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クリスタル・ウェポンズ ~ 心臓が水晶になった私、助かるために現代ダンジョンへ潜ることにしました~  作者: 彩名氏シエル
第1章 『水晶製魔機構の心臓』編

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第6話:異常の兆候

その後、二時間ほどグリーンスライムを狩りまくった。分かったことは、いくつかある。

火野さんの運動神経と身体強化の才能はかなり高く、スライムを三体同時に薙ぎ払う姿には驚いた。逆に白雪さんは、体力も筋力もあるのに、体の動かし方が壊滅的だった。木刀がすっぽ抜けて、そのまま壁に突っ込んだこともある。

私の結晶纏いは、戦闘では弱くはないが、癖が強い。固さが増して打撃力が上がり、折れにくくもなる。ただ、脆い。スライムを貫通して地面を叩いたときには、表面の結晶が砕けて破片が飛び散った。しばらくすると勝手に消えてしまうのも、使いにくい。

ダンジョンを出た後、三人で近くのバーガーショップに入った。火野さんは生き生きしているのに、白雪さんはぐったりしている。私も、肉体的な疲労よりも精神的な疲労がひどかった。

グリーンスライム自体は弱い。ただ、致命的な攻撃手段がある。顔に張り付くことだ。はがすのは困難で、そのまま呼吸ができずに窒息する。だから、ダンジョンの中では常に気を張って奇襲を警戒していて、精神がすり減ってしまうのだ。

「冒険者になったら、私、魔法の講習受けるわ……」

「それがいいと思います」

ハンバーガーを食べながら、他愛のない話が続く。私はダブルチーズバーガー、火野さんは大きなバーガーセットに加えて普通のハンバーガーを単品で、白雪さんはてりやきバーガーとカフェオレ。いつの間にか、この二人に、思っていた以上の親しみを感じていた。

ポテトだけが残った頃、火野さんが聞いてきた。

「そういえばさ、清水って、冒険者になったらどうするんだ? パーティ」

「どう……とは?」

「パーティの当てはあるのかって聞いてるのよ、こいつは」

白雪さんが翻訳する。相変わらず言葉が足りない。

「特にはないですね。基本はソロで活動するつもりですし」

そう答えると、二人の目がきらりと光った気がした。

「じゃあ」「それなら」

「「一緒にパーティ組まない?」」

息ぴったりだった。意味を理解するのに、数秒かかった。

内容をかみ砕いていくうちに、悪くない話だと思えてきた。基本はパーティ推奨らしいし、パーティでしか受けられない仕事もあるはずだ。この二人なら、性格面の不安も少ない。

「……いいんですか?」

反射的に確認してしまう。即決できないのは、私の悪い癖だ。二人が「もちろん」とうなずいてくれたので、手を差し出した。

「じゃあ、よろしくお願いします。あ、ソロでの活動もするつもりなので、そこは要相談で」

「真面目だなあ」と、二人は苦笑いしていた。

正式にパーティを組んで二週間。私の心臓が透明になってから、およそ一か月が過ぎていた。

昨日の定期診断では、特に異常は見つからなかった。心臓は相変わらず透明で、魔力の生成量は常人よりかなり多い。それ以外の影響は、不気味なほど出ていない。医者はまた首をかしげていた。国の魔法研究所とコンタクトを取っていて、何か月後かには研究協力の依頼が来るかもしれないという。

正直、実験動物扱いはごめんだ。いくらお金が出ると言われても、憂鬱だった。

そして今日は、冒険者講習の最後の試験だ。職員が入口で待機する中、最低ランクの野良ダンジョンに潜り、最奥のコアを回収する。つまり、実戦でダンジョンを攻略しろ、ということだ。保護者の同伴なしでいいのかという疑問は、「人手不足」の一言で粉砕された。ただ、入口には連絡員が付いていて、助けを呼べば三十分以内に来てくれるという。

ここ二週間で、私たちの装備も少し変わっていた。

火野さんの木刀には鉄心が入り、左手にはプラスチック製のラウンドシールドが付いた。白雪さんは、ギルドから借りたクロスボウを持っている。魔法の代わりに、と言われてしまったらしい。腰に木刀は吊るしているが、あまり使いたくはなさそうだった。私は、木刀を腰に吊るし、代わりに、しなりやすい伸縮式の警棒を持ち込んだ。私の結晶纏いは、固い木刀よりも、多少しなる物の方が相性がいいらしい。

出てくるのは、定番のモンスター、ゴブリン。緑色の小柄な小鬼だ。

私たちは順調にダンジョンを進んでいった。私が先の通路を偵察してユーンを見つけ、二人に伝える。白雪さんが、冷気を纏わせたボルトで先制攻撃を放ち、そこへ火野さんが勢いよく突っ込んでダメージを与える。火野さんに敵の意識が集中している間に、私は不意打ちを仕掛けたり、一匹を釣り出して白雪さんに狙わせたりする。試行錯誤を繰り返すうちに、いつの間にか、こういう形にまとまっていた。

私は、心臓に負荷をかけないよう、魔力の出力を常に意識して抑えている。それでも、戦闘は問題なく回っていた。

「この調子なら、大丈夫そうじゃね?」

「油断しないでよね。この後に、初めてのガーディアン戦があるんだから」

ガーディアンとは、ダンジョンの最奥でコアを守っている存在だ。ダンジョン内で最も強いことが多く、ボスモンスターと言った方が分かりやすい。

「油断さえしなければ倒せるって、赤井さんからもお墨付きをもらいましたし。いつも通りいきましょう」

しかし、そこからは、おかしなことが起こった。

ユーンの数が、明らかに少ない。いつもは、奥へ行くほど多くのユーンに遭遇するはずなのに。嫌な予感を覚えたが、わけも分からないまま引き返すわけにもいかない。結局、その後はほとんど戦闘もないまま、私たちは最奥のコアルームにたどり着いてしまった。

そして、そこには――

倒れ伏し、干からびた死体となった、複数のゴブリンと。

「grrrrrrrroooooooo!!!」

明らかに異様な、黒い文様を浮かべた、三回りも大きなゴブリンが、雄叫びを上げている姿だった。


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