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9/11

白石宏一という男

校庭の端にある水道の近くで、美奈は二宮と向き合っていた。

「告白します」と言われたと思ったら、尊敬しているのは自分ではなく父親だった。


美奈は二宮を見た。

「つまり、私の父のファンってこと?」

「はい。その通りです」

二宮は即答した。


「僕は、物心がついた頃から、バスケットボールの試合を観戦してきました。生で観戦できない試合は、あとから映像で見る。白石宏一さんが出場された試合は、映像で確認できる限り、すべて拝見しております」

美奈は軽く頷いた。


父のファンなら、これまで何人も会ってきた。

今回も、そんな話なのだろうと思った。

「二千十八年三月五日です」

二宮が突然、日付を口にした。

「何が?」

「白石宏一さんの試合です。忘れられません」


美奈は少し驚いた。

「日付まで覚えてるの?」

「もちろんです」

二宮は当然のように答えた。


二宮は、三人の守備を相手にした父の動きについて、細かく語り始めた。

特に、踏み出した右足を戻した瞬間が素晴らしかったらしい。


美奈が頷くと、二宮はさらに勢いづいた。

二宮の話は、そこから止まらなくなった。

美奈は、最初こそ軽く聞き流すつもりだった。

だが二宮の話は、これまで会った父のファンとは少し違っていた。


二宮が熱心に語っているのは、派手なシュートではなかった。

試合の中の、ほんの一瞬の動きだった。

気づけば、美奈は真剣な顔になっていた。

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