由、今わかったよ。

 だって、わがままで嫌われ者が、自分の不注意を認めて急に謝ったんだ。そりゃ困惑するよ。


「俺のばかぁぁぁあああああ!!!」


 何やってんだよ俺!! ここで性格の良さは出さなくていいからさぁぁああ!!

 演じるなら暴言吐くところだろぉぉおお!!


「…………なんて言えばいいんだろう」


 暴言を吐くと言っても、何を言えばいいんだ?

 現実世界では面倒事に巻き込まれたくなくて、すぐ謝ってたから本当にわからない。


「貴方が琴平の言っていた、ユカという奴か?」

「っ、え、あ、はい。牧野優夏です。よろしくお願いいたします?」


 頭を抱えていると、廊下の先の曲がり角から綺麗な女性が現れ、声をかけてきた。


 赤い髪を後ろで一本に結んでいる。

 つり目の赤い瞳の巫女さんだ。現代だったら上司にいそう。


 立ち上がって腰を折ると、巫女さんはその場にしゃがみ込み、顔を覗き込んできた。


 もしかして、この人がさっき琴平が言っていた三人目の従者かな。


「…………」


 …………え、何。めっちゃ見てくるんだけど。


 つり目だから睨まれてる感じがして、正直ちょっと怖い。


「────ワタシは、信じない」

「…………ん? 何を?」


 なぜ、いきなり「信じない」って言われたんだろう。

 さすがに悲しいんだが。挨拶に何か不備あったかなぁ。


「あの、何を信じないの?」

「お前の存在を信じない。何を企んでいる。何がしたい。お前は何者だ」


 鋭い目を向けながら、次々に質問をぶつけてくる。


 うん。怖い。普通に怖い。

 けど、これがもしかしたら普通の反応なのではないか?


 さっきの人たちが冷静すぎたのではないか?


「聞いているのか貴様!」

「ひっ、き、聞いておりますよお姉さん!!」

「お姉さん、だと?」


 あ、死んだ。


 巫女さんが顔を引きつらせ、低い声で怒り始めた。


 いや、なんで。

 そんなに「お姉さん」って嫌だったの?!


「貴様……」

「ひゃい……」


 両肩に手を置かれた。逃げられない。

 これは、俺、殺されるのか。転生してすぐに死ぬのか。


「もう一度、呼んでくれ!!」

「────ん?」


 え、今なんて?


「お姉さん?」

「もう一回!!」

「お姉さん」

「もう一回!!!」

「お姉さん」


 何度も何度も「お姉さん」と呼べと言ってくる。

 挙句の果てに「紅音(あかね)姉さんと呼べ」とまで。


「紅音姉さん」

「〜〜〜闇命様!!!」

「ぐえ!!」


 ちょ、く、苦しい。強い力で抱きしめないで!!

 何でこうなるの!? 本当に女性なの!? めっちゃ力強くない!?


 や、やばいやばい、ぎぶぎぶ!!


「なにやってんだ、紅音」

「琴平が言っていた事を確認しに来た」


 力が緩んだのと同時に、後ろから琴平の声がした。た、助かった……。


 後ろには、琴平(ことひ)が呆れた顔で立っていた。


「駄目じゃないですか紅音さん。そんなに力強く抱きしめてしまっては。闇命様のお体はまだ完治していないのです。貴方みたいに西瓜を簡単に潰せるほど力が強い人に抱き留められてしまっては、また倒れてしまいますよ」


 笑顔でなかなか物騒なことを言うな夏楓(かえで)よ。


 いや、そこじゃない。


 今、俺を抱きしめている紅音姉さんは、西瓜を潰せるの?


 頭にはてなを浮かべていると、琴平の後ろから夏楓が一歩前に出てきて、俺の肩を後ろから掴んだ。


 あれ、ちょっと引き寄せられた?

