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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 文月朔夜
第一章 安倍家

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依頼人

 闇命君の部屋に辿り着き、座布団の上に腰を下ろした。


 改めて部屋を見回してみると、本当にここが闇命君の部屋なのか疑ってしまうほど、何もない。


 丸テーブル、布団。

 あとは筆や紙など、仕事に必要そうな物だけ。


 もっとこう、おもちゃとかあってもよくないか?


 ……いや、闇命君がおもちゃで遊ぶ姿はさすがに想像できないな。


 まぁ、部屋のことはいい。


 それより、琴平の様子はもう元に戻っていた。

 少し安心したけど、やっぱり気になる。


 多分、立場上、気になることややりたいことがあっても自由には動けないんだろう。


 我慢して、我慢して。

 上に従い続けて、ここまでやってきた。


 だからこそ、すぐに気持ちを切り替えられるのかもしれない。


 今はもう、さっき廊下で見せた表情なんて最初から無かったみたいに振る舞っている。


「ん? どうした」

「……いや、なんでもないよ」


 聞きたい。

 琴平が何を考えていたのかも、さっき聞こえた声のことも。


 外から聞こえていた二人の女性の声。

 一人は落ち着いていた。恐らく巫女さん。


 もう一人は、明らかに焦っていて、口調も早かった。

 甲高くて、少し震えていたような声。


 何かに怯えているようにも聞こえた。


 そういえば琴平は言っていた。

 陰陽師は占いや鑑定もする、と。


 ということは、さっきの人は依頼人か?


「優夏」

「んえっ? あ、はい。優夏です」


 急に名前を呼ばれ、思わず肩が跳ねた。


「さっきから何を考え込んでいる」

「あぁ……さっきの声が、どうしても気になって」

「なぜ、それが気になる?」

「それは俺にも分からないんだけど……なんか、放っておいたら駄目な気がする。これって、闇命君の体だからそう感じるのかな?」


 闇命君は勘が鋭いと聞いた。

 相手の弱点や倒し方を瞬時に見抜ける。


 なら、この妙な直感も、その力の一部なのかもしれない。


『だと思うよ。僕もさっきの声から嫌なものを感じたから』


 肩にいた鼠が床へ降り、人の姿へ切り替わる。

 半透明の闇命君が俺の隣に座り、腕を組んだ。


「闇命様も、先程の会話が気になるのですか?」

『まだ断定はできない。でも、僕の直感が言ってる気がする。あの依頼、断ったら大きな災いが起きる──そんな気がするよ。それに、琴平も放っておきたくないでしょ』


 琴平は眉間に皺を寄せ、目を逸らした。

 やっぱり気になっていたんだ。


 大きな災い。


 それは、どれほどの規模なんだろう。


 本来の持ち主である俺より、半透明の闇命君のほうがずっと深く感じ取っていることに、少し悔しさが湧いた。


『多分、あの様子じゃ依頼は断ってるね』

「……だと思います」


 え、断る?


「なんで依頼を断るの? 全部受けないと可哀想じゃないか」

「受けたくとも受けられないらしい。この村には陰陽寮がここにしかない。あとは馬車で遠出するしかないが、どれだけ急いでも片道一日はかかる。一番近い陰陽寮でもな」


 すごい距離だ。

 なら、ここに頼るしかない。


「そのせいで依頼は大量に集まる。その中には、俺たちでなくても解決できる内容も多い。全部受けていたら人手が足りない」

「あぁ、つまり何でも屋扱い?」

「そうだ。だから依頼内容を絞り、陰陽師でなくても解決できそうなものは断っている」


 それなら理屈は分かる。


 人手不足は仕方ない。


 全部抱えて全部中途半端になるよりはいい。


『でも、それには欠点もある』

「欠点?」

『依頼内容の本質を見抜かないといけない。でも受付はそれができてない。本当に僕たちの力が必要な人まで帰してる。役に立たない人ばかりだよ』


 受付では、悪霊絡みかどうかまでは分からない。

 話を聞いて、理解して、判断する。


 簡単じゃない。


『今回の依頼人もその一人だね。まぁ運が悪かったってことで、諦めるしかないよ』

「…………闇命様がそう言うのであれば」


 え。

 そこで終わるのか。


「なんでそこで諦めるんだよ。こうして気づいてるんじゃん。なら助けようよ」


 二人は顔を見合わせ、大きくため息をついた。


 なんでだよ。


『分かってない奴が一回一回口を挟まないでよ。そういうところが嫌われる原因になるって分からない?』

「優夏、闇命様の言う通りだ。嫌われるかは別として、俺たちの立場では口を挟めない。諦めるしかない。今までもそうしてきた」


 断る理由は、なんとなく分かった。

 でも、納得はできない。


 それに、二人とも本当に諦めてる顔じゃない。

 闇命君は難しい顔をしているし、琴平もどこか苦そうだ。


 二人とも、本当は放っておきたくないはずだ。


「口を挟めない立場ってなに? 結局最後に仕事するのは琴平たちだろ? なら言ってもいいじゃん」

「単純な話ではない。ここへ来る依頼は基本、口外禁止だ。内容は外へ漏らさない。受付にしか話が通らない。俺たちに来る頃には、もう受理され、担当も決まった後だ」


 依頼内容は極秘。

 必要最低限の人間しか知らない。


『さっき声が聞こえたのも、断られた依頼人が頭に血が上って怒鳴っていたからだろうね』


 闇命君が淡々と付け足す。

 そこで会話は止まった。


 沈黙。


 ……でも。

 どうにかしたい。


 災いが起きるなら、その前に止めたい。


 琴平も闇命君も、気持ちを押し殺しているように見える。


 だからこそ。


 俺にできることがあるなら、やりたい。


 あの女性を──助けたい。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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