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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 桜桃
第一章 安倍家

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修行という名の殺害だろ

「お待ちください陰陽頭(おんようのかみ)。傷は癒えましたが、まだ安静は必要かとおも──」

「黙れ。我々陰陽頭、陰陽助(おんようのすけ)に意見するでない。従七位(じゅうしちい)なのだから、黙って命に従っておれ」


 琴平(ことひ)の言葉を、隣に立つ厳格そうな男性が真っ先に遮った。


 見た目通りの人間らしい。声が低く、それだけで体に圧がかかる。


 それに、今まで聞いたことのない言葉のオンパレードだ。


 とりあえず、あの男が言っているのは──『上司の俺に口答えするな。部下なのだから命令にだけ従っていろ』ってことか?


 それにしても、言い過ぎだろう。


「来るがよい」


 おそらく、この陰陽寮で一番上位であろうじーさんが歩き出す。


 ついて来い、ということらしい。


 その際にちらりと見えた瞳は、老人とは思えないほど鋭く、一瞬だけ狼狽えてしまった。


 さすが上司。これくらいの迫力がなければやっていけないのか、この世界。


 ────くそっ。なんか胸糞悪い所だな、ここ。


 上下関係は大事だけど、そこまで言わなくてもいいじゃん。

 なんか、この人たちには負けたくないな。


「行ってくる」


 琴平と夏楓(かえで)の横をすれ違い、じーさんの後ろについて行こうとした──その時、なぜか琴平に腕を掴まれた。


「こと──」

「優夏。法力は集中力が核となる。慌てず落ち着いて行動しろ。そうすれば、闇命様の体だ。必ず修行は成功する」


 琴平はそう言って手を離し、頭を下げた。


「健闘を祈っております、闇命様」


 不安そうな声。本当に闇命君を大事に思っているのが伝わってくる。

 他の二人も、心配そうに頭を下げて見送ってくれた。


 あんなに心配されると逆に怖いんだが……。

 俺、これからどうなるんだ?


 想像するだけでも怖い。


 冷や汗が流れるのを感じながら、頭を下げる三人から目を逸らし、じーさんの後ろをついて行く。


 何もありませんように。

 この祈りが届くことは、たぶんないんだけど。


 ※


 じーさんについていくこと数分。

 どうやら目的地に着いたらしく、足を止めた。


「ここだ」

「ここって……」


 目の前には大きな襖。

 でも、ただの襖じゃない。


 木の部分は腐って変色し、何にやられたのかわからない大小さまざまな爪痕が残っている。襖紙もところどころ破れていて、見た目からして普通の部屋ではない。


 襖には開かないように御札が至る所に貼られていた。

 おどろおどろしい空気が隙間から漂い、体がぞくりと震える。


「この中にいる悪霊を浄化するがよい」


 い、嫌だ。そんなこと、できるわけがない。

 でも、ここで引くわけにもいかない。怖いけど、引きたくない。負けたくない。


 ……本物の闇命様なら、簡単に倒してしまうんだろうけど。


 何も知らない俺が入ったら、この空気だけで呑まれてしまいそうだ。


「────ほう。流石のお前でもこの気配は駄目か。いつもの余裕そうな顔が崩れておるぞ。やはり、餓鬼は餓鬼か」


 厳格男が鼻で笑いながら言ってくる。


 いや、だって────


 闇命様じゃないからね俺!!!


 ぁぁあああもう!!


 言いたい。ものすごく言いたい。


 俺は君たちが言う生意気な少年じゃないんだよって、高らかに宣言したい!!!


 苦笑いしながら襖を見ていると、じーさんが俺の腕を掴んだ。

 逃がさないようにか、力が強い。


「い、痛いよ」

「ここで死ねばそこまでだ。だが、こいつを浄化できなければこの先はやっていけん」


 じゃあ、お前は退治できんのかよじじぃ。手本を見せやがれ。


「早く行け」


 厳格男が襖を開け、じーさんが無理やり俺を中へ放り込んだ。


 御札が破れて床に落ちる。


「〜〜〜必ず見返す!!」


 襖が閉じられ、周囲は暗くなる。

 唯一の光源は、壁に備えつけられた今にも消えそうな灯篭だけ。


 少しでも情報を得ようと周りを見るが、暗すぎてよくわからない。

 でも、壁すら見えないってことは、そこまで狭い部屋じゃないのかもしれない。


 床をぺたぺたと裸足で歩いていると、前方に何かが置かれていた。

 近づくと、座布団の上に高価そうな壺がある。


 側面には五芒星が書かれた紙が貼られていた。


「なんだろうこれ……」


 剥がそうとしてみるが、ぺったり貼りついていて動かない。


 ────ポチャン


「ん、水?」


 音がしたのは後ろ。


 上から雫が落ちたのか、床が濡れている。


 触ってみると冷たいだけで匂いはない。普通の水だ。

 でも、なんか嫌な感じがする。


 この部屋に満ちている、体に刺さるような気配。

 外にいた時よりずっと濃い。


 ────ポチャ


「ひゃぁぁぁあああ!!!!」


 (うなじ)に水が落ちたぁぁぁあああ!!!!


