暴力は良くない
俺達がここに居る理由を簡単に、重要な部分だけを切り抜いて話した。男はその間一切相槌すらなく、無表情。普通に冷や汗止まらない、怖かったです。
「お前らの事情は理解した。だが、それは残念だったな。これを見ればわかるだろうが、それどころではなくなったのは理解出来るな?」
「…………はい」
俺を見ないで、崩れている村を真っすぐ見続けている。なんだろう、悲しそうに見える。無表情だけど、心はきっと泣いているんだろうな。
「つーか、聞いていた話と全然ちげぇのな」
「え?」
いきなり俺の方を向かないでよ、驚くじゃん。って、聞いていた話と違う? 何が?
「自由奔放でわがまま。人を見下し、礼儀なんてものはどぶに捨てているような性格と聞いていたが、噂が独り歩きしていただけか?」
「紅音、琴平、夏楓。拳を戻さないとさすがの俺も怒るよ」
「「「はい」」」
男の言葉は三人の怒りに触れるものだったから途中から警戒していたけど、予想通りだったな。
「それには理由があるんです。今は詳しく話せないから勘弁してほしい」
「そうか、まぁ俺には関係ねぇからいいわ」
「は、はぁ」
こんな陰陽頭もいるんだな、予想外。根ほり葉ほり聞いて来るもんだと思っていた。
「あの、とりあえず自己紹介ってお願いできますか? 名前がわからないと呼ぶに呼べないです」
「それもそうだな。詳しくはここではなく陰陽寮で話すが、名前だけなら言ってやるよ。俺は水仙家、陰陽頭。水仙水分、これからよろしく頼むぞ。安倍闇命よ」
☆
水仙家の陰陽寮に案内してくれた水仙水分さん。水仙さんって呼ぶと「きめぇ」と言われたから、水分さんと呼ぶ事にした。
今は薄暗い道を全員で歩いている、人はいない。いや、死体がない。全員屍人にされてしまったのか。
「あの」
「なんだ」
「この村はもう、駄目なんですか?」
「駄目とは?」
「復興は、望めないのでしょうか?」
「やろうと思えば出来ると思うぞ」
「え?」
「当たり前だろ。村の人が全員逃げ遅れたわけではない。しっかりと逃げた奴もいる。そうだな…………。もっと水歌村を大きくしてもいいかもしれないな。他の村から引っ張ってもいいし、技術者を増やして建物を大きくするか、陰陽寮をもっと面白くしたいんだよなぁ。仕掛けをもっと増やしたい。そう思うと技術者は必須だな」
……………………。
頼もしいという事で片づけとこ。追及した方がおかしくなりそう、思考が。
それより、どんどん周りが寂しくなっていく。今はもう村の裏、田んぼかな? ここで米とかを作っていたのか。
今だぶつぶつ呟いている水分さんを無視して、さっきから静かな魔魅ちゃんの手を握る。
あ、少し震えてる。怖かったのかな、まぁ怖いよね。
「魔魅ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫…………。慣れてるから」
慣れているのも考えものなんだけど。
「…………闇命くっ――」
『問題ないけどなに心配してるの馬鹿なの?』
「ですよね」
闇命君の心配は無用か。これは虚勢を張っているわけではなく、本当に問題ないと言っているな。
そういえば、あの少女は一体誰だったのか。誰の差し金で、なんでこの村を狙ったのか。いや、狙ったのはもしかしたら水仙家かもしれない。
「あの、水分さん」
「どうした」
「襲ってきたあの少女に、何か心当たりはあるんですか?」
「それも含めて着いたら話す。だから、お前が細かく話せないと言っていたさっきの話も俺に言え」
「え? いや、だから詳しく話せないと」
「時間は沢山あるからなぁ。ちなみになんだが、おめぇは等価交換って知っているか?」
あぁ、つまり、そういう事か。
俺が情報を渡さなければ、そちら様も渡さないという事。
「ほ、他の情報とか…………」
「帰りは今来た道を戻れば問題ないぞ。俺はどっちでもいい、お前が決めろよ餓鬼」
「こんの…………」
口が悪い奴って、大体頭が馬鹿のはずなのに。やはり、ここは琴平にお願いするしかないか…………。
『別に話しても問題ないよ』
「え、そうなの?」
『話さないと進まないのなら別にいい』
「そっかぁ」
まぁ、闇命君がいいのなら別にいいか。
「何一人で話している、気持ちわりぃ」
「そのうち分かると言ってもいいですか?」
「わかるんだったらいいわ。このまま流すんだったら殴る」
「なんでも暴力で片づけるのは良くない!!」
この人、話は通じるけどなんでも暴力で片づけようとしそうで怖いんだよなぁ。もしかしたら血の海が出来上がる可能性。だって、絶対に後ろを歩いている三人は俺に何かあったら手を出すじゃん。実力がわからないけど、血の海になるのは確実。
「話だけで終わりますように」
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