星屑になった日
ジャンクフード。
ハンバーガー、スナック菓子、炭酸飲料。
高カロリー、高脂質、高塩分で低栄養。
肥満や生活習慣病のリスクを高めるリスクしかない食品類。
それでもなお人は食べ続ける。
寿命と健康を支払いながらそれを食べ続ける。
自分はそんな短絡的な人間になるなと教えられ生きてきた。他人を出し抜け、勝ち組になれ。それが我が家の家訓だった。
遊び呆ける同級生を尻目に勉強を続けたおかげで、国内有数の名門大学に入学できた。
これで勝ち組になって幸せな生活を送ることができると思っていたが、人生というのはそんな単純なものではないらしい。
大学に入ってからは燃え尽き症候群に陥り、なんとも味気ない生活を送っていた。同級生が将来の夢や就活のビジョンを嬉々として語り合うのを聞くたびに、自分は空っぽの人間なんだと思い知らされた。大学に入れば勝手にエンドロールが流れて人生の幕が閉じると思っていた自分は、その先の人生設計など考えたこともなかった。生きるのが楽しいと思えるのは友人と遊ぶ週1日か2日程度で、他の日は何者にもならないことに対し焦燥を抱きつづけ、憂鬱になる毎日を送り続けていた。
地元に帰省した時、偶然中学時代の同級生とあった。そいつはクラスで一、二を争うバカで、こんな人間にはなりたくないと思いながら勉強していた。久しぶりに自己肯定感を上げるチャンスだと思い、彼と飲みに行くことにした。
だが、結果は全く逆のものになった。
自分の自尊心は完全に打ち砕かれた。
彼は高校中退後に働き初めて、収入もそれほど多くない。趣味はパチンコと女遊びで口座残高は6桁いかないらしい。典型的とも言える堕落した人間像。
しかし話をする内に、その男に対して劣等感を抱き始めることになる。自分の付加価値を下げるような自虐を笑い話に変えるその姿に、社会的動物として格の違いを見せつけられたような気がした。その日その日を一所懸命に、酒とタバコで寿命を擦り減らしながら生きるその男が、自分よりも遥かに高尚な人間に見えた。
友達も少ないながらいるし、没頭できる趣味もある。唯一足りないものがあるとすれば、それは気の有り様なんだと思う。
映画にもよくいるだろ?家庭も友達もそれなりの地位を持ってる癖に如何にも自分は不幸ですみたいな面をして「ただ人生が終わるのを待つのは嫌だ!」とか言う奴。そういう脚本の結末は二つしかない。
普通に生きることの素晴らしさに気づくか、なんらかの才能を発揮してチヤホヤされるようになるか。
どちらにせよハッピーエンド。
だが生憎、人生はそう簡単にいかない。
20年間に渡り醸成された人生観を、そう簡単に変えることなどできるはずもない。積み上げてきた努力を捨てて自由に生きることなど出来るはずもない。
一生他人と自分を見下し続けながら、細く長く生き、朽ち果てていく。それが自分の結末。
でも、俺の人生はこれからが勝負だ。今まで頑張ってきた分、大人になってからが本番だと。正気を保つ為、自分に言い聞かせていたら死んだ。
久しぶりにポテトとハンバーガーをテイクアウトして紙袋片手に歩いていたら、トラックにはねられて死んだ。
痛い。
血がドバドバ出てる。
あまりに胸糞悪い結末だ。
将来幸せな生活を送るためにずっと頑張ってきたのに。大人になれないまま死ぬなんて。あまりに理不尽な仕打ちだ。
でも、逆に良かったのかも。
どうせ生きていてもいい事なんて数える程しか無いだろうし、ダラダラと生きながらえるくらい••••いや、嘘だ。
長く細く、何事もなく死んでいくと思ってたなんて嘘だ。
何か起きると期待してた。
宝くじが当たって億万長者になったり、何か芸術の才能が開花してチヤホヤされるようになったり、絶世の美女に見染められて運命的な恋をしたり、異世界転生してチートスキルを身につけたり。
そんなあり得もしない奇跡が起こるって。今まで頑張ってきたんだから報われるはずだって。心のどこかで期待してた。
打算的な人生を歩んできた癖に、計算外のことが起きることに全てを賭けていた。
もっと好き勝手に生きてみたかった。
もう一度やり直すチャンスが欲しい。
それが叶わなくても。
せめて、せめて最後に、ハンバーガーだけでも食べて死にたいなあ。最後の食事がコンビニで買ったサラダチキンだなんて———
「じゃあ特別に叶えてあげる」
「...きて...起きてください!」
目を覚ますと、金髪、巨乳の騎士っぽい衣装をしている美女に肩を揺すられていた。
「生きててよかった!全然起きないから死んでるのかと思っちゃって」
「生きてたならもう良いでしょ。そんなやつ置いてさっさと先行くよ」
「あらあら、そんなこと言ってメクルが一番心配してたのに」
「うっさい!余計なこと言うな!」
髪で右目を隠して、とんがり帽子を被っている貧乳ツンデレ?美少女
おっとりとした見た目と口調の、修道服を着たシスター
そして中世ヨーロッパっぽい街並みと、空を飛ぶ無数の竜たち。
間違いない
ここは異世界だ




