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心臓が水晶になった私、助かるために現代ダンジョンを攻略することになりました  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第23話:魔の巣窟へと

「さて、いい加減今回の試験について、改めて確認をしましょうか。」

クランマスターはそう言うと、口頭で一つ一つ確認をしていく。

「まず、今回の公開ダンジョンアタックは、我々シーリー・コート(夜の妖精)が実力不相応の冒険者を『十分な安全保障がなされているなら、管理するダンジョンに限り、入れてもよい』という法律を悪用して、ダンジョンに無理やり入れているのではないか、という疑念を解消するために行われるもの。それで間違いはありませんね?」

「もちろん、公開で同じランクのダンジョンで1時間ほど活動できれば証拠としては十分だと思いますな。」

真剣な表情でクランマスターが尋ねれば、スペースプラントのマスターはどこか軽薄な調子で続ける。

「もし、1時間も経たずに一人でも大けがを負う、あるいはダンジョンから逃げ出してくれば問題は我々だけに留まらず、大きな問題となるやもしれません。」

それは暗に「実力不足を示せば多くのところに問題がかかるのだから、あきらめて監査を受けろ」ということだ。少なくとも私にはそう聞こえた。

それはクランマスターも同じらしく、不愉快そうに眉を動かしたが、それについて発言することはなかった。

「それは分かっている。ただ、我々からすれば無用の心配だ。彼女たちは十分な実力を持っている、少なくとも私はそう思っている。」

「そうですか、それが事実であることを祈っておりますよ。私も、才能のある若者の死なぞ見たくないのでね。」

厭味ったらしくそう言って、今度はスペースプラント側の説明が入る。それは今回配信で使う機材についてだった。

「今回利用するのは、我々と提携している冒険者用カメラの販売業者が提供していただいた、新作の自立ドローンです。これは冒険者を後方から撮影し、攻撃を自動判別して避けるシステムを組み込んだ最新のものです。ついさっき開封されたばかりのものなので、劣化等の問題はないと考えていただいて結構です。」

「なるほど、素晴らしいものですね。ちなみに初期不良で十全に動かなかった場合、あるいは戦闘の流れ弾などで破損した場合の判定はどうするのか、教えていただけると助かるのですが。」

「その時は、まぁ、破損したドローンを回収してもらって撤退していただいて結構です。まぁそんなことはありえませんが。」

「……。」

「……。」

空気が重い。兎に角互いが互いのマウント合戦と足の引っ張り合いを続けている状態に、こちら側の全員が辟易としていた。

私自身、正直遅々としか進まない説明にいらだちが募っていたが、それを表に出したところで、たかがDランクの冒険者でしかないのだからどうしようもない。先ほどのは不意を突いたからうまくいったのであって、基本この場を支配しているのはスクリーンの向こうの二人なのだ。

ただ、聞くべきことは聞き終えた。そう判断して立ち上がると、近くの長机に置いてあったドローンとそのマニュアルを確認していく。

まだ言い争いは続いていたが、説明は終わったと判断したらしい他の人々もそれぞれが動き始める。

テント内の設備を見て回る人、パソコンで配信の準備を整えている人、どこかしらに電話をしている人。

その動きは様々だが、別段それを気にすることはない。

私は一通り使い方と注意事項を読み終えると、ドローンを片手に緊張で固まっている二人に近づいた。

「ほら、そろそろ時間だからここを出ますよ。」

「お、おう、分かった。」

そう言って恒一が立ち上がると、澪も不安そうに恒一の袖を引っ張りながら立ち上がる。

私は長机にドローンを置いて、武装を整えるために近くの更衣室へ向かった。

そうして、一通りの準備が終わり、私たちはダンジョン『死霊魔の飼育場』の入り口前に立っていた。

私は最近購入した軍服風の迷彩服を着込み、腰のベルトにナイフや警棒、水晶拳銃の入ったホルスターを吊り下げ、肩にナップザックの形をしたマジックバッグを固定した姿。

恒一は金属と皮をうまく組み合わせ、軽量化した黒の革鎧を着込み、背中には前から使っている黒い大剣を吊り下げている。

澪は割と姿が変わっていた。前までは私と似たような、動きやすさ重視の防具だったのが、今は純白のローブのようなものになっていた。聞いたところによると、昨日担当してくれた教官の人のお下がりらしい。

