無謀
とりあえず二人目の陰陽助、妖香紫苑さんに今までの経緯を簡単に説明した。
話を聞き終えると、紫苑さんは顎に手を当てて考え込む。
やっぱり、そう簡単に頷ける内容ではないらしい。
依頼として正式に受理された話ではない。
上に立つ者として、ここは慎重に判断するべきなんだろう。
もしこの人まで、あの堅物野郎やクソじーさんと同じ考えなら──もう俺に出来ることはない。
闇命君の体だからこそ動ける部分もあるけど、こういう時は逆に厄介だ。
もし転生じゃなく転移だったとしても……いや、無理か。
そもそも元の俺なんて、平凡って文字が歩いてるような男子高校生だったし。
取り柄なんて何一つない。
「そうかい。事情は分かったよ。それなら、私の力を貸そうかな」
「ほ、本当ですか?!」
「えぇ」
っしゃ!!
正直断られると思っていたから、この返事はかなり嬉しい。
思わず気分が浮いたけど──
なぜか闇命君と琴平の顔は渋い。
……なんで?
「あの二人、なんでそんな難しい顔してるの?」
『当たり前だろ。こいつのことだ。どうせタダで力を貸すわけがない。――そうだろ』
「おや、分かっていたのだね。それは残念。驚いた顔が見たかったのに」
あぁ、そういうことか。
こちらがお願いする立場なんだから、何か条件があるのは当然かもしれない。
そう思って待っていると、紫苑さんの目が少しだけ細くなる。
笑っているのに、嫌な予感しかしない。
「貴方たちに力を貸す条件として──外にいる黒猫を捕まえてくれるかい?」
「く、黒猫……ですか?」
「はい」
なぜ今、この場面で猫。
しかも黒猫。
「あの、時間がないのでそれは日を改めて──」
「なら、この話は無しということで。出口は後ろだよ」
うわぁ。
こういうタイプか。
こっちが強く出られないのを分かった上で言ってる。
そりゃ闇命君も苦手なわけだ。
「黒猫なら何でもいいんですか?」
「いいえ。私の式神である猫又を探してほしい」
「え、猫又?」
猫又って式神で見たことあったっけ。
……いや、そもそも陰陽師自体見たことないけど。
『悪業罰示式神』
「んん?? あ、あくぎょうばっししきがみ?」
闇命君が真顔で教えてくれる。
でも分からない。
全然分からない。
「悪業罰示式神は、俺たち陰陽師が打ち負かした悪霊を、自身の使役神として式神にすることだ」
琴平がすぐ補足してくれた。
助かる。
つまり、倒した悪霊を仲間にして使うってことか。
「でも、それを捕まえるのが条件ってどういうことですか? 式神なら呼べば戻るんじゃ……」
「私の式神、猫刄は外が大好きでね。声をかけただけでは戻ってこないのだよ」
「…………本当に式神ですか?」
「勿論」
そう言って微笑まれてしまうと、もう何も言えない。
納得はいかない。
でもここで止まっている時間もない。
さっさと見つけるしかない。
幸いこっちは三人──
「ちなみに探すのは君一人だ。彼には別のことを頼む」
「は?」
え。
この人、正気?
時間ないって言ってるよね?
一人で?
この、下手したら俺の通ってた高校より広い陰陽寮で?
一匹の黒猫を?
絶対無理だろ。
「頑張ってくださいねぇ〜」
「うるせっ────行ってきます!!!!」
思わず暴言が口から出そうになり、慌てて飲み込む。
そのまま襖を勢いよく開けて廊下へ飛び出した。
危ない。
あのまま言ってたら絶対首飛んでた。
誰もいない薄暗い廊下。
静かすぎて足音だけが響く。
こうして俺は一人、
寂しく黒猫探しの旅へ出ることになった。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




