表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人転生  作者: ほさ
18/37

混迷の吹雪、揺らぐ正義

「……ごめん。急に連れてきて。ここなら多分安全だよ」

勇太は自室の扉に鍵をかけ、震える少女――マリーに向き合った。

「俺は勇太。……君は、その、魔族だよね?」

『……うん。私はマリー。鬼人族だよ。……お兄ちゃんは、人間だよね? 人間には話しちゃいけないってお父さんから言われてるんだけど……。お兄ちゃんは、なんか他の人間と違う気がする』

「あ、ありがとう……」

戸惑いながらも、勇太は彼女の目線に合わせて腰を下ろした。

「……マリーちゃん。なんで君みたいな小さな子が、こんな危険な場所に一人でいるんだ?」

『鬼人族の村のみんなが、最近……いなくなっちゃうの。……お父さんも……』

勇太の心臓がどくりと跳ねた。

「……それで、探しに来たのか?」

『うん。長老たちには絶対に行くなって言われてたんだけど、我慢できなくて。……それで、さっき門の前で、お父さんを見つけたの。でも……私を呼ぶ声も聞こえてないみたいだったし、体がお父さんじゃなかったから……怖くて、木の陰で見てたの……』

マリーの瞳から涙がこぼれ落ちる。

「……だから、俺が斬ろうとした時に止めたんだね」

勇太は、昼間のあの異形の魔族を思い出した。鬼の角、虎の体、鱗……。

「でも、あの魔族は、本当に君のお父さんだったのか?」

『うん……たぶん。顔はお父さんだったし……魔力が、お父さんのものだったから』

勇太は絶句した。

あの時逃げたはずのあの魔族…。マリーの父の魔力が、あの「地下の研究所」のような場所から漂っているという。

なぜ地下から?あんな姿に変えられて、意思も疎通できないバケモノとして戦わされているのだとしたら――。

(……アイズ公、あんた、一体何を……)

その時だった。

城内に、夜の静寂を切り裂くような兵士たちの怒号が響き渡った。

「魔族だ! 魔族が出たぞーーー!!」

マリーが弾かれたように顔を上げた。

『……! 村のみんなが来たんだ!』

マリーは身軽な動作で窓枠に飛び乗った。

『お兄ちゃん、話を聞いてくれてありがとう。長老たちが来たみたい。……人間にも、勇太みたいな優しい人がいて嬉しい。バイバイ!』

「待て、マリー! 外は危ない!」

勇太の制止も聞かず、小さな影は猛吹雪の闇の中へと消えていった。

「勇太様! 勇太様、起きておられますか!?」

直後、荒々しくドアをノックする音が響く。

入ってきたのは、戦闘態勢を整えたジャンヌと、顔を強張らせたカレンだった。

「勇太、さっき誰かと話してなかったか?」

鋭いジャンヌの問いに、勇太は一瞬言い淀んだが、「いや……独り言だよ」とだけ返した。

「それより魔族だ! アイズ城を囲むように、奴らが山から降りてきたわ!」

勇太は二人に促されるまま、武器を手に外へと向かった。

吹き荒れる雪の中、城壁の向こう側に蠢く無数の魔族の影。

(……なんだ、どうなってるんだ、この世界は。……魔族が悪い奴らで、俺たちはそれを倒す側なんじゃないのか?)

聖剣を握る手が、今までにないほど冷たく感じられた。

マリーが言っていた「長老たち」は、仲間の奪還に来たのか、それとも本当に略奪に来たのか。

真実が雪に隠され、見えなくなっていく。

「……クソっ……俺は何を信じればいいんだ!」

勇太は、眩いばかりの光を放つ自分の体を見つめ、初めてその「全能の力」に激しい不信感を抱いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