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二人転生  作者: ほさ
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聖域の剣、眩き出発

王城の裏手に広がる広大な演習場。

そこでは白銀の鎧に身を包んだ近衛騎士団が、鋭い掛け声とともに木剣を振るっていた。

勇太は貸し出された訓練着に身を包み、まだどこかふわふわとした足取りでその光景を眺めていた。

(……空気が、軽い。それに、さっきから体が熱いんだ。本当に夢じゃないのか、これ……)

「……勇者様。こちらにいらしたのですね」

凛とした、それでいて柔らかな声。

振り返ると、そこには見事な金髪をポニーテールに結い上げた、美しい女騎士が立っていた。彼女の腰には、魔力を帯びた美しい細身の剣が下げられている。

「私は近衛騎士団長のサンドラと申します。以後、お見知りください」

彼女はあの「剣鬼」ローガンと並び称される、王国最強の魔剣士の一人。だが、その物腰はどこまでも丁寧で、部下たちからの信頼も厚い。

「今は副団長が任務で遠征しておりまして、騎士団を統括しているのはこのサンドラのみ。……勇者様、まずはその身に宿る力の扱いを知るため、手合わせをいかがでしょうか」

「あ、あぁ…。え?手合わせ?いきなり?」

戸惑う勇太を尻目にサンドラに促され、一人の少女が前に出た。

「近衛騎士団のジャンヌだ。新人だが……勇者相手に手は抜かねえぞ。……あ、いや、サンドラ様! 手加減はします! 絶対に怪我はさせませんから!」

ジャンヌは男勝りな口調だが、尊敬するサンドラの前では顔を赤らめて縮こまってしまう、愛嬌のある剣士だった。彼女は身体強化魔法で自分の体重を極限まで軽くし、目にも止まらぬ速さで動くことを得意としている。

「組み手、開始!」

サンドラの合図。

ジャンヌは(悪いけど、まずは格の違いを教えてやるよ)と、軽く踏み込んだ。

……はずだった。

「……え?」

次の瞬間、ジャンヌの視界は真っ逆さまに回転していた。

背中を地面に打ちつけた衝撃。

何が起きたのか理解できなかった。ただ、勇太が「ほんの少し、手を払った」ように見えただけだった。

「……あ、れ? 大丈夫? ジャンヌさん」

勇太自身も困惑していた。

ジャンヌが動く瞬間、彼の脳裏には「彼女の足が滑る軌道」「剣を振り下ろす速度」「自分がどこへ一歩踏み出せば彼女の重心が崩れるか」が、まるで既知の知識のように流れ込んできたのだ。

「……嘘だろ。ジャンヌが一度も触れられねえなんて」

「勇者様……なんという……」

ざわめく演習場。

サンドラだけが、微笑を浮かべながらも、その鋭い瞳で勇太の本質を見抜こうとしていた。

翌日。

王都グラウディアは、かつてない熱狂に包まれていた。

広場を埋め尽くす民衆。鳴り響くファンファーレ。その中心で、勇太はまばゆい白銀の鎧を纏い、聖剣を手に登壇していた。

旅の仲間として選ばれたのは、昨日の屈辱を晴らすべく志願したジャンヌ。そして、王女でありながら「聖女」と称えられる聖神魔術の使い手、カレン。

「勇太様、そんなに緊張なさらないで。……私たちが、あなたを支えますから」

「……ああ。ありがとな、カレンさん」

「フン、昨日は油断しただけだ! サンドラ様の顔に泥を塗ったままじゃ死んでも死にきれねえ。アンタの背中は、アタイが守ってやるよ!」

ジャンヌの強気な言葉に、勇太は少しだけ照れくさそうに「ありがとう」と返した。

だが、その祝祭の影。

広場を見下ろす酒場のバルコニーから、独り、獲物を見定めるような目で勇太を睨む男がいた。

剣鬼団団長、ローガン。

(……勇者だぁ? ただの優男じゃねえか。……おい、ちょっと挨拶してやるよ)

ローガンは酒を飲み干すと、民衆に紛れ、勇太に向かって鋭利な刃物のような「殺気」を放った。

「っ……!?」

カレン、ジャンヌ、そして警護のサンドラが同時にその異常なプレッシャーに気づき、身構えた瞬間。

ドォォォォンッ!!!

勇太の体から、爆発的な純白の光が噴き出した。

「……ッ!? なんだ、ありゃあ……!」

ローガンは直感的に「やばい」と感じ、即座に視線を逸らして気配を消した。

あんな光、まともに浴びればタダでは済まない。

「勇太様!? 大丈夫ですか!?」

「勇者様、今の光は……」

勇太は、光り輝く自分の手を見つめて立ち尽くしていた。

頭の中では、無機質なシステムの声が響いている。


【警告:敵対的殺気を感知。スキル『聖域の残光』が自動発動しました】


「……わかんない。自分でも、今のが何なのか……」

だが、民衆にはそんな困惑は関係なかった。

目の前でまばゆく輝いた「勇者」の姿に、彼らは歓喜し、大地を揺らすような喝采を送った。

(……これが、俺の力……?)

勇太は、熱狂する民衆の海を見ながら、言いようのない孤独感に襲われていた。

自分が救おうとしている世界は、こんなにも眩しく、そして得体の知れないものに満ちている。

遠く離れた地で、親友の彰人が泥にまみれて「本当の強さ」を求めていることなど、この時の勇太には知る術もなかった。

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