毒薬、或いはジャンクフード
「じゃあ特別に叶えてあげる」
「あなたに授けるスキルは•••」
「ねえねえ。あなたどこから来たの?見慣れない格好だけど」
「その服も見たことない。どこの民族のやつ?」
「ポケットに入ってた硬貨も見慣れないものですねぇ」
目が覚めると俺は美女3人に質問攻めにされていた。活発系な女騎士、テリア。片目隠れのクール系魔法使い、メクル。おっとり系の修道女、カルネ。
質問したいのはこちらの方なんだが。とにかくこの世界に馴染む為、それとなく情報を聞き出さなければ
「俺は久渡真也。20歳で出身は...海の向こうの東から来たんだけど..」
「海の向こうっていうとザザラ諸島のあたりかしら?『ミナゴウマ』とか『第五霊体』とか棲息してるっていう」
「ああ、そう。そこら辺だ」
何を言ってるのか全く分からないが取り敢えずそういう設定にしておこう。ってかなんだよ『第五霊体』って。『ミナゴウマ』は馬の一種だって分かるけど、第五霊体って。生物なのかどうかすら分からない。
「アンタすごいね。あんな魔境の地で生活してるなんて。じゃあ結構強いんだ」
「いや、そんなことないよ。それより聞きたいことがあって。ここはどこで、今は何年何月何日かな?船で遭難しちゃったせいでよく分からなくって」
「ここはプラトン王国ですよ。まあ、『王国』と言っても王政は180日前にクーデターで壊れちゃったので王国と名乗っていいかは怪しいですけどぉ。あと今は『甘期67周期の450日目』です」
•••まあ日付は置いといて、ここが政権崩壊した元王国ということを知れたのはデカい。テンプレ通りにいくなら、王に即位して現代知識で外交無双か、チートスキルで王国再建の二つが鉄板だろう。
「でもよかったよ。3人で討伐の任務に来たらあなたが気絶していて。魔物に食べられちゃうんじゃないかって心配してたんだから」
どうやらこの世界には魔物がいるらしい。空には竜っぽいのが飛んでるし。3人でパーティーを組んでるってことはギルドとかもあるのかな?
取り敢えず当面の目標としては、彼女たちの討伐に協力して実績を積む。そしてある程度箔がついたら王国再建に向けて頑張るみたいな感じだろうか。
まず彼女たちの討伐任務に協力していいとこを見せよう。
「その討伐対象ってのは?」
「私たちの討伐対象はね—
「来たぞ!ワイバーンだ!」
テリアの返答をかき消す程の大声が、街の方から響いてきた。
声の方向から、ワイバーンと呼ばれる魔物が市街地を蹂躙している様子が見えた。
光沢を放つ鱗。重厚感のある尻尾。比肩するものすら思いつかない鋭利な尻尾。まるで人を殺すために研ぎ澄まされたような、機能美さえ感じさせるフォルム。街は一瞬にして火の海へと化し、人々が逃げ惑っている。
「王宮の結界魔法陣が壊れたせいで入ってきたみたいだね」
テリアが剣を鞘から引き抜き、二人に語りかける。
「メクル。カルネ。助けに行くよ!」
「嫌だ」
「ゔぇっ!なんで!?」
「私たちの討伐目標は違うやつでしょ。スライム相手ならまだしも、今ワイバーンと戦うだけの余裕はない」
「だけど•••カルネは?」
「私もあまり乗り気ではないですかねぇ。この国の人は無神論者ばかりですし、ワイバーンと戦ってまで助けたいとはぁ•••」
「そっか。まあ、二人が来ないならやめておくよ。66大隊の人は来てくれるかなあ」
テリアは予想よりもあっさりと諦めた。困っている人を放っておけない熱血系騎士だと勝手に決めつけたいただけに意外だ。しかしそれも仕方のないことなんだと思う。彼女たちを現代の倫理観で責めることはできない。恐らく「基本的人権」という考え方も普及していないだろうし、人の命の価値が恐ろしく軽い時代なのだろう。
3人が諦めた今、流れ的に俺がでワイバーンを倒す展開になるはず。しかし、転生してから特にこれといった変化もない。まさか、リ○ロみたいにチートスキル無しで孤軍奮闘する絶望展開が待ち構えてるのか?それだけは避けたいけど•••
クソッ。一体俺はどうすれば——
「習得可能スキルが一つあります」
耳元で、何か機械音のようなものが囁いてきた。
3人は特に気にしていない様子。雑談をしながら、各々武器の手入れをしている。
自分にしか聞こえない、スキルの副次作用なのだろう。ここに飛ばされる前、最後に聞こえた言葉を必死に思い出す。
「あなたに授けるスキルは~金欲の代価~
代償を必要とする代わりに、全てのスキルが習得可能となる最強の権能。」
習得可能スキルが一つあります。
スキル
~無敵の剣豪~
万物を切り伏せることが可能になる
代償 ???
