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クソ男と似た髪色

 土日を挟んで登校日。



 今日から本格的なバンド練習が始まる。


 土曜日に4人(と赤楚リツ)で楽器を見繕ったので準備万端。どうやら茶谷くんが音楽経験者のようで、楽器選びなどもスムーズに行えた。



 私は予定通りキーボード兼ベース担当。


 聖くんがドラムで、茶谷くんがメインギター。


 そして当初の予定通り、紅さんがボーカル兼サブギターとなった。


 初顔合わせの時に、茶谷くんが 「何でもいい」 的なことを言っていたが、それは 「どれもかじったことがあるからみんなに合わせる」 って意味だったそう。


 彼は意外と優しい人なのかもしれない。



 楽器以外にも沢山機材があったので、全部まとめて学校に直送してもらうことになった。


 だから、楽器に本格的に触れるのは今日が初めてということになる。正直、滅茶苦茶楽しみ。



 とりあえず一旦、バンド練習は視聴覚室で行うことになったので、今は視聴覚室のある7階まで、聖くんとエスカレーターで移動中だ。



 ちなみに、文化部発表会までの間、統治部の活動は主に保健室で行われることになったようだ。


 普通に意味がわからない。あいつ寝たいだけでしょ。先生もよく許してくれたな。



 そうこうしているうちに7階に到着。


 エレベーターの扉が開いた瞬間、物凄い大きな声が廊下に響いた。



 「はぐらかさないで!!!!!!」



 ……紅さんの声だ。



 視聴覚室から聞こえてくるようだけれど、扉が閉まっているのにも関わらず大きく響いたので、何か起こったのではないかと、急いで扉を開けた。




 ……そこには、相手の胸ぐらを掴んでいる紅さんと、



 「……え??????????」



 物凄く派手な髪色になった胸ぐらを掴まれている茶谷くんが居た。



◇



 「と、とりあえず何があったのか聞いても良いかな?」



 聖くんが恐る恐る尋ねる。


 茶谷くんは身体がビクビクと震えており、まだ落ち着かない様子。紅さんに事情を尋ねることにした。



 「こいつの髪!!!誰の真似でこうしたかって聞いていたのッ……!!」



 前述の通り茶谷くんの髪は、少し白味がかったカラフルな髪色になっていた。


 ドレッドヘアもほどいたのであろう。髪型も時宮のヘアスタイルをかなり短くしたもののような、何とも形容し難いものとなっており、ひと目見ただけでは誰か判別できない程だった。



 「……それが怒った理由?」


 「……別に怒ってない。ただ、その髪色に似た人に心当たりあるでしょって聞いただけ」



 この髪色に似た人……?


 ……真っ先に浮かんだのは時宮。


 でも時宮のはもっと、何か地毛っぽい自然な感じだったし。


 白髪の部分も、アルビノみたいな、もっと透き通った色だし、カラフルな毛先も、もっとグラデーションの鮮やかな色だ。



 ……なんか今の厄介オタクっぽいな。辞めよ。



 でも確かに、似てると言われれば似てる。……まあ時宮の真似をしたとも限らないし、何とも言えないけど。



 「月乃さんは、その髪色に似た人を探してるの?」


 「一目惚れ。初恋だから」



 ……あっ。



 「センターでボーカルになったのも、演奏終わりに告白するつもりだったから」



 ……あっ。



 「この学校に居ると思うんだけど、どこにも見当たらないから、大々的に告白すれば気づいてくれると思って」



 ……今確信した。


 ……絶対だ。


 ……絶対だこれ。




 これ絶対時宮のことだ。




◇



 2人とも落ち着いた様で、紅さんは茶谷くんにちゃんと謝罪した後、改めてバンド練習を始めた。



 曲は茶谷くんがやりたいと言ったボーカロイド曲に決定した。


 ボカロはよく聞くけど、『Tea Dragon』 なんてプロデューサー居たんだ。


 教えてもらうまで知らなかったけど、曲も滅茶苦茶良いし、知る人ぞ知るって感じの曲なのかな。茶谷くん音楽詳しそうだし。



 今日は実際に曲に入るよりも、基本のレッスンが多めだった。


 茶谷くんが結構教え上手ということもあったからか、意外とコツを掴むのも早かった。



 まだ難しいことはできないけれど、楽譜もそれなりに簡単なものだったから、本番も意外と上手くいくかも。



 ……紅さんにはまだ怯えてたけど。



◇



 練習終わり。



 放課後での出来事を聞きに、私は茶谷くんに、聖くんは紅さんに直接話を聞くことにした。



 幸い、学校の最寄り駅までは帰り道が同じだったので、下校しながら話を聞くことにした。



 ……というか聖くん、紅さんについて行ったから帰る方向真逆っぽかったけど、大丈夫かな?



 「それで、イメチェンしたのには何か理由があるの?」


 「……まあ、紅さんが言ったことが大体合ってるというか……。この学校にいる人の髪を真似したというか……」



 行動力……。


 こうして良く見たら、ドレッドを解いた後に加え、ブリーチまでしてるわけだから、かなり髪が傷んでいる。チリチリだ。



 「それってもしかして、時宮のこと?」


 「えっ……!? な、なんでそれを……?」


 「あ、やっぱりそうなんだ。いや、私と聖くん、知り合いだから」


 「な、成程。……でも確かに、2人と知り合いなら、協力を申し出るのにも納得がいく……」



 何やらボソボソとまた独り言を喋りだした。



 「何かあったの?」



 「えっと、話せばちょっと長くなるんですけど……」

 



 そうして、事の顛末を聞かせてもらった。


 茶谷くん、時宮絡みだったんだ。



 ……というか高校デビュー間違えすぎでしょ。もしかしてポンコツなのかなこの人。



 「それで、早い内にイメチェンしようと思ったんですけど……」


 「うん」


 「新しい髪型にする時、どうしても時宮さんの姿が頭をよぎって……。なんか、かっこよくて……」


 「それで気づけばオーダーしていた、と」


 「土曜の夜と、日曜全部、ブリーチに当てました……」



 行動力……。



 というか2日連続でブリーチって髪傷みまくるでしょ。ドレッドの時点で今更感はあるけど。



 それに、親しみやすくするためのイメチェンのはずが、また取っ付きづらい髪型と髪色してるし、やっぱりこの人ただのポンコツなのかもしれない。



 「というかずっと思ってたけど、なんで茶谷くんと紅さんは、そんな校則破りまくった姿が黙認されてるの?」


 「……えっと、入試の時の点数が良かったので。あと、専願 (私立高校を第一志望に受験する受験方法) だったので、特待生になれたっていうか……」



 あんたらその見た目で勉強出来んのかよ!!



 ……ということは時宮も勉強出来るってことなのかな。……そうだとしたら滅茶苦茶ムカつく。



 ……勉強がんばろ。少なくとも時宮だけには負けたくない。



◇



 『ん?僕に会いたいって言ってる人がいるの?』



 電話越しに、虹彩くんの声が聞こえる。



 「うん。なんか会わせないと色々不味いことが起きそうだったし、虹彩くんさえ良ければ」


 「いいよー。なら明日の放課後、僕も君達4人のところを訪れようかな」


 「分かった。ありがとうねー」



 電話を切り、月乃さんの方を向く。



 「明日、顔出しに来てくれるって」


 「……マジ?」


 「うん。多分月乃さんが言ってる初恋の相手、この人のことだろうし」


 「……絶世のイケメンで、虹色の髪の毛の人でしょ? きっとその人。間違いない」



 月乃さん、目が怖いなあ。鼻息も荒いし。



 悪い方向に行かなければ良いけど……。

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