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心臓が水晶になった私、助かるために現代ダンジョンを攻略することになりました  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第32話:クリアブラスト

遅れてすみません。

最初に動いたのはレッサーデーモンサモナー……サモナーだった。

手に持っていた杖を私たちに向けて振り下ろす。それが攻撃開始の合図だったのか、周囲のアンデッドたちが一斉にこちらへ襲い掛かってきた。

「澪、凍らせて。」

「『アイシクルレイン』」

私がそう指示をすれば、澪は素早く詠唱し、アンデッドの先頭がこちらにたどり着く前に氷まじりの過冷却水を浴びせかける。

「ウウアアアアアア!?」

「カタカタカタ……。」

その一撃で体の各所が凍り付いたゾンビやスケルトンが動きを止め、しかしさらに後ろからせまるアンデッドたちによって押し倒され、踏みつぶされていく。

そして、その上空を飛行可能なインプとゴーストたちが飛び越えて私たちへ迫る。

「恒一、突っ込んで。上は私がやる。澪は後方から援護お願い。」

「よっしゃ!『バーニアスラッシュ』!!」

「任せて。」

「お願い。『クリア・フラッシュ:スプラッシュバレッド』。」

澪が魔法を放ったあたりでサモナーとその親衛隊がアンデッドを盾に射線を切ってきたことに内心で舌打ちしつつ、指示を重ねる。そして、上空から迫るゴーストとインプに向けて複数に分かれる光弾を放って牽制する。

そして、突っ込んでいった恒一が焔をたなびかせた大剣で、盾を構えたスケルトンを盾ごと斬る。

続けざまに、素早く腰をひねってその奥のゾンビを切り飛ばす。そのまま時に複数体を巻き込むように、あるいは隙間を埋めるように剣を振るい、蹴りを入れ、大剣の腹を盾にしながら突き進んでいく。

それを止めようと、アンデッドたちも必死に迫る。

同属を盾にして、その背中越しに剣を突き出し、倒れたゾンビの影から奇襲を仕掛け、飛べるものが上から間断なく奇襲を重ねる。

しかし、それらは私と澪が許さない。澪の氷魔法が空中の敵に拳大の氷をぶつけ、どんどんと撃ち落としていく。

私の光弾が奇襲を仕掛けようとしてきた敵の動きを鈍らせ、恒一から離れてこちらへ迫ってくる者にはポリカーボネートシールドで攻撃を受け、魔鉄の仕込まれた安全靴で蹴りを食らわせ、時にはシールドの縁で倒れ込んだやつの首を叩き潰す。

そして、こちらを無視して恒一に集中しようとすれば、私が水晶拳銃に光をチャージしてサモナーへの狙撃を狙う。

それは鋭敏に感じ取っているらしく、それを構えた瞬間だけ敵の後方から怒声が飛び、アンデッドたちが慌ててこちらへ向かってくる。

しかし、そうなってしまえば恒一へのマークが甘くなる。冒険者として最前線を闘ってきた人からの指導を受けた恒一の成長は著しく、周囲を囲まれてもなお、圧倒するほどの実力が身についていた。

