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心臓が水晶になった私、助かるために現代ダンジョンを攻略することになりました  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第31話:死霊魔の主

最初のレッサーデーモンを罠にかけてから、私たちはどんどんと部屋を攻略していった。

一度だけ、実力確認のため正面からレッサーデーモンと戦ったが、かなりやりにくいという感想だった。

遠距離では焔の球体を飛ばしてきて危うく私が丸焦げになるところだったし、近接戦では恒一と拮抗できるほどの力を出し、ノーマークだった澪をいきなり攻められたときはかなり焦った。

総じて遠近に隙が無く、悪知恵もはたらく、アンデッドとは別の意味で闘いたくない相手だ。

こんなのがいるのだから、ここが人気のないダンジョンなのもうなずける。

そうして今、通路におびき寄せた2体のレッサーデーモンのうちの一体の首を水晶の刃で切り裂いた。もう一体はすでに物言わぬ骸と化し、光の粒子となり始めている。

私はこの二体の悪魔の魔核を回収してマジックバッグに放り込むと、通路の奥の部屋に入っていく。

そこでは恒一と澪が室内にいたアンデッドたちとインプ数体を蹂躙している姿があった。

全身に張り付いた氷で動きを阻害され、恒一の足裏から瞬間的に焔を出す高速移動を繰り返す動きについて行けずに一方的に倒されていく。

そして、最後に鎧を着込んだ若干豪華なスケルトンの頭蓋を恒一の飛び蹴りが粉砕して、この戦いは終わった。

「お疲れ様です。」

「お、そっちもお疲れ。」

私が手を上げながら声をかければ、恒一がそう答えた。澪も無言だが小さくうなずいている。

そして、そろって部屋の奥に顔を向けた。

そこには、大量の骨で精緻かつ禍々しい装飾の施された両開きの扉が鎮座していた。

その扉からは言いようのない圧迫感を感じ、冷気が漂っているかのように全身に鳥肌が立つ。

しかし、立ち止まっている暇はない。いつ、エインズ4たちが来てもおかしくないのだから。

そういえば、休憩中に最後に焔を放ってきた相手があの愛原ルルだったと聞かされてとても驚いた。まさかあのタイプの女がこういうところにまで来るとは思わなかった。いや、ストーカー気質なのは知っていたけれど、まさかここまでとは。

しかも、あの焔の勢い的に、エインズ4と同じカースサインを得ているのだろう。

強化された冒険者二人とかやってられない。急いでここから脱出しよう。

私たちは最後に荷物を整え、うなずきあってから、恒一が先頭に立って扉を開いた。

扉の先は、長椅子のない教会という感じだった。ただ、祭っている物は神聖な神や天使ではなく、邪神や悪魔のような邪悪なものだろうが。

天井のステンドグラスには怪物とそれをあがめる人々の図柄が彫り込まれ、壁に飾られた絵には拷問現場や愛憎劇を表した悪趣味なものが並ぶ。

柱に刻まれている彫刻は清らかさよりも禍々しさが勝り、黒い大理石製の床に血赤のカーペットが嫌らしいコントラストを描き出している。

そして、その広間には多くの怪物がひしめいていた。

ボロボロのローブを着込んだゾンビやインプたちが、哀れな信者のように祭壇へひざまずいている。

壁際では鎧を着込み、剣を吊り下げたスケルトンたちが微動だにせず整列していた。

今まで出会ってきたものよりも、くっきりとしたゴーストが天井をろうそくを両手で掲げて徘徊している。

そして、部屋の最奥。

そこに、まるであがめられる教祖のように、堂々と立っている悪魔がいた。

ゾンビたちが着ている物とは比べ物にならない豪華な黒い生地に赤のローブを着込み、フードを目深に被ったその人型は、しかし、明確に人とは異なると分かる。

フードを突き破って生えてきている角は根本が太く、ねじれ曲がって後ろへ流れていた。垣間見える口元や、ちらちらと見える手首からは青黒い肌が覗く。

右手には太く長い木の杖を握り、それを大きく上に向かってかざしている。その先端には黒く濁った宝石が妖しく輝いていた。

そいつ自体の外見は、他のレッサーデーモンと比較しても体格が小さく、小柄だ。

しかし、それと反比例するようにそいつだけ異様な存在感を放っていた。

そして、そいつの左右には少し格が落ちるが、豪華なローブを着込んだレッサーデーモンが護衛のように侍っている。

教祖のような悪魔……レッサーデーモンサモナーは、配下たちに向けて何かを演説するような身振り手振りをし、大声で何かを叫んでいた。

そして、そいつの手にした杖の先端が私たちを指し示すと、その場にいた怪物たちが一斉にこちらを向き、敵意をぶつけてきた。

私たちもそれぞれの武器を構える。

澪は杖を強く握り、恒一は大剣を肩に担ぐように構える。

私はポリカーボネートシールドを左手に固定し、右手に水晶拳銃を持って照準を重ねる。

ターゲットはレッサーデーモンサモナーただ一体。

互いの間で緊張が高まり、空気がひりつく。

誰かが動いた瞬間、戦いが始まる。そんな言葉にならない理解が教会に満ちる。

私は気付かれないように細く息を吐いて、吸う。

そして、誰かの衣擦れの音が、考えていたよりも大きく響いて。

戦端が開かれた。

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