世界を驚かす
武田は、黙っている二宮に声をかけた。
「あのさ。まあ、このクラスのテーマだし、お前も何か意見を出してくれないとさ。一応でも」
武田たちの視線が二宮に集まった。
二宮はしばらくして、顔を上げた。
「そうですね。私は考え抜きました!」
その言い方で、武田の表情が少し曇った。
「バスケットボールのテーマを挙げるなら、団結、ひたむきさ、スピード感。いずれも泥臭いものです」
誰もバスケットボールの話を求めていなかった。
二宮は続ける。
「そこで、日本代表のスローガンが良いと考えた次第です。そう、つまり」
力を込めた。
「世界を驚かす」
武田たちは、ほとんど同時にため息をついた。
担任が、軽く手を叩いた。
「そろそろ時間だ。じゃあ、武田の班から発表してくれ」
武田は、まっすぐ前を向いた。
「はい、僕たちの班で決めたのは、かけがえ――」
「世界を驚かす、です!」
武田の口が開いたままになる。
担任は首を傾げた。
「意見が割れたのか? 二宮、世界を驚かすってどういうことだ」
「一人の力では、何も出来ない。ですが、みんなが一致団結することで、世界を驚かしてやる。この意気込みが大切ということです!」
担任は少し考え、やがて納得したように頷いた。
「面白いな。スケールが大きい。よし、今年の三組はこれでいこう」
武田の顔から力が抜けた。
「……終わった」
二年三組の一年のテーマは、『世界を驚かす』に決まった。




