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回避とサイコとツトム外伝  作者: 時田総司(いぶさん)
後日談

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第十二節 新学期


『在日米軍基地、駐屯中の兵士が、沖縄県民の女性に暴行を加えたという、痛ましい事件が起きました……』




「!」




 春――、


 高校二年生になった主人公は、登校中の街頭演説をおこなう、演説者のその声を聞き逃さなかった。



(回想)


「ゾ……ゾ……」


 ゾムビーが迫り来る。


「うわぁあああああああ!!」


 瞬間、




「タタタタタタタタ」




 銃声が鳴り響く。


「ゾゾ、ゾ!?」


 ハチの巣になっていくゾムビー。遂には、崩れ落ちた。


 銃声がした方向を向く主人公。そこには、軍服を着た外国人が数名、立っていた。


「hey kids!」


 外国人の内、一人が言った。


「あ……アメリカ人……?」


(回想終了)



(中学の時の修学旅行、ゾムビー達から救ってくれたのは在日米軍の兵士だった。でも、前にも聞いたコトがある……。沖縄県民の女性が何かの被害に遭っているって――)


 主人公は、校舎へ進む足を止め、耳を澄ましていた。


『今こそ、基地撤退するべきでは――』


(あの時は助けてくれる側だったけど、今回は攻撃する側になっちゃってるな。そう言えば、基地の移転問題もあったっけ……? よく覚えていないけど)


 フーと、溜め息をついた主人公は、止めた歩みを左足から動かし、演説から意識を遠のけた。


(法律も制度も政治も社会情勢もころころ変わっていく。現代社会は苦手だ――、すぐに新しい情報にかき消される)


 物思いにふけながら、主人公は学校へ向かう。


 ――、



「主人公隊員!! おっはよー!!!!」




「!?」


 学校の校門には、巨房が待ち構えており、耳がキーンとなるくらいの声で挨拶してきた。


「お……おはよう、ミノリちゃん……」


「むー。何かな、その反応? お腹の具合でも悪いの?」


「実は……」


 主人公は巨房に、今朝耳にした演説や、在日米軍についての話を、簡単に話した。二人は、校舎への道を歩きながら会話していた。


「ふむふむ、むつかしい問題だね、主人公隊員。でもキミに乱暴されるなら、私はウェルカムだけどねー。フフッ」


「……真剣になろうよ」


 お茶目に笑いながら言う巨房に、主人公は真顔でツッコミを入れた。




「でもさ」




「?」


「私も似た様なコト、ニュースで見たことあるよ。慰安婦問題? だったかな」


「ああ、あの国と日本の……」


「それで時々思うんだー。日本が度々言われているけど、第二次世界大戦後の日本国内だって、戦勝国の外国人にたくさんの女性が乱暴されてたんじゃないかって」


「ああ、きっとそうだね」


「何で日本だけ慰安婦問題を問いただされているんだろねー?」


「僕には分からないな……。歴史って複雑だね」


 主人公は、黙って、下を向いてしまった。


 と、そこで――、


「着いたよ、見て!」


「?」


 学校内の掲示板がある場所、3号館前に二人は辿り着いた。どうやらその掲示板にはクラス分けの表が貼り出されている様だった。巨房はあいうえお順に書き出されている表を目で確認した。


「かき……き……きょ……巨房ミノリ! あった!! さし……し……しゅ……主人公ツトム! やった! 同じクラスだね!!」




「え? えぇ!? またぁ!!? 僕、生活環境コースを選択したんだけど……ミノリちゃんも同じの選んだの!?」




 呆気にとられる主人公を気にも留めずに、ふっふっふーと、腕を組み鼻で息をする巨房は自信満々に言い放った。


「当然! 主人公隊員のコトは何でも知っているよ!! それから、あのクリスマスに言ったコト、忘れてないよね?」


「く、クリスマス? ……っは!」



(回想)


「用事って言うのは……」


 巨房はグッと下唇を噛み締めた後、漸く口を開き、声を大にして言った。


「好きです! ゾムビーと戦ってヒトを助けるあなたが好き! 結婚を前提に付き合ってください!!」


「! ……」


 雪がしんしんと振り、辺りは静まり返っていた。世界には二人だけみたいだった。そっと主人公が口を開いた。


「ゴメン……すごく嬉しいけど、前言ったかな? 他に付き合ってる人がいるんだ。その人のことが一番好きだから……ゴメン」


 フーと、溜め息をついた巨房は、下を向き、目に浮かぶ雫を光らせながら、それが流れないよう必死で抵抗した。しかし、次の瞬間、急に表情を明るくし、言い放った。


「じゃあ、私を一番の浮気相手にしてね!」


「!!」


(回想終了)



「浮……気……」


 ニコッと満面の笑みを浮かべた巨房はハツラツとした様子で言った。


「そ! 忘れないでね!!」


『同じクラスー、おっなっじー』という謎の歌を繰り返し歌いながら、巨房はどこかへ去っていった。


「やっぱり、気を引き締めないと……」


 主人公は軽く冷や汗をかきながらボソリと言った。

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