↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プライドだけ無駄に高い拗らせエリートは2度目の人生もうまく生きれないみたいです  作者: 蟹悠一
エクス・マキナ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/14

惨痛

あの衝撃を思い出す。

俺が異世界に飛ばされた原因。トラックにはねられた時。巨大な質量を持った塊と急速に激突するあの衝撃。


その衝撃を受けて尚意識を手放さなかったのは、レオンの魔法による影響。

シンヤが正拳を喰らう瞬間。それを見た彼は直接的なリカバリーは不可能だと判断し、魔法によって思考を誘導することに決めた。


パチンッ!


『離すな!』


という声が、頭の中を支配する。


レオンの能力には段階があり、指を鳴らす力が強い程、思考の誘導力もより強制力を増す。


レオンの能力はゴーレムのプログラム回路にも有効。


殴った者。殴られた者。両者が互いに抱きつき、掴んで話そうとしないまま、回転をかけられた石が水面を跳ねるが如く、数枚の壁を突き破りながら転がり続ける。


ドゴーン!!


回転が止まったことに息つく間もなく、直ちに複製体が追撃の拳を振り下ろそうとする。

だが、


「間合いに入りゃこっちのもんだ!」


振り下ろされた拳が頭部を破砕する寸前。斬撃がコード03の体を真っ二つに切り裂いた。



コード02とコード03の討伐完了。


(これで残りは一体。いける!これならいける!)


絶望的な状況から一転して、希望が見え始める。

仲間の元へといち早く駆けようとする。


が、体が動かない。


彼の脳を支配していたのは、たった一つの感覚だけ。










痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





「アアアッッ!!!!ふうっ!ふうっ!ア!!ガッッッッッ!オエッッ!!!」


臓腑の中のありとあらゆる消化物を、鉄の味と共に吐き出し続ける。



やばい!痛いとかいうレベルじゃない!まじでシャレにならねえ!なんで!?なんでこんなに痛い!?多分肋骨が何本かいってる。だけど、それにしてもこんな•••こんなにも痛いものなのか!?立ち上がることすらままならない!?いくら何でも••••••

いや、あれのせいだ!

~魔力機関~を習得する代償として背負った『痛覚50%up』。50%upってことは、通常時と比べて1.5倍の痛み•••



その痛みから逃れるため、身を捩り、大声で叫び、歯を食い縛る。だがそれらの試みも全て、痛みを和らげる気休めにすらならない。

陸地に打ち上げられた魚が如く、じたばたとしていると•••




ドゴーン!!



シンヤが戦闘不能に陥ると同時に、潜伏していたコード04がフウライたちの前に姿を晒す。

小細工なしの純粋な肉弾戦。3対1という数的有利も、仕留める手段が無い以上は意味をなさない。

ゴーレムの魔力消費効率は、生身の人間のそれとは天と地ほどの効率差がある。3人の内の誰かが魔力切れを起こした瞬間、彼らの全滅が確定する。



(早く!早く俺が行かないとなのに!体が動かない。脳が動くことを拒絶してる。立てない。足を動かせない。まずい!どうすれば。どうすれば——)



「習得可能スキルが一つあります」


彼が答えを渇望すると、それに呼応するかのようにスキルが囁いてきた。



習得可能スキルが一つあります。


スキル


~複製された男(ミラーバース)~

自分の複製を一体作り出す


代償 ???


習得しますか?



何もできない無力な彼に掲示された唯一の解決策。

しかし、目の前に垂らされた蜘蛛の糸を前にしても、許容できない問題が一つある。

それは、代償。



(~複製された男~。説明の通り分身を作り出す能力だとして、今の俺の負傷まで再現するのか?いや、~金欲の代価~で掲示されるスキルは、現状の問題を解決するものだけ。だとすれば、~無敵の剣豪~を習得した万全の状態のクローンが作られるはず•••だけどその代償は!?単純に戦闘力が2倍になる能力。間違いなく相当の代償を必要とする強力なスキル。寿命が10年~20年削られてもおかしくない。それだけならマシな方。最悪の場合、左眼を代償としたように、どこかしらの臓器を取られる可能性すらある。下手すれば命に関わるかもしれない。最悪なのは右目を取られる場合。こんな福祉のふの字も無いような異世界で、盲目の転生者に居場所が用意されるのか?いくら何でもリスクが高すぎる。そうだ。一体倒しただけでもよくやった方だ。あいつらは確かに良い奴ら。だけど、会ってまだ数日。命を賭けるほどの仲じゃ———)



パァン!!



思考を中断させたのは、戦場から聞こえてきた銃声のような音。そして、側頭部から大量に出血をするレオンの姿。

その姿を見て脳内をよぎったのは。



ああ。なんで今思い出すんだろう。



(ありがとう。君は優しいね)


作戦開始前、マキナから言われた一言。それが何回も頭の中で反芻する。



そうだ。俺は昔から「優しい」ってよく言われてた。本当はそんなことない。ただ最低限の倫理観と責任感を持ってたから渋々他人を助けてただけで、それが結果的に優しいって思われただけ。

その上、その称号は何の効力も持たない。頭が良くなるわけでも、運動ができるようになるわけでも、異性から好かれるわけでもない。ただ他人にとって都合の良い人間になるだけ。メリットなんて一つもない。


でも、そうだとしても。その称号だけが、落ちぶれたら時、俺に付加価値をつけてくれた。

定期テストで順位が落ちた時。次のテスト期間まで、俺の持つ一切の価値は無くなる。親から口汚く罵られる。誰も俺の味方になってくれない。

そんな時唯一、俺は生きてていいんだって。俺には価値があるんだって肯定してくれたのが「優しさ」という称号。

ここでレオンを見捨てて、それさえも失ったら、俺は何に依って生きてけばいい?転生前必死になって積み上げた知識も経歴も、この世界では何の役にも立たない。そしたら俺にどんな価値が残る?



そうだ。他者に対する献身と奉仕。それくらいしか能がない。ならいっそ、こんな無価値な命なんて捨ててやる。


もう迷いも躊躇もない。このスキルは、俺を肯定するための祝福だと。俺はそう受け取った。



「ああ。習得する」





習得完了


スキル~複製された男(ミラーバース)~を習得しました。





  





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。