↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プライドだけ無駄に高い拗らせエリートは2度目の人生もうまく生きれないみたいです  作者: 蟹悠一
エクス・マキナ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/14

初任務

-転生2日目の朝 宿屋-


「あっ、おふぁよー」


階下の広間に行くと、テリアがワイバーンの肉を頬張りながら挨拶をくれた。この宿は1階が酒屋、2階が寝室で構成された一般的な宿。基本は1階で食事をするが、ワイバーンの匂いにどうしても慣れず、2階に朝食を運んで貰った。昨日より幾分マシになったとはいえ、鼻をつまみたい程度には匂いが残っている。その上、近くの卓ではみるからにゴロツキみたいな連中がカードを使った博打(?)らしきものをしており、危険な雰囲気を醸し出している。長居はしたくないので、卓についてすぐ本題を切り出す。


「それで、昨日言ってた話っていうのは」



昨日寝る前テリアに、明日の朝大事な話をしたいと言われた。その日のうちに話さなかったのは、疲れた俺を気遣ってのことだろう。話す際のトーン的に、重苦しい話題ではないと思うが•••


彼女は噛んでいた肉を急いで飲み込み、答える。


「その、話っていうのはね。私に剣術を教えて欲しいの!昨日ワイバーンを両断したあれ!あれを教えて欲しいの!」


•••なるほどそうきたか。

教えられるものなら教えたいが、自分には無理だ。ただ~金欲の代価~によって寿命と片目を代償に習得しただけ。どうやってスキルを使っているのか、自分でも言語化ができない。「どうやって腕を動かすの?」と言われるのと同じで、「出来るから」としか答えようがない。

だが事実を告げるのも酷な話だ。こんなにも目をキラキラさせている女性に、2つ返事で諦めろだなんて言えるか?自分はただでさえ人の頼みごとを断れないタイプなんだ。あったばかりの優しい女性相手なら尚更。心は痛むが、兎にも角にもここは一度話をすり替えるしかない。


「それは••まあどうだろう。えっと、テリアは何で剣術を上手くなりたいの?」


「それは、今受注してる討伐任務に関わることなんだけど」


確か昨日言おうとしてたっけ。ワイバーンが現れたせいで昨日聞きそびれたけど。


「その討伐対象っていうのは?」


その質問をした瞬間、テリアの眉間に皺がよる。昨日会って以来、常に明るく笑顔だった彼女の雰囲気が、一気に重苦しいものになる。重い空気感の中、テリアは答える。



「私たちの討伐対象はエクス•マキナ。有史以来最強のゴーレムで、私の元婚約者の仇」


エクス•マキナ。前にいた世界でも聞いたことがある。ゲームキャラとかの名前に度々使われていて、「機械仕掛け」を意味する言葉だった気がする。

この世界だとゴーレムの名称として使われているのか。


「実はこの討伐任務。かなり無理をしてねじ込んで貰ったんだ。エクス・マキナの戦闘行動は稀で実力も未知数。その上、他の魔物と比べて被害数も極端に少ないから報酬もそこまでだし、後回しにされたまま2年以上放置されてるの。報酬的にも人命救助の効率から考えても、割に合わない任務だってことは分かってる。こんな任務受けるくらいなら、ワイバーンを狩ってた方が報酬も出るし、もっと沢山の人の命を救える。でも、どうしても彼の仇を取りたい。そのためには少しでも勝てる確率を上げておきたい。だから、お願い!私にも教えて!」


話終わる頃には、元のすっかり明るい雰囲気に戻っていた。多分意図的にそうしたのだろう。彼女は本当にいい子だ。辛いのは彼女の方だろうに、すっかり気を利かされてしまった。

彼女が剣術を習いたい理由は元婚約者の仇を取りたいから。それなら、答えはもう決まってる。



「ごめん。残念だけど、色々と複雑な事情があって教えることはできないんだ•••••だけど、討伐に協力することならできる」


テリアは椅子から跳ね上がり喜ぶ


「本当に!!いいの!?」


「ああ。俺に色々教えてくれたお礼さ」


話の成り行きで、報酬が低い上に敵の危険度すら分からない危険な任務に行くことになってしまったが、まあ仕方ない。自分の力で解決ができる以上、断るのよりはずっとましだ。それに、「助けてくれた主人公に惚れるヒロイン」という展開は、異世界ものに限らず古今東西あらゆる創作でのお約束。もしかしたら俺も•••

そんな期待を表に出さないよう注意しながら、平静を装って会話を進める。


「討伐任務には、他に誰かくるのか?」


「うん。メクルとカルネ以外にも、あと2人いてそろそろ来るはずなんだけど——」



ガシャン!!!



テリアの話を遮ったのは、テーブルが勢いよくひっくり返された音。その源泉は、先ほどまで博打をしていたテーブル卓。

激昂したスキンヘッドの大男が、金髪•半裸の美青年の髪を毟り取らんとする勢いで握り掴んでいる。


「こんなことありえねえ!イカサマに決まってる!たった一巡目で『天使のラッパ』の役が揃う訳がねえ!!」


「0.04%だ」


「ああ!?」


「配られた初手に加え、川に切られたカードを使って『天使のラッパ』を一巡目で作れる確率。単純計算だと2500試合に一回は起こる現象。俺がこのゲームを何千回プレイしたと思ってる?それこそ、上着を買う金すら擦っちまうほどに賭け試合をしまくった。つまりあんたの負け方は充分に起こりうる可哀想な事故だってこと。分かったら金置いて取ったと消えな。俺の上着代に充ててやるからさ」


「テメエ!ふざけてんじゃ」——パチンッ


指を鳴らす音が木霊すると同時に、大男が髪を掴んだまま、気絶したように倒れ込む。



「なんだよレオン。せっかくおもしろいところだったのに」


「お前に任せてると店ごと壊れそうだったんでな」



指を鳴らしたのは、レオンと呼ばれるメガネをかけた長身の男。黒のスーツに身を包んでいて、皇居近くの大企業にインターンしに来た私立校の大学生って感じがする。


片や半裸で金髪のヤンキーみたいな男。片や襟の立ったスーツを着こなす好青年。一見歪に見える2人組み。絵に描いたような凸凹バディ。漫画だと結構好きなんだけど、正直現実で目の当たりにするとあまり関わりたくはないかな。特に金髪の方は自分と正反対の——いや待て。「二人組」ってことはもしかして•••


先の展開を予感した俺をよそに、テリアが手を振り大声で呼びかける。


「いた!フウライさん!レオンさん!こっちですよー!!」












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。