第7話:魔法実践
本日は2話投稿です。
次の話は21時に登校予定です。
「さて、時間になったため、午後の講習を始めるぞ。」
そう言うと、赤井さんは部屋の中央で手を叩いた。
周囲では動きやすい服に着替えた講習生たちがいくつかのグループに固まり、赤井さんを囲んでいる。
私は一人で少し距離を取りつつ、その様子を眺めていた。
「さて、魔法についての講習と言ったが、君たちが思っているようなものとは少し違う。」
そう言って、赤井さんは全員にその場に座るよう指示する。戸惑う人もいたが、最終的には全員が地面に直接座った。
「じゃあ、まずは魔力を感じてもらう。感じるだけなら、そこまで難しくはない。」
そう言うと、一人ひとりの背中に触れていく。私も背中に触れられた。
その瞬間、何かが流れ込んでくるのを感じた。
どう表現すればいいのか分からないが、あたたかいのにとげとげしく、私の内側と反発しているような感覚だ。
気を抜けば、こちらを傷つけてきそうだった。
30人近い全員に触れ終えると、赤井さんは再び部屋の中央に戻る。
「今、君たちが感じたのが魔力だ。ここからは瞑想して、自分の内側の魔力を感じてもらう。感覚で操作できるようになったやつから、次の段階に進むぞ。」
一部からブーイングが上がる。どうやら、もっと簡単に使えるものだと思っていたらしい。
私が冷めた目でそちらを見ていると、赤井さんが面倒そうに声を張り上げた。
「うるせぇ。これ以外に方法が見つかってねえんだよ。……仕方ねえな。これくらいできるようになるから、真面目にやれ。」
そう言って、脇に置いていた木の棒を両手で上段に構える。
次の瞬間――
どばんっ!!
炸裂音とともに、数歩先で棒を振り下ろしている赤井さんの姿があった。途中の動きは、まったく見えなかった。
「これでいいか? さっさと瞑想に入れ。」
以降、誰も文句を言わなかった。
私は無言で瞑想を始め、約一時間ほどでなんとなく魔力の感覚を掴むことができた。
そして、それと同時に私のアビリティがどれほどの物かを把握することができた。
今の私では制御しきれない、感覚的には莫大としか言いようのない魔力が常に心臓から湧き出し続けているのだ。
しかも、感覚的にはまだ生成量を上げることもできそうだ。
試しに、ちょっと、ほんのちょっとだけ上げようと干渉した瞬間、ギシギシという何かがきしむような音とともに恐怖が全身を包んだ。
これ以上触れちゃいけない。今はまだ、これ以上触ったら心臓が壊れる。
そんな恐怖に襲われた。即座に干渉をやめて大きく息をつく。気が付くと全身に冷や汗をびっしょりとかいていた。
何はともあれ、魔力を操作することはできた。
自分の心臓のことは省いてそれを赤井さんに伝えると、
「かなり筋がいいな」
と言われ、少し休憩を挟んで次の段階に進むことになった。
地下室の奥で、五人ほどが集められる。
「次は身体強化と武器の強化だ。地味だが、最も重要な工程だ。手を抜くな。」
全員に木の棒が配られる。
魔力を血流のように全身へ巡らせることで身体能力が向上するらしい。
これは比較的分かりやすく、私は十五分ほどで形にできた。ただ、集中力の消耗は先ほどより大きい。
三十分ほど休憩を取り、地下へ戻ると、今度は木の棒への魔力付与の練習だ。
訓練を続けていると――
「うおっ!?」
隣から驚いた声が上がり、熱と光が押し寄せてきた。
見ると、少年の木の棒が炎をまとっていた。周囲がざわめき、軽い混乱が起こる。
すぐに赤井さんが駆けつけ、少年を落ち着かせると、炎は自然に消え、木の棒は元に戻った。
「それは属性纏いって言われてるやつだ。今までやってたのは魔纏いな。属性適性が偏ってると、たまに勝手に出る。大した事故じゃねえ。」
「属性検査で炎が高かっただろ?」と赤井さんが聞くと、少年がうなずいた。周囲の緊張もほどけ、訓練は再開された。
直後、
「きゃっ!?」
今度は少年の隣の少女の木の棒が凍り付いていた。
「またか……。」
赤井さんは小さくぼやき、二人を連れてその場を離れていく。
私は意識を切り替え、どうすれば木の棒に魔力を通せるか試行錯誤を始めた。
――纏う、か。
手のひらから棒の表面を覆うように、魔力を循環させる。
すると、強度が増した感覚と同時に、ピキピキという音が響き、棒の表面に透明な結晶が広がった。
最終的には木の棒の表面に樹脂かガラスでコーティングしたような姿になってしまった。
そしてそれは、魔力を流すのをやめた瞬間、ガラスが砕けるような音とともに消えてなくなってしまった。
「……」
直感的にあぁ、これは属性纏いだと思った。ついでに私の心臓由来だとも。
後で赤井さんに見せると、ひとつため息をつきつつ言われた。
「ああ、珍しいな。先天性アビリティ持ちか。……厄介だな。いいか、それはかなり特異な状態だ。間違っても変に扱うなよ。」
そう言われて、どうしろってんだ、という投げやりに思った。
それと、私の特異な心臓はスタートダッシュもまともにさせてくれないらしい、とも。
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