被害
今日は、とりあえず四季さんに陰陽寮へ来てもらうことにした。
上に何を言っても意味がないのは分かっている。
だからせめて、火事が起きるかもしれない村へ今日は戻らないように。
「あの、本当によろしいのですか?」
「よろしくはないと思うけど、このままあんたを帰すのも後味悪そうだし。とりあえず付いてきて」
闇命君に言われた口調を真似しながら、陰陽寮がある方向へ歩く。
さっきまでと話し方が違うせいか、四季さんは少し戸惑っている。
……許して。闇命君に逆らえないんだ。
そんなことを考えていると、遠くから男女の声が聞こえてきた。
闇命君の名前を呼んでいる。
この声、多分琴平と紅音だ。
あぁ、怒られる。
絶対怒られる。
なんだろう。拳骨かな。
ため息を吐いた、その時だった。
四季さんが急に立ち止まる。
振り返ると、不安げに後ろを見ていた。
「あの、やはり私、帰ります」
「え、でも。今日にでも火事が起きるかもしれないんだよ? 帰らない方が──」
「なら、なおのこと帰らなければなりません。家には、お母さんとお父さんがいるんです」
……そうか。
四季さんだけ守ればいいわけじゃない。
家族も守らないといけない。
でも、どうやって。
闇命君は今日死ぬと言った。
そんな冗談は、さすがに言うわけがない。
「すみません。話を聞いてくださったのに失礼なことを言ってしまって。でも今日はこれで失礼します。また日を改めて依頼させていただきます」
四季さんはそう言って、来た道と反対へ歩き出す。
止めたい。
でも言葉が出ない。
引き止めるだけじゃ駄目だ。
納得させる理由がなければ──
『あんた。そのまま帰ったら家族ごと死ぬよ』
低く、不機嫌そうな声が森に響いた。
隣を見ると、半透明の闇命君が腕を組んで立っていた。
いつの間にか肩から降りていたらしい。
「え、同じ人が……二人?」
『そんなのどうでもいいよ。こいつが偽物、僕が本物。ただそれだけ』
「偽物ではないと思うんだけど……」
否定しても、闇命君には届かないだろう。
『とりあえず、このまま何も考えず帰れば、焼死体が三つできる。それでもいいなら止めないけど』
「ふ、不吉なことを子供が言わないでください」
四季さんの声が荒くなる。
さっきまでの柔らかさが消え、今は刃みたいに鋭い。
『不吉かもしれないけど事実だよ。君たちの家は今日火事になる。そして逃げられず死ぬ』
本来なら止めるべき言葉だ。
でも、ふざけていない。
馬鹿にしてもいない。
口調と表情を見れば分かる。
それは四季さんにも伝わったらしく、強く拳を握ったまま動かない。
信じるか。
信じないか。
重苦しい沈黙が落ちる。
その時、背後で草木が揺れた。
振り向くと、琴平と紅音が立っていた。
二人とも息が荒い。
かなり探してくれていたらしい。
申し訳ない。
「闇命さっ──」
紅音が名前を呼びかける。
待って、それは今まずい。
慌てて口元に指を当てると、琴平がすぐ察し、紅音の口を塞いで止めてくれた。
助かった。
「……これはどういう状況だ、優夏」
「あの人はね──」
二人に近づき、小声でここまでの流れを簡単に説明する。
すると琴平も紅音も、ひとまず黙って見守ることにした。
「その話が本当なら、私はどうすればいいんですか。どうすれば守れますか。大事な家族なんです。絶対に守りたい」
『さぁね。まずはその村に住み着いてるモノを確認しないと何も言えない。だから、まずはあんたの村へ行く。後ろの三人も一緒に』
闇命君と目が合う。
そりゃそうだ。
言い出したの俺だし。
行かない選択肢なんてない。
しっかり頷き、琴平たちと一緒に四季さんの隣へ並んだ。
「必ず村を守るから、安心してほしい」
『それは言い切るな』
「え、なんで?」
こういうのって言い切った方がかっこいいだろ。
守るならなおさら。
『相手が何かも分からないのに言い切るなよ。妖には種類がある。まぁ僕は天才だから何でも問題ないけど』
そこまではいつも通りだった。
でも、次の言葉で空気が止まる。
『でも、今の天才陰陽師はあんただよ。分かってる? あんたが倒すんだよ』
…………。
え?
俺?
いやいやいや。
だって琴平も紅音もいるじゃん。
なんで俺確定なの。
『琴平は援護中心にやらせてた。それに紅音には戦闘経験がない。前線に立てるのはあんたしかいない』
……………………。
そんなの。
知らねぇよぉぉぉぉぉぉおおおおお!!
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




