クソ男と一目惚れ女
昨日ひじりんにお願いされ、バンドメンバーの1人に会うことになった僕。唯一知らないメンバーに会うことになった僕。
伊吹と聖、あと誰か知らないカラフルな人も、この場に居合わせていたが、
「大事な話するからちょっと出てもらっていい?」
と、このファンキーな女に言われて、そそくさと教室から出ていった。
……特にカラフルな人は物凄い勢いで出て行った。
何? 虐められた? かわいそ〜。
目の前のファンキー女は椅子に正座して座っている。
それが正しい座り方とでも思ってんのか。
「えっと、改め、ましてっ……! 紅 月乃です……!」
声裏返ってんなあ。
「時宮 虹彩だよ。よろしくね」
龍もそうだったけど、この人校則破りまくってるけど良いの?
僕が先生達に通報したら賞金貰えるかな? 指名手配みたいな感じで、「この人校則破ってマース!」 って。
月乃さんが深呼吸をしている。
僕の居るところの空気はさぞ美味かろう。よく味わえ。
というかこいつ鼻息凄いな。ずっとふぅふぅ言ってんな。発情期か。
「私のこと……、覚えてますかっ……!?」
覚えてるわけねぇだろ。
ていうか初対面じゃね? 誰だよ。
そう思っていると、無線機から声が聞こえた。
『あの子だよ、多分。お前が入学試験の時隣に座ってた子』
覚えてるわけねぇだろ。
ほぼ初対面みたいなもんじゃねぇか。
『なんか受験で緊張してるその子にお前が声かけて、結構喋ってたじゃん』
覚えてるわけねぇだろ。
なんで喋った当人でもないお前の方が知ってんだよ。おかし……くはないか。よくあるし。
『とりあえず話合わせてやれ』
「えー……」
だる。
「勿論覚えてるよ。月乃さん、でしょ?」
「お、覚えててくれたんですか!?」
んな訳ねぇだろ。
お前が名乗ったのそのまま復唱しただけじゃ。
さっき自分が言ったことを俺が復唱しただけなのに勘違いしてくれるとかバカすぎだろ。盲目にも程あるだろこいつの恋。
「うん。美人だから直ぐにあの時の子って分かったよ」
「おほぉっ……! び、美人って……!」
何やねんその声。
エロいASMRとかでしか聞いたことないぞ。限界オタクが過ぎるだろ。
「バンドに協力してくれたんだね。ありがとう。僕からもお礼を言わせて欲しい」
「ほひゅっ……!と、とんでもないです……!!!」
「ほひゅっ」 って何?
僕の周り、まーた変な人が集まってきたなあ。類は友を呼ぶとはこういうことか。
「ぁ……あのッ!!!! 時宮くんに、お伝えしたいことがっ……! あります!!!」
告白だろうなあ。
ちなみに喜べ。僕は今まで告白を断ったことがない。
そして、振ったことも振られたこともない。絶賛浮気中である。
「私と、ちゅきあってくだしゃい!!!!」
「うん、良……」
『待て』
無線機からそう言われ、僕は口を止める。
「……何?」
『今までは第三者を介して、ある程度会う人の情報を把握してからお前と会わせていた。だから無茶な行動も容認されていた。……だが、今回は違う』
「はあ」
『まだそいつの素性や性格が分かりきっていない。危険因子の可能性もある。踏み込んだ行動は控えた方が良い』
「このバカ女が危険因子な訳ねぇだろ」
『とにかくまだ踏み込むな。一旦黒瀬と隠密隊を仲介してからだ。とりあえず友達から始めようとでも言っておけ』
「へーい……」
まあこいつの言う事は聞いていて損はないし、良いんだけどね。
「ごめんね。僕はまだ君について知らないことばかりだから、まずは友達から始めるって言うのはどうかな?」
「はっ……はい!!! 喜んで!!!!」
まぁとりあえずこんなもんで良いか。
◇
その後もまあ色々あったが、特別何か物凄い出来事があったわけでもない。
変わったことと言えば、僕の部室がまた視聴覚室に戻ること。
「練習見てって良いんじゃない?」 と、ひじりんに言われ、みんなもそれを了承したので僕はここに居れることになった。
いやあ、保健室も良かったけど、人目が少ないこっちの方が落ち着く。
ちなみにあのバカ女……、すまない噛んでしまった。
月乃ちゃんには、統治部のことは伝えてない。
多分統治部のことを教えたら入ってくるだろうし、《《あいつ》》からまた文句言われるだろうし。
とりあえず僕のことは他言しないでとは言っておいた。
練習は順調のようだ。カラフルな人もとい、龍くんが教え上手っぽかったし、まあ大丈夫だろう。龍くんも傘下に加わると良いなあ。
そんなこんなで今は帰宅中。
彩芭姉さんの車でソシャゲをして寛いでいると、無線機から声がした。
『少し報告がある。来てくれ』
全く、人使いが荒いものだ。
……逆か。僕が荒いのか。
「彩芭姉さん、ちょっと《《あいつ》》の家に寄るから、途中で降ろして」
「はいはい」
直接会うの何ヶ月ぶりくらいだろ。二ヶ月とかかな?
差し入れあると良いな〜。




