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プライドだけ無駄に高い拗らせエリートは2度目の人生もうまく生きれないみたいです  作者: 蟹悠一
エクス・マキナ編

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エクス•マキナ

「君が、エクス・マキナ•••」


目の前に突如として現れた討伐対象。それと正面を向き合い、2人切り株に腰掛ける。

実物のエクス・マキナの姿は、予想と全く異なっていた。「ゴーレム」というからには、巨大でゴツい、土でできた人形をイメージしていた。しかし実際の姿は、整った顔立ちに加えて華奢な体型に銀髪の髪。SF映画に出てくるようなアンドロイドに近い容姿をしている。

今目の前にいる相手は討伐対象。だがそれを馬鹿正直には言えない。仲間が帰ってくるまでなんとかここに留めておかなければ。そのためにどう会話を切り出すべきか悩んでいると、彼女の方から質問してきた。


「あなたたちは、私を殺すために来たのですか?」


あまりに単刀直入な問い。本来ならはぐらかして答えるべきだが、急に質問をされた焦りと、彼女の澄んだ瞳から放たれる目力に押され、つい本当のことを口走ってしまう。


「そうだ。俺たちがここに来たのは、君を討伐するためだ。君がテリアの婚約者を殺したからその仇討ちに••」


「私は殺してません」


間髪入れず、食い気味に疑惑を否定する彼女。だがそれを鵜呑みにするわけにはいかない。敵対する様子は見せていないものの、疑うべき要素は多くある。例えば、さっき彼女は確かに「あなたたちは」と言った。つまり俺の他に仲間がいることを知っている。知っている上で、一人になったタイミングを見計らって接触をしてきた。とにかく今は会話をして情報を聞き出すことに専念しよう。



「じゃあ一体誰が殺したんだ?もしかして君の創造主が関わってたり•••」


「いいえ。博士はもう死んでいます。5年前に私が殺しました」


これもまた食い気味に否定してくる。だが疑問は一層増えるばかりだ。彼女はテリアの婚約者を殺していないと言う。だが何故断言できる?俺は彼の容姿も、いつ死んだかも話していないのに。もしかして彼女は博士以外誰も殺したことがない?そうだとすると、一連の事件の犯人は別にいるのか?



「殺したのは私と同じ型のクローンです。ですが、責任の一端は私にもあります。私が博士を殺したことで司令塔がいなくなり、クローンたちは森を出て街を彷徨い始めました。責任の一端があるというのはそういうことです」


「•••なるほど。じゃあ、君の何故クローンたちは人を殺すんだ?」



「埋め込まれたプログラムを解除し、確立した感情を持っているのは最初に造られた私だけ。他4体のクローンは感情を持たず博士のプログラム通りにしか動きません。ただ街をNPCのように徘徊してるだけで、人に危害を加えることはまずありません。ある特定の条件下を除いて」


「その条件ってのは」


「彼女たちを『所有』しようとした場合です。博士は独占欲の強いお方で、博士以外が『所有』しようとした場合、迎撃プログラムが作動する仕掛けになっています。一番多いのはナンパや強姦ですね。ほら。私ってすごくかわいいじゃないですか。だから自分のものにするため、そういうことをしてくる人が偶にいるんです」


一応筋は通っている。被害者のほとんどが、路地裏など人気のない場所で死んでいることにも説明がつく。


「私が博士を殺したせいでクローンが解き放たれてしまった。そのことを私も後悔しています。出来ることなら奴らを殲滅してやりたい。ですが私一人でクローン4体を相手取ることは流石に厳しい。だからこの場所で、あなたたちのような人が来るのを待っていたんです。クローンの討伐。どうか私にも協力させてくれませんか?」


協力自体は願ってもない申し出。だがそれを差し引いても討伐対象が4体というのはかなり厳しく感じる。さっき俺は、彼女が話しかけてくるまで気がつけなかった。もし仮に、彼女が俺を殺す気だったら反撃する間も無いうちに死んでいただろう。敵の性能を知るためにも彼女の協力は不可欠。ここは彼女を信じて話に乗るしかない。



「俺は君を信じるよ。だけど協力するかどうかに関しては他のメンバーと相談する必要がある。あと15分もすれば戻ってくると思うから、それまでに色々と教えてくれないか?例えばクローンの性能とか」


彼女は嫌な素振りひとつせず、その詳細を語り始めた。


「クローンたちは魔法を使うことができないため、攻撃手段は徒手空拳に限られます。ですが硬度、身体能力共に人のそれを遥かに上回ります。並の剣や魔法ではかすり傷をつけることすら難しいでしょう。そうですね。例えるならば『ダイヤモンドの甲冑を着た北極グマ』が適切でしょうか」



なるほど。まあ何となくのイメージはついた。前半の硬度に関しては問題ない。~最後の剣豪~は万物を斬ることのできる能力。ダイヤモンドだろうと豆腐のように両段ができるはず。問題は俊敏さだ。クマというとその大きな図体に目が行きがちだが、時速40キロ近い速さで走れたはず。どんな攻撃だろうと当たらなければ意味がない。時速40km。一般道を走る自動車と同じ速度なら流石に反応できると思うけど•••いや、そもそも時速40kmと決めつけることはできない。50kmかもしれないし80kmかもしれない。そもそも彼女がクマの正確な移動速度を知っているかは怪しい。彼女がクマを比喩の引き合いにだしたのは、単にその俊敏さを表現するためだと考えるのが自然ではあるが•••いや、そんな無駄に思考を巡らせるよりもう一度聞き直した方が早いな。無駄に長考するよりも、「具体的な時速はどれくらい?」って聞き直せば一瞬で分かる話なのに。うん。俺の悪い癖だ。分からないことがあっても人に聞こうとせず、与えられた情報だけを元に自分なりの答えを見つけようとする。そのせいでいつも時間を無駄にするのに、異世界に来てもまだその癖が治らない。三つ子の魂百まで。一度ついた癖は死んでも治らないな。とにかく、思考が逸れたが標的の速度を知ることは最重要。相手の速度によっては新しいスキルを習得しなければならないかも———



いや、違う。そこじゃない。何か違和感がある。彼女はさっきなんて言った?



おそらく神の影響だろう。この世界の言語は俺にも通じるようになっている。馬やクマに類似した存在がいる場合、名前は「〇〇ウマ」と呼称されている。この世界に方角を指し示す言葉があるのは至極当然。だが、それにしても•••



「この世界に『北極グマ』って存在するのか?」



何故彼女はわざわざ「クマ」という大きな分類でなく、「北極グマ」という特定の種に限定した比喩をしたのか。もしかして彼女は、俺にカマを掛けたんじゃないか?


そんな俺の予想は——




「そのワードに反応したということは、あなたも博士と同じ。あっちの世界から来た人ですね」









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