かけがえのない時間
二週間後。
朝のホームルームで、担任が黒板に文字を書いた。
『二年三組のテーマ』
教室が少しざわつく。
「今日は、この三組で一年間のテーマを決めたい。まずは仲のいい者同士、四、五人で班を作って、一つずつ案を出してくれ」
「テーマって具体的にどういうのですか?」
男子生徒の一人が尋ねた。
「例えば、『大切な思い出』とかだな。三組のみんなの気持ちが一つになるようなものを考えてくれ。時間は取るから、じっくり話し合ってくれ」
生徒たちは、ほとんど迷わず机を動かし始めた。
二週間も経てば、誰と組むかは自然に決まっている。
二宮は、当然のように武田のグループへ机をくっつけた。
武田たちは止めたかった。
だが、止めるには少し遅かった。
教室のあちこちで、話し合いが始まった。
武田のグループでは、みんなが腕を組んだり、机を見たりしていた。
二宮はうつむいて、黙っていた。
少しして、武田が口を開いた。
「そうだな。『かけがえのない時間』とかかな。このクラスで過ごす一年を、何年後かに思い出した時、そう思える日々にしたいっていう」
他の男子たちが頷いた。
「いいな、それ。高校二年の一年間って、一度きりだもんな」
誰も反対しなかった。
武田たちは、これで決まりだと思っていた。
武田は、隣にいる二宮へ目を向けた。
二宮は、うつむいたままだった。
武田は、その様子をちらりと見て、また仲間たちへ顔を戻した。