 咄嗟に上を向く。

 もごもごと動く影。


 目を凝らして見てみると、闇の中に何かいる。


「あ、あれって──みっ、水の化け物ぉぉぉぉぉ!」


 天井を覆うほど大きな水の塊が、俺を見下ろしていた。


 ぐにゃぐにゃしたゼリー状の体には、人間の目のようなものがいくつもついている。


 裂けたように横へ伸びた大きな口は、まるで俺を嘲笑っているみたいだ。

 涎のようなものまで垂れていて、正直かなり気持ち悪い。


「かい、ぶつ……いや、まじで気持ち悪い……」


 体が震えすぎて言うことを聞かない。

 目も逸らせず、その場で見上げるしかできない。


 いや、駄目だ。逃げないと。


 動け。動いてくれ!


「うわ!!」


 後ろに走ろうとした瞬間、足が絡まり転んだ。


 いやいやいや、動け。俺の体、動けよ!!!


『おえだがぁぁぁああゆるざ、なぃぃぃいい』


 重い声が頭に直接流れ込んでくる。


 脳が破裂しそうだ。


 耳を塞いでも意味がない。


 気持ち悪い!!!


 こんなもんを小さい子に退治させようなんて普通じゃねぇよ!!


 ……──あぁ、そうか。


 この陰陽寮は、普通じゃないんだ。


 普通ならこんな少年に、あんな化け物をぶつけるわけがない。たとえ天才でも。


 上にいる化け物が、水の手を作ってこちらへ伸ばしてくる。


 やばい。

 う、動け動け動け動け!!!


 恐怖で震える足が言うことを聞かず、立つことすらままならない。


 このままだと確実に捕まる。


 頼む。頼むから──


 動けぇぇぇぇぇぇえええ!!!


 ────パンッ!!!


「え、水が弾けた? これって……」


 突然、俺を守るように透明な膜が光と共に張られた。

 四方へ飛び散った水が床を濡らす。


 透明な膜に触れてみると冷たく、硬い。


「これって、結界みたいな感じ?」


 数秒後、膜は光と共に消えた。

 床には破れた人型の紙がひらりと落ちる。


「これって──」


 裏表を見ても何もわからない。

 でも、たぶんこれが助けてくれたんだ。

 一体、いつから……。


「あ。もしかして、琴平が最後に俺に近づいた時とか?」


 助かった。

 でも、破れたってことは──もうない。


「詰んだんじゃ……あ、化け物が……」


 床の水が勢いよく手に戻っていく。

 水だから形は自由自在。弾けた程度じゃ意味がない。


「ど、どど、どうしろと!!!」


 また手が伸びてくる。


 と、とりあえず逃げないと!!!


 幸い部屋は広い。


 でも隠れる場所がない。


 逃げ続けても意味がない。


「うわっ!!!」


 ────ドテッ!


 また足がもつれた。


 膝を強く打って、すぐ立てない。


 でも立たなきゃ死ぬ。


「くっそ、どうすればいいんだよ……」


 震える体に鞭打って走る。

 けど攻撃なんてできるわけがない。


「あっ、しまっ――」


 視界の端から水の手。


 避けきれず、簡単に捕まった。


「くっ、離せ!!!」


 めちゃくちゃ冷たい!!


 氷に挟まれてるみたいだ。


 このままじゃまずい。


「~~~~離せって!!!」


 今の俺は体が小さい。


 そのぶん、すっぽり握られている。


「ひっ!?」


 空いている方の手も伸びてきた。


「死んだ──」


 何もできない。

 ただ、握りつぶされるのを待つだけ。


「っ──……」


 咄嗟に目を閉じた。


 ――――その時、下から聞き覚えのある声が響いた。


『ちょっと。僕の体でそんな体たらく晒さないでくれる? ものすごく不愉快なんだけど』


 この声は──事故の時に聞こえた声と、同じ……?

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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