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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 文月朔夜
第一章 安倍家

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作戦

 次の日、作戦を実行するため朝早く起き──いや、違う。


 朝、青春を謳歌するため、琴平に優しく起こされた。


 青春と言っても、女性がいるわけではない。

 男ばかりの中で呪文を唱えるだけだ。


 前回、闇命君に「やらせない」と言われたのに、琴平はまだ諦めていなかったらしい。


 しかも今回は、俺が事情を知っているからか、しっかり腕を掴まれたうえで、痛くないように優しく連行されている。


 いや優しいけど逃がす気ないな?


 さすがにあんな呪文を覚えろと言われても無理だし、肩に乗っている闇命君からの視線も痛い。


 だから俺は渾身の一撃を放った。


「やらないと、だぁめ?」


 上目遣いで言う。

 すると琴平はぴたりと固まり、腕を掴む力がふっと緩んだ。


 ──今だ。


 その隙に逃げ出し、今は森の中。

 まだ辺りは暗く、風が冷たい。


 肌寒い。


 早く寮に戻らないと風邪をひきそうだ。


「あちゃ。走りすぎて迷った……」

『ばっかじゃないの。琴平を撒いたまでは良かったのに、なんでその後を考えないかなぁ』

「うるさいな!! つーか陰陽師の敷地内だろここ。君は分からないの!?」

『どうして僕が分かるのさ。少しは頭使いなよ。僕は君みたいに行き当たりばったりじゃないからね。迷いそうな場所にそもそも行かないの。分かる?』


 このくそ鼠……!!

 なんでも倍にして返さないと気が済まないのか。


「はぁ……」


 その時。


 ────カサッ カサッ


「ん? なんか足音聞こえない?」

『確かにね。昨日の依頼人の女じゃない? ちょうどいいじゃん、行くよ』

「え、いやなんで分かっ──」


 肩から降りた闇命君が草むらを駆けていく。

 小さいから見失いそうだ。


「……あ」


 追いかけた先は、少し開けた場所だった。

 そこに立っていた女性が、俺の顔を見て目を見開く。


 ……いや、その顔をしたいのは俺も同じなんだけど。


 こんな早朝にどうしたの。


「こ、ども?」


 ああ、そこか。

 確かに子供がこんな場所にいたら驚くよな。


 でも、俺より気になるのは女性の方だ。


 着物はところどころ破れ、袖も擦り切れている。

 後ろで一つに結んだ髪も乱れ、外にはねていた。


 頬はこけ、全体的にやつれて見える。


 かなり生活が苦しいのかもしれない。


「えっと。初めまして……?」 


 近づいて挨拶すると、女性も戸惑いながら返してくれた。


「貴方は、なんでここにいるの?」

「はい。あの、陰陽寮にお願いしたいことがございまして……。もしかして、貴方も陰陽寮の方でしょうか?」


 そこで自分の格好を見て納得した。

 狩衣を着て寮の近くを歩いていれば、そりゃそう思う。


「うん、俺は安倍闇命。もしかして、昨日も来てた?」

「あ、はい……追い返されてしまったのですが……」


 やっぱりこの人だったのか。


「昨日はどんな話をして追い返されたの?」


 一瞬迷った様子を見せたが、陰陽寮の人間だと判断したのか、女性は話し始めた。


 女性の名前は神楽坂四季。

 両親と三人で暮らしているらしい。

 家族仲は悪くない。


 ただ、生活はかなり苦しく、貧しい暮らしをしているという。


「家で普通に過ごしていると、時々目の端に何かが映るんです。ですが視線を向けると何もなくて……空の瓶が置いてあるだけで。それに最近、この辺りでは火事が続いていて……」


 目の端に何かが映る。

 それだけなら気のせいとも思える。


 けれど近くで火事が続いているとなると、不安になるのも当然だ。


 しかも原因はどれも、


 『火の始末が悪かった』


 と処理されているらしい。


 一ヶ月で三回。


 それは偶然で片付けるには多すぎる。


 一度起きれば普通、次は気をつけるはずだ。


「ですが、それを話しても『我々の出る幕ではありません。お帰りください』と言われてしまって……何を言っても聞いていただけませんでした」


 四季さんは目を伏せる。


 ……え。


 いや、受付は何を聞いてた?


 普通に陰陽師案件では?


 火事だけ聞いて生活トラブルだと思ったのか?


「それは、確かに不安だね」

「はい……。次は私の家が火事になるかもしれません。そうなれば、お父さんもお母さんも……」


 声が震える。

 今にも泣きそうだ。


 もし俺が同じ立場なら。


 不安で頼った先に追い返されて、何もできず夜を迎える。


 ……きつすぎる。


『……──』

「ん? 何?」


 闇命君が肩を登り、耳元で小さく囁く。


 その声は、妙に冷たかった。


『この女、今日の夜──死ぬよ』

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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