告白します
二宮は、美奈の正面まで来て立ち止まった。
美奈は頬を緩ませた。
「さっきのクラスのテーマ、かなり面白いね。二宮君らしい。強引に推したようにも見えたけど」
二宮は、美奈から目を逸らさなかった。
――好意の視線にも見えるし、観察の視線にも見える。
美奈には、どちらなのか分からなかった。
「あの……なに?」
二宮は真顔で言った。
「体育館の床の匂いが、白石さんにはよく似合います」
美奈は言葉を失った。
言われた内容が、褒め言葉なのか、失礼なのか、判断がつかなかった。
「匂いがどうとか言われるのは、困るよ。いやらしい意味じゃないんだろうけど。何ていうか、ほら。そのね」
二宮は、真顔のままだった。
「あの、用があるなら言って。その、真顔でじっと見られるのも、少し照れるし」
「匂いがどうこうと下らないことを言って、困惑させたことは深く謝ります。ですが、聞いて欲しいことがあります」
二宮は一拍置いた。
「告白します」
美奈の表情が止まった。
「告白? 告白って、その……」
二宮は真剣な顔をしていた。
「いきなり、その、告白と言われても。ねっ」
少し沈黙が流れた。
二宮は、静かに口を開いた。
「僕は白石さんを心より尊敬しております」
美奈は目を丸くした。
「えっ?」
「白石さんに出会ったこと。尊敬の念に堪えない人と出会ったことは、僕の一生の宝です」
美奈は二宮の顔をじっと見た。
「それは、いつもの一発ギャグ?」
二宮は小さく息を吐いた。
「分かりやすく説明します」
一拍置く。
「白石さんではなく、白石宏一さんを尊敬しております」
「……はあ」
美奈の口から、空気が抜けるような声が出た。
安心したような、拍子抜けしたような、少しだけ腹が立ったような声だった。




