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「ゆ…うと…どうして…?」
「…戻ってきたんだ。愛する雪刃の為に」
「…っ」
微笑んで話す悠兎に雪刃は思わず抱きついていた。
「雪刃、君にやってもらいたいことがある。いいか?」
こくん、と頷く雪刃。悠兎は雪刃の頭をやさしく撫でた。
「…あの門の前に行って祈れ。世界が無くなる前に」
「世界が…なくなる…?」
「あれをみろ」
指を指したほうを見ると剥がれ落ちた空から黒い雨が降り注ぎ、場所が消えはじめていた。
「場所が…っ!」
「雪刃、あの門に行くんだ!全てが消える前に」
「悠兎は…行かないの?」
「俺は待ってる。雪刃を連れて城に帰れるように」
ぎゅっと抱きつく雪刃は悠兎に口付けをするとにこりと笑った。
「悠兎、行ってくる。世界を無くさないために」
「…待ってる」
雪刃は悠兎から離れると世界再生ノ門に向かって走り出した。
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しばらくすると世界再生ノ門の前に着いた。ここで祈れば世界は無くならない。 悠兎も私も居なくならなくて済む。
きゅっと拳に力を入れた。
「あたしが…やらなきゃ」
門の前にひざまずくと、雪刃は祈りを捧げた。
「世界をなくさないで…」
直後、眩い光が辺り一面に広がると同時にものすごい風が起こり、雪刃は吹き飛ばされた。
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「……悠兎?」
「気がついたか…雪刃、もうすぐ城だから待っていろ」
「…悠兎…っ」
ぎゅっと抱きつくと悠兎も抱き締めた。
「幸せになろうな、雪刃」
「うん…悠兎」
にこりと笑うと二人は城の中へと入って行った。
吸血鬼の姫である雪刃によってこの世界は救われた。
颯真たちが居なくなった今、世界は再び平和を取り戻し再生する為に歩みだしたのだった。