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心臓が水晶になった私、助かるために現代ダンジョンを攻略することになりました  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第30話:レッサーデーモン

休憩を終え、私たちはダンジョンを奥へ奥へと進んでいた。

いつエインズ4たちと遭遇するか分からないため、休憩は最低限、アンデッドたちも討伐よりも行動不能を優先して動いていた。

あと、あえて最短ルートは通っていない。単純にそこまでの地図がないというのもあるが、最短ルートはエインズ4と遭遇する確率が段違いに高い。要するに選択肢がそこに絞られてしまうということだから、私なら自分がそこにいなくとも、罠の一つ二つは張っておく。

だからあえて、ボス部屋のある方向にだけむかって、それ以外の所はなんとなくで決めているのである。

ただ、ここからはそうも行かないらしい。

今、私がのぞき込んでいる通路の奥には、青黒い皮膚をした、角の生えた人型が一体、アンデッドたちに何かを指示している様子が映っていた。

「……(厄介な)。」

レッサーデーモン。山羊のような角が生えたそいつは、Cランクのユーンの中でもとても強い、とされている存在だ。

私は胸中で舌打ちをすると、コンシールによって気配を消しながら通路の中ほどまで戻っていった。

「というわけで、ここからは中ボスのボスラッシュです。」

「「どういうこと?」」

二人にそう伝えたところ、首を傾げられてしまった。

「まぁ、はい。説明します。

ここからはインプに変わってレッサーデーモンがアンデッドたちを指揮してきます。で、レッサーデーモンのランクは対外的にはCって言われてますけど、実際はB-。つまりボスよりは弱いですけど、それに準ずる強さなわけです。で、ここからはそれなりのレッサーデーモンが出てくるということは……。」

「つまり……俺たちはそんなのが跋扈している所を突っ切らなきゃいけないってことか?」

「エグザクトリー。」

面白くもなさそうにそう言ってやれば、恒一は頭を抱えてしまった。

「どうすんだよ。さすがに無理だと思うんだが……。ボス部屋にたどり着く前に死んじまう。」

澪が心配そうに恒一をのぞき込んでいる。そして顔を上げて私の方を見てきた。

「でも、ここまで来たってことは、何とかなるのよね?」

「まぁ、あとできれば自分で考えてほしいんですが……。」

「今はいいじゃない、今は。」

目をそらされた。思考放棄気味なのは分かっているらしい。

私は肩をすくめてから、簡単に説明する。

「シンプルに個体数が少ないんですよ。少なくとも次の部屋には1体しかいませんでしたし。だから言ったじゃないですか、ボスラッシュって。たぶん多くても2体しか出てこないんじゃないですかね。」

ーーーーーーーーー

レッサーデーモンは、アンデッドに指示をしながら通路を警戒し続けていた。

それが自分に与えられた役割である。

そして今、侵入者が現れた。小柄な、人間の女だ。

「『アイシクルレイン』」

その女、澪は右手に握った白い杖をこちらへ向け、すでに呪文詠唱を終えていた。

レッサーデーモンがまずいと焦った時にはもう遅く、杖から放たれた氷混じりの冷水が部屋全体を水浸しにした。

「ーーー!$#%&$#%&$!!」

混乱するアンデッドたちにレッサーデーモンが指示を飛ばす。しかし、どうにも動きが鈍い。

そして、自分の体にも違和感がある。濡れた場所が凍り付いているのだ。

それが実体のあるアンデッドたちの動きを阻害し、耐久力のない霊体系のゴーストは消滅してしまった。

「xczvbnm,nBnzmc『ーーー』!」

人間には理解できない言語にて詠唱を行ったレッサーデーモンは、周囲一帯に焔の球を生み出すと、それを澪へむかって放つ。

しかし、その女はひらりと通路の奥へ飛び退き、炎の球は何もない壁や床に着弾して焔をまき散らした。

「$#%&$!」

力づくで表面の氷を破壊すると、周囲の使えないアンデッドどもを数体いらだちのままに手に持っていた棒で吹き飛ばす。

その一撃で、体の一部が凍り付いたゾンビは上下に両断され、スケルトンは壁まで吹き飛んだ。

そして、使えない奴隷に代わって、自分の手で侵入者を殺すべく通路へと飛び込んだ。

「xchzxbcbvんcmx!」

そう唱えれば、右の腕が変形し、巨大な鍵づめを備えた凶悪な者へとなる。

さて、これで侵入者のはらわたを引きずり出し、泣き叫ぶ頭を踏みにじってやろう。

そんな嗜虐的な思考に浸っていたレッサーデーモンは、単身通路へ入り込む。そして、

「『クリア・グレネード』」

通路奥からそんなことばが聞こえた瞬間、何かが爆発して、足に激痛を感じた。

「グギャアアアアアアアアアアアアアア!!??」

見れば、透明な石が自分の足に突き刺さり、負傷した足から力が抜けていく。

その場に倒れ込むと、通路奥から足早に男が近づいてくる。そして、そいつは両手で大きな焔剣を握っていた。

「やあああああ!」

そして、それを振り上げ、レッサーデーモンの首へ向けて振り下ろした。

断末魔を上げることもできず、部屋の守護を任されていたレッサーデーモンは討伐された。

その後は簡単だ。凍り付いて動きの鈍ったアンデッドたちを一体ずつ、確実に倒していくだけである。

その部屋から不死者の気配が消滅するのに10分もかからなかった。


一応補足しておくとレッサーデーモンは普通に強いです。

炎魔法が使えて、近接戦闘もできて、人並みの知性を持つ厄介な相手のはずなんです。

ただ今回は澪に足を止められ、晶の罠に誘導され、恒一に首を飛ばされました。

彼らが総じて短気かつ嗜虐的な性格をしていたのも悪い方に転がりましたね。

レッサーデーモン君サイドとしては割と理不尽な負け方です。


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