 なんか、ぐいっと引っ張られた気がしたんだけど……。


「ここでは強い者が生き残る。ひ弱な貴様になど言われたくない」

「ですが、仲間を傷つけてしまっては元も子もないと思いますけど? それに、闇命様のお体なのですから、中身は違うにしろ、もう少し丁寧に扱っていただけませんか? 正直、とても不愉快です」

「傷つけるほど力は込めていない。それに、闇命様の傷は貴様が治したはずだ。完治していないのは貴様の力不足が原因ではないか? これだからひ弱な奴は口だけ達者なのだな」

「す、ストーーーーープ!!!」


 なんなんだこの二人。


 夏楓は笑みを浮かべたまま、紅音姉さんは無表情のまま言い合っている。


 なんか、普通の喧嘩を眺めるよりずっと怖い。

 これが女子同士の喧嘩なのか。関わりたくないな。


 こんなのを見るくらいなら、男子の殴り合いの方がまだ怖くない。


 今もなお、夏楓は俺の肩を掴んだまま。紅音姉さんは逃がさないと言わんばかりに腕を掴んでいる。


 に、逃げられん!!!! 動くことすらできん!!


「えっと、夏楓と琴平はなんでここに?」

「紅音に会わせようと思ってな。話だけ伝えて、その後に用事を済ませたんだ。まさか、自ら会いに行こうとするとは思わなかった。しかも、こんな廊下でなぁ」


 ……あれ?

 なんか、琴平の表情がみるみる怖くなっていくんだけど。


「優夏とやら。ここで遭遇するのはおかしいと思うのだが? 普通なら部屋まで紅音を案内するはずだ。……いや、それが正しいはずなんだが、なぜここで会えたのだ? なぁ、優夏とやら」


 …………やべっ。

 そういえば、琴平には部屋から出るなって言われてたんだった。


 すぐ戻ればいいと思って出てきたけど……これは、終わったか?


 いや、まだだ。諦めるな俺。

 必ず生還ルートはあるはずだ。それを探せ。


「…………か、厠にっ──」

「言い訳は聞かんぞ」


 言い訳は聞いてくれないそうです。オワタ。


 水色に鋭く光る片目で見下ろされると、圧がすごい。


 これが、アニメとかでよく聞く“殺気”ってやつなんだな。

 確かに、こんなのまともに向けられたら動けなくもなる。


 今か今かと何を言われるのか身構えていると、琴平たちが来た方から二つの人影が現れた。


 立派な髭を生やした細身の老人と、厳格そうな男性だ。


 二人の姿を確認した途端、さっきまで怒っていた琴平たちはすぐに身なりを正し、その場に膝をつく。


 この反応を見る限り、この二人は陰陽寮でもかなり上の立場なんだろう。


「闇命よ、傷は癒えたらしいな」

「周りの方々の支援があり、なんとか」


 しわがれた声。見た目だけなら八十代くらいに見える。


 白髪に白い口髭。目元は窪んでいて見えにくく、頬には深い皺が刻まれている。


 隣の男性はまだ少し若く見えるが、それでも五十代くらいだろうか。


 こちらは黒髪がしっかり残っていて、耳が見えるほど短い。

 黒い瞳が鋭く、見下ろされるだけでめちゃくちゃ怖い。


 ひとまず波風を立てないよう返したけど、そもそも闇命という少年の口調がよくわからない。

 でも、こんな感じで大丈夫だろう。


 さすがにこんな怖そうな人たちには、偉そうな態度は取らない……よな?


「ふむ、今までより大分可愛げがある言い回しだな。今回の件で学んだか」


 ……あれ、嘘だろ。

 まさかこの子、こんな偉そうな人たちにもタメ口だったの?


 確認するように琴平を見ると、顔を青くして汗を流していた。

 あぁ、俺、やらかしたらしい。どうすればいいんだ……。


「貴様の普通の口調で話せ。その方がまだ怪しまれんだろ」


 紅音が耳元で小さく助け船を出す。


 つまりやっぱり、この少年──この人たち相手にも普通に話してたんだ!!!


 今から話し方変えても大丈夫かな……。


「傷が癒えたのなら、貴様の修行を再開する」

「え、修行?」


 困惑した瞬間、琴平が焦ったように顔を上げ、咄嗟に口を開いた。


 え、なになに? 何されるの俺……。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえず信じて貰った+受け入れて貰った でセーフ 悪ではなくとも肉体を乗っとった扱いされる可能性もあったから 子供扱いされてますが中身からして気まずいでしょうね 肉体が違うなら味覚も変わり…
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