習得しますか?
テリアのバッグから、錆びついた銅剣を勝手に取り出す。
心臓がバクバクする音が聞こえる。
全男子小学生が一度はしたことのある妄想。教室に入ってきた不審者を一人で鎮圧するという全男子の夢。正直高校生になってからも何度かしてたシチュエーション。それに近しい(?)状況が降って湧いてきた!
それをようやく叶えることができる。
震える声を抑えながら、口に出す。
「ああ。習得する」
代償なんて気にしない。
後先考えることはもうやめよう。
俺は、この世界で生き方を変える!
習得完了
スキル ~無敵の剣豪~を習得しました。
その機械音が終わると同時に、五体に力が満ち満ちてくる。定期テストで学年一位を取った時みたいな、世界が自分が認めてくれているみたいな万能感が脳を激しく刺激する。
この高揚感を噛み締めるかのように、ゆっくり一歩ずつ歩を進める。
それに気づいたワイバーン。
タンギングを始め、その直後、見たこともない壮大な火柱が俺を襲った。
しかしその炎に対し、油はね程の恐怖も感じなかった。
悠々自適に、錆びついた銅剣を振る。
それを振った瞬間、ワイバーンの炎が真っ二つに割れる。そして斬撃の余波は、ワイバーンの首を一刀両断した。
民衆たちは、何が起こったのか理解できないような顔をしていた。しかし、ワイバーンの首が地に落ちる音を聞き、民衆たちが一斉に歓喜の声を上げる。
ワアアアアアアアア!!!!
「凄え!あいつを倒すなんて!」
「あんた名前は!?ぜひ名前を教えてくれ!」
そして賞賛の声は、民衆のみならず彼女たちからも。
「凄いじゃん!ワイバーンを一撃で倒すなんて!」
「へえ。結構やるじゃん」
「一人で倒すなんて凄い勇気ですねぇ。それに比べて私は••」
嬉しい。嬉しいとしか言いようがない。
全身が熱くなる。おそらく顔は真っ赤になってると思う。
褒められたのっていつぶりだっけ。
そうだ。自分は褒められるのが好きだった。
昔はみんな、勉強するだけで褒めてくれた。でも段々と、勉強する過程は評価されなくなって、結果を出すことが必要になった。その後は結果を出すことも当たり前になって•••
思い返すと、褒められたのは高校受験に受かった時以来かもしれない。
全身から涙を流す様に、冷や汗が流れ出る。
脳みそを直接「いい子いい子」と撫でられている様な、えも言えぬ幸福感が五体に満ち満ちてくる。
五感全てを使ってその幸福を享受していると、突然、視界に違和感を感じた。
なんだろう。何か不味いことが起こってる。
明らかにおかしい。
顔のあたりに明らかな違和感がある。
まるで、ずっとウインクをしているような•••
「目標達成。結果を表示します」
まさか•••
平静を装いながら、恐る恐る結果を確認する。
結果
特別スキル~無敵の剣豪~を習得
•万物を切り伏せることが可能になる
•基礎魔力10000up
代償
•左目の視力
•寿命15年




