遂行の結果
自分より背の高い木を足場にしながら、雷火と共に猫刄を追いかける。
久しぶりな感覚だ、風が心地よい。
枝がしなり、うまく僕の身体を浮かばせる。
このまま、まず猫刄を西へと誘導。その為には、雷火と息ぴったりな行動を取らなければならないけれど、問題ない。
雷火は翼を広げ飛翔している。鋭い眼光は猫刄だけを指し、絶対に逃がさないという意志が僕にも伝わる。
式神の操作が上手くいったところで、他の術が成功しなければこの作戦は無駄になる。あいつには頑張ってもらわないと。
成功しなくても、次を考えればいいから問題ないけど。時間が無くなるだけで。
『──っ! 雷火!!』
考え事をしていたら、猫刄がいきなり右に直角へと曲がった。
そこには道という道がない。無駄に育った雑草が生い茂っているから、普通なら通ろうともしないだろう。
木を伝いながら追いかけるしかないけど、猫刄は元々普通の猫の大きさ。緑が走る猫刄を隠す。
『見失わないようにするだけでも大変そうだけど、西へ案内するのか……。自分の体だったら余裕なのに、やっぱりこの体、難しい』
雷火は僕の思考を読んでくれたかのように動き、猫刄の前に出た。
体を震わせた猫刄、方向転換して僕の下を通り抜ける。
まったく。そんな事、僕がさせるわけないだろ。
木から降り、猫刄の進行を塞ぐ。半透明だろうと、反射的に猫刄は僕を避ける動きをするだろ。
『そう簡単に逃げ道なんて、作るわけないじゃん』
僕に気付いた猫刄が急停止、からの方向転換。よし、その方向なら問題ない。
雷火と一瞬だけ顔を見合せ、合図を出し合う。
絶対に見失わないように、また最初と同じく追いかける。
木の上に飛び追いかけ、西から逸れようとしたら雷火が瞬時に猫刄の前方に周り食い止め、方向転換させる。
これを何度も繰り返した。
あともう少しで目的の場所に辿り着くはずだが、様子がおかしい。
周りに目線を向けるが変わった様子はない。ただ、緑が広がっているだけ。
人影すらなく、風で揺れた時に葉と葉が重なり合う音が耳に入るだけ。
『優夏は何をしているんだ』
もう、動き出していてもいいはず。まさか、失敗したのか?
いや、そんなはずない。こんな序盤であいつが失敗するなんてありえない。
…………やっぱり、あいつを選んだのは失敗だったのか。僕の直感は外れたのか。
まぁ、外れてしまったのなら、それはそれでいいよ。
『その時はその時で諦める。諦めるのは、もう慣れてるし』
今までも諦めてきたし。周りの態度や、自分の力の異常さ。
…………僕は、こんな強い力なんて要らなかった。天才になんてならなくても良かった。
今更考えたところで意味なんてないのは分かってる。けど、時々頭を過る。
────どうして、僕にこんな力が備わったのか
『──駄目だな、今考える事じゃない。あいつからの知らせがない限り、作戦を遂行し続ける』
何も感じられないのなら、失敗したと決めつけられない。
このまま猫刄を目的の場所まで案内するしか、今の僕には出来ない。
走り続けていると、前方に強い光。目的の場所に辿り着いたらしいな。
森を抜けると、綺麗な青空が目を一瞬晦ませる。
目の前には何も遮るものがなく、鮮明に目の前の景色。
猫刄を見失わないように気をつけながらも、木の上で立ち止まる。
ここは、陰陽寮から少し離れた場所に位置する崖上。
陰陽寮の裏は、陰陽師にすらなれない雑魚や、なれたとしてもその力を使いこなせない底辺の訓練場となっているみたいだけど、それよりさらに奥へ進むと、僕達が居る場所へと辿り着く。
先は道が続いておらず崖になって、覗き込むと深い谷。だが、ここから見る景色は澄んでいるから僕は好き。
さて、あいつはどうして――……
『―――あ』
……………………ほんとに、遅いよ馬鹿。
猫刄は崖を認識したのと同時に足を止め、右へ走り出す。
『っ、逃がさないよ』
右という事は、僕の出番だね。
猫刄の動きを先回りし目の前に立つ──よし!!!
やっぱり、作戦を遂行していて良かったよ、まったく。
これで、全ての段取りは揃った。
僕から逃げるように、猫刄は瞬時に足を止める。
へぇ、いい反射神経だよ猫刄。作戦通りだ。
『優夏!!!』
「────バァ!!!!!」
猫刄が僕に気付いた瞬間、お得意の身軽さで方向転換。一番近くに立っていた木の上に逃げた。
同時に、先に木の葉に隠れていた優夏が姿を見せ、捕まえようと両手を伸ばす。
「捕まえっ──あ」
……──まぁ、だよね。
猫刄は驚いたものの、持ち前の柔軟性で優夏の頭に前足を置き、そのまま上へと逃げてしまった。
そんな展開に優夏はすぐに体勢を立て直せず、地面に顔をぶつけてる。何してんのさ!!!!
『ばっっっかじゃないの!?!?』
「着地、失敗した…………」
鼻を擦りながら顔を上げるな!!! 僕の美形が台無しじゃないか!!!
はぁ。ま、今回の作戦は──
『成功って言ってあげてもいいよ』
「へへ、あんがと。それと、おつかれさん」
鼻を擦りながら顔を上げている優夏の後ろ。そこからカサカサという、葉が重なる音と聞き覚えのある声が聞こえた。
そこには、少し嬉しそうにいつもより高い声を出しながら一人の少年が歩いてきた。いや、一人の少年というか──…………。
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