しかし、さすがに傷が増えているのも事実だ。だから、私も準備を始める。

左手に固定し、肩で支えている盾に魔力を循環させる。それを空間魔法に変換すると、基準点として円盤状に支配領域を増やしていく。

「基準点設定、相対位置固定、形状設定、ディメンションアンカーキャンセル。セッティング、フルコンプリート。」

水晶拳銃をホルスターに入れ、右手で盾の持ち手を握りこむ。右足を一歩引いて腰を落として、大きく踏み込んだ。

「恒一、避けて!……それは全てを拒絶する祈りの結晶。形成せよ『クリア・プロテクション』」

私たち3人並んでも覆えるような、楕円形の黒水晶の盾が形成される。そして、その勢いのままアンデッドの集団へと突撃した。

そして、恒一が慌てて足裏から焔を出しながら飛びのくのと、クリア・プロテクションがアンデッドの集団と衝突するのは同時だった。

私の左半身に大きな衝撃が加わると同時に、盾の向こうから何かがぶつかる音、砕ける音、折れる音、悲鳴が聞こえた。

「ちっ……。」

私は黒水晶を消すと大きく飛びのく。あのままサモナーの所へ突っ込もうと思っていたのに、さすがにそれは無茶だったらしい。

そして、相手にもこのままでは敗北すると気づかせてしまった。

「ーーーー!!$#%&$#$%&$!!!」

かなり薄くなったアンデッドの壁の奥、そこから人間には聞き取ることも発音することもできない奇怪な詠唱が聞こえてきた。それは聞く者に不穏な気持ちを与え、神経を逆なでするような響きを伴って室内に響く。

そして、それは始まった。

サモナーの周囲に滲むように黒いもやが現れると、それが魔法陣にも門にも見える文様を形成した。そして、サモナーが大きく一度杖の柄を地面に叩きつける。

カーンという音が響くと同時に、門から追加のアンデッドがぞろぞろと出てきた。

その数、おおよそ20体。

「おいおい……。」

「嘘でしょう?」

こちらへ戻ってきた恒一と澪が呆然とした声を出す。私も同感だった。

サモナー(召喚士)と呼ばれているのだから想像すべきだった。援軍を召喚できるという、当たり前の能力を。

援軍のアンデッドがこちらへ歩き出す。そして、その先頭にはサモナーのそばに侍っていたレッサーデーモンのうちの1体がいた。

どうやら、本格的にこちらへ攻勢を強めるつもりらしい。

「ーーーー!!$#%&$#%&!!!」

サモナーもさらなる詠唱を始めた。今度は間断なく呼び出し続ける算段だろう。

私は内心の苦々しい気持ちを隠して指示を飛ばす。

「恒一は続けて前で相手をひきつけて。ただ、今後は敵の数も増えるからペース配分を重視。澪は恒一の補助。お願い。」

「ひきつけろったって、体力持たないぞ!?」

恒一が反論してくる。

「晶は?」

澪が不安そうに聞いてくる。

私はちらりと右肩にかけたマジックバッグを見てから答えた。

「単独でサモナーを殺ってくる。」

ーーーーーーーーー

レッサーデーモンサモナーは、詠唱しながらも、戦況を見回す。

己が召喚した奴隷アンデッドは侵入者に攻めかかっていて、信頼を置く側近が大剣を持った男を抑え込んでいる。

後ろの女魔術師は必死に氷と水で奴隷アンデッドを押しとどめているが、数に押されている。その前に陣取った光魔術師は、体を隠すほどの大きな盾をかまえて動かない。

無理もない、とレッサーデーモンサモナーはあざ笑った。先ほどまで一番魔法を使い、敵の動きを止めていたのはあの盾持ちだ。魔力量は他の二人に比べて多いようだが、息切れしているに違いない。

「$#%&$#%&!!!」

詠唱が完了し、左右の召喚門から奴隷アンデッドが出てくる。これでこちらが有利になった。

やはり数は力だ、とレッサーデーモンサモナーは思った。

確かに召喚をするには厖大な魔力が必要だ。しかし、このダンジョン内ならば、ボスであるレッサーデーモンサモナーはそれを気にしなくていい。ダンジョン側の魔力を引き出せば、他の者など比にならないほどの魔力を扱えるのだから。

