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『真・八犬伝 〜転生して再び伏姫と恋人になった俺、時を超えて現れた最強の親友と妖怪軍団から彼女を奪い返す〜』  作者: 凡太M太郎


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第10話:渋谷の街と火遁と好青年

「う〜ん、よく寝たよく寝た……」

今日は学校が休みの日だ。俺は二度寝でも決め込もうかと、幸せな気分で枕に顔を埋めた。だが、その平穏はすぐに打ち破られる。

「志貴!起きよ!朝じゃ、八犬士を探しに行くぞ!」

せっかくの休日を現実へと引き戻すような大声が、すぐ傍で響いた。

「もー、うるさいな……何だよ、まだ9時じゃないか。もう少し寝かせろよ」

「何を言っておる! このまま惰眠を貪っていても、事態は何も良くならんぞ!」

そう言って、荘助が俺を布団から無理やり引きずり出してきた。

「分かった、分かったって! ……探すったってどうすんだよ? レンみたいにアイドルやってる奴なんてそうそう居ないだろ。見つかるわけねーって」

ささやかな抵抗を試みたが、荘助にはピンとこないらしい。それどころか、こんな時だけ妙に冴えているようで。

「何を! 拙者は気づいたのじゃ。お主に会った時も、レンのもとへ参った時も、必ず妖怪が現れたではないか。つまり、妖気を探せば自ずと八犬士が現れるということじゃ!」

やはり、この男は考えているのかいないのか。仮に俺が八犬士の一人「信乃」だとして、何の力もない俺をそんな危険に巻き込むつもりなのか?

俺は不安に駆られながら、結局、渋谷の街へと引きずり出された。

「うぬ、志貴よ。ここはどこじゃ?」

「ここ? 渋谷だよ」

俺の読み通り、荘助は早速、渋谷の喧騒をはしゃいで楽しんでいる。「こいつも見た目は俺らと同い年なんだよな……」なんて思いながら眺めていた、その時だった。

荘助が急に鋭い顔つきになり、ピタリと足を止めた。

「お、おい、何だよ。急に立ち止まって。……なんか欲しい物でもあるのか?」

「……妖気じゃ」

俺はどうしてこうなるのかと自分を呪った。

「志貴! 後ろじゃ! しゃがめ!」

言われるままに身を伏せると、荘助は颯爽と刀を抜き放ち、戦いに突入する。

目の前には、異様な姿の怪物が立っていた。

「ふむ、あれは『衣屍いし』か」

「なんだよ、それ!」

「人間が衣服にすぐ飽きたり、粗末に扱ったりすることで溜まった怨念の集合体じゃ。……む? 中に人が囚われておる!」

怪物の体内には、取り込まれた人間が見えた。傷つけることを恐れ、荘助が攻めあぐねる。

その時、どこからともなく鋭い風が吹き抜けた。

「――『飛扇・風智流ふうちりゅう!!』」

「レン!」

「レンよ、助太刀感謝いたす!」

現れたレンが扇を構える。「話は後だね。まずは志貴君、あの人を助けて避難させて! 荘助は俺と戦うぞ!」

俺は言われるがままに救出した人を安全な場所へ運び、すぐさま現場へ戻った。だが、そこには予想外の光景が広がっていた。

「ぐはっ! こやつ、ここまで出来るとは……」

「くそっ、武器に布を絡められて、思うように動けない!」

二人が負けそうになっている。もどかしい気持ちで立ち尽いたその時、背後から眩い光が溢れ出した。

「な、なんだ? もしかして、さっき助けた人か……!?」

光を放っていたのは、先ほど俺が助けたばかりの男だった。その中心で、男が静かに印を結ぶ。

「『火遁――豪火灼熱焼ごうかしゃくねつしょう』!!」

猛烈な火炎が吹き荒れ、妖怪を一瞬にして焼き尽くした。

「あれが、新しい八犬士……」

驚きを隠せない俺をよそに、レンはいつも通り冷静に声をかけた。

「さっきはありがとう。僕は犬坂レン。こっちは犬川荘助。で、そっちの彼が犬塚志貴君。君は?」

火を操った男――道人は、パッと花が咲くような、爽やかで完璧な笑顔を浮かべた。その立ち居振る舞いは品が良く、まるでモデルか良家の御曹司のようだ。

「……何なんだろう。君たちと接触したら、昔から知っていたようなモヤモヤが消えて、不思議と懐かしい気がするんだ。会えて嬉しいよ。僕は犬山道人みちひと

道人はそう言って、俺の手を両手で優しく握りしめた。その誠実そうな眼差しに、俺は思わず「あ、いい人だな」と毒気を抜かれてしまった。

「お主は犬山道節! 八犬士じゃ! 火遁を操ったのがその証拠。共に戦ってはくれまいか?」

荘助の問いに、道人は深く頷いた。

「ああ、もちろんだ。困っている人を放っておくなんて、僕にはできないからね」

「ウォー! そうかそうか!」

「道人君か……。心強いよ」

荘助とレンは、理想的な仲間の登場を心から喜んでいた。

「ところで志貴君。君の珠を見せてくれないか? 僕のはこれだ」

道人が見せた『忠』の珠に合わせ、レンも自分の珠を取り出す。俺は申し訳ない気持ちで、正直に打ち明けた。

「……あ、いや。俺、そんなの持ってないんだ。力も、珠も。ごめんな」

ガッカリされるかと思い、俺は身を縮めた。だが、道人は一瞬驚いた顔をした後、すぐにどこまでも優しい微笑みを浮かべた。そして、俺の肩をそっと抱き寄せるようにして、温かい声をかけてくれた。

「いいんだよ。謝らなくていい。君には君の、何か特別な事情があるんだろう? 力がなくても、珠がなくても、君が僕たちの仲間であることに変わりはないんだから。何も心配しなくていいよ」

「え……? ああ、ありがとう……!」

その言葉は、最高に優しく、誠実さに溢れていた。

「これからは、僕が君を守ってあげるからね。絶対に傷つけさせたりしない」

そう言って微笑む道人。その完璧な笑顔に、俺はすっかり彼を信頼しきっていた。

「さあ行こうか。志貴君、僕のすぐ後ろついておいで。いいね?」

道人は爽やかに笑いながら、荘助たちの先頭に立って歩き出す。

「……あ、道人さん、ちょっと待って!」

俺が呼びかけようとして駆け寄ろうとした、その時だった。

前を歩く道人が、俺の肩に触れていた方の手を、スラックスの横で、何度も、何度も、執拗に拭っているのが見えた。 まるで、汚いものに触れてしまったかのような、その不可解な動作。

「……? どうしたんだろう。手が汚れてたのかな?」

ふと道人がこちらを振り返った。その顔には、先ほどと変わらない「完璧な善人の笑顔」が貼り付いている。

「どうしたんだい? 志貴君」

「あ、いや。なんでもないです! 今行きます!」

俺は少し首を傾げながらも、新しく加わった「最高の兄貴分」の背中を追って、元気よく駆け出した。

こうして、俺たちの旅に三人目の仲間が加わった。最強の味方を得た俺は、これから始まる冒険に、これまでにない期待を感じていた。

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