ダンジョンから魔力を引き出し、回復する。

そして、それを用いて再度奴隷を召喚すべく、詠唱を始める。

「ーーーー!!$#%&$#%&!!!」

アンデッドどもが女魔術師へ迫る。剣士が必死にそちらへ加勢しようとするが、レッサーデーモンサモナーから妨害されて動けずにいる。

盾持ちは……動いていない?まぁいい。どうせもうすぐ死ぬ。

「邪魔すんなあああ!!『ヒートビートドライブ』!!」

ただ、そこで予想外のことが起こった。

剣士のほうが全身から焔を吹き上げ、レッサーデーモンを吹き飛ばしたのだ。

火力を増した大剣によって肩から腰までを一閃し、そのままこちらへ向かって吹き飛ばす

そして、女魔術師の方へ一歩でたどり着き、大剣を横薙ぎに振り払った。

「うおおおおおおお!!『オーバーヒート』ぉぉぉ!!!」

大剣に纏った焔が爆発的に膨れ上がり、それが周囲の奴隷アンデッドを消し飛ばした。

しかし、その代償は大きかったらしい。レッサーデーモンサモナーはそれを見て笑った。

剣士は片膝をつき、全身から煙を吹きあげ、重度の火傷を負っていた。そのうえ、大剣も溶け、原型を止めていない。

あれではもう闘うことはできないだろう。そして、わずかながら奴隷アンデッドが残っている。隣に侍るレッサーデーモンがそいつらに攻撃を指示していた。

自我のない奴隷アンデッドがのろのろと迫っていく。女魔術師も魔力がつきたらしく、剣士に寄り添ってこちらをにらんでいた。

「ーーーー!!」

もうすぐ詠唱も終わり、追加の奴隷アンデッドを呼び出すことができる。そうすれば、こちらの勝利だ。

そう思った瞬間、

「術式設定開始」

後ろからそんな声が聞こえてきた。

「……!?」

驚愕を表す前に、背中に強い衝撃を受けた。そして、うつぶせに倒される。

「使用属性、光・闇・空間。

理論形成、銃身内に未設定領域を構築。」

背中に重荷を感じる。そして、今自分が蹴り飛ばされ、踏みつけられていることにようやく気が付いた。

「水晶弾丸生成。」


背後で何かを操作するカチャカチャという音が響く。


肌を床にこすらせながら横を見れば、いつの間にか己に付き従っていたレッサーデーモンも倒れていた。その首にはナイフが突き刺さり、側頭部には穴が空いていた。

「水晶弾丸に加速力を付与。魔力を過剰注入し、臨界点まで蓄積。」

さらに首をひねり、ようやく己を踏みにじる者が視界に入った。

それは盾を持っていた、最後の侵入者の女だった。

さらに視界の端に、最初とまったく同じ場所に盾が倒れていた。

ダミー。そんな言葉がレッサーデーモンサモナーの頭をよぎる。

その女は冷たい瞳でレッサーデーモンサモナーを見下ろしながら何かをつぶやいている。

「クリアバレル形成。銃身拡張。」

それが先ほど自分が詠唱していたのと同じ、魔法詠唱だとわずかに遅れて理解した。

そして、その手に持っていた筒状の何か……レッサーデーモンは知らないが、人類が開発したソードオフショットガンの先端の穴をこちらへ向けていた。

その先端は、透明な水晶によって延長され、しかしその内側は闇が満ちていて見通すことができない。

「理論設定完了。加速力充填完了。」

その女の下から逃げ出そうと、必死に手足を振り回し、暴れまわる。しかし、踏みつける足の強さが強すぎて一向に抜け出せない。

そして、その女は引き金に指をかけ、レッサーデーモンサモナーの頭に銃口を押し付けた。

「$%&&’’%&’(’&%$%!!」

サモナーの口から死を悟った絶叫が響く。

しかし、晶はそれに眉一つしかめず、躊躇なく引き金を引いた。

「それは全てを否定する怨嗟の結晶。破砕せよ『クリア・ブラスト』。」

銃身内で水晶が炸裂する。

それと同時に加速力が与えられ、銃口へ向けて一気に進んでいく。

「ギアアアアアアアアアアアア!!!???」

銃口から放たれた水晶の弾丸は、無数の欠片となって射出される。

それはレッサーデーモンサモナーの頭蓋を貫通し、その内部をずたずたに破壊し、内側から爆ぜさせた。

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