ただ、お下がりというにはかなり強い魔力を感じる一品ではあったが。それを含めていい装備なのは違いない。

それから手には前から使っている雪の結晶が刻印された杖を握り、念のためのアイテムを詰め込んだリュックサックを背負っている。

そして、私たちの背後では一台のドローンが滞空し、私たちを見張るように撮影していた。

すでに視聴者たちへの説明は終わっている。あとは、私たちがダンジョンで1時間、生き残るだけだ。

しかし、正直、そこまで難しいこととは私は思っていない。

なにせ、訓練前でもCランクダンジョンには十分通用していたのだ。今さら、こんなところで立ち止まる理由がない。

私の目標はBランクになること。そして、どこかにある『賢者の石板』を見つけ出して、この私の心臓――『水晶製魔機構の心臓』の対処方法を探すこと。

だから、こんなバカみたいな政治劇で行われるダンジョン攻略なんかで立ち止まるのは非効率だ。

「さて、行きます。」

「おう。」「うん。」

一声かけ合って、私たちはダンジョン内部へと突入した。

ーーーーーーーーー

「公開」 新人冒険者がCランクダンジョンに挑むらしい 「攻略」

001:名無しの冒険者

現在、XX地域で活動する冒険者クラン『シーリー・コート(夜の妖精)』がクラン『スペースプラント』から実力不足の冒険者をダンジョンに入れたのではないかという疑惑が起こっています。

このスレは、その疑念を晴らすためにくだんの冒険者がCランクダンジョンを攻略する配信を見届けるスレです。

公式情報はこちら(URL)

有志がまとめてくれた概要はこちら(URL)

002:名無しの冒険者

新鮮なスレだ。乗り込め―!

003:名無しの冒険者

え?シーリー・コートがそんな疑惑かけられてんの?

004:名無しの冒険者

005:名無しの冒険者

らしい。だから結構大騒ぎになってる。主に冒険者ギルドとアパレル業界が。

006:名無しの冒険者

SNSでもなんか炎上してたな。

007:名無しの冒険者

あ、配信始まった。

008:名無しの冒険者

なんやこのイケメン。

009:名無しの冒険者

知らんのか?シーリー・コートのクランマスターの綾小路隼人だ。

010:名無しの冒険者

サンクス。にしてもなんかややこしいことになってるな。

011:名無しの冒険者

ほうほう、今回巻き込まれたのはDランクの冒険者3人で、スカウトの試験中だったと。

012:名無しの冒険者

ん?確かシーリー・コートってCランク以上じゃないと受け付けないんじゃなかったか?昔調べた。

013:名無しの冒険者

あ、それも説明されてる。ほうほう、この前のスタンピードの時、偶然実力が高そうな冒険者がいたからだと。

うわっ、なんだそのラノベ的展開。羨ましい。

014:名無しの冒険者

で、クラマス的には実力は十分と判断して試験をさせてたと。ただ、そこに横やりが入った感じか。

015:名無しの冒険者

横やりって……。いやまあ、そう言われればそうなんだが。

016:名無しの冒険者

おっ、今回配信する冒険者の紹介来るぞ。

017:名無しの冒険者

ほうほう、ほんとに未成年のDランクっぽい。

にしてもこいつら美男美女ばっかじゃね?

018:名無しの冒険者

俺は真ん中の背の高い女の子好き。見下されながら罵倒してほしい。

019:名無しの冒険者

俺的には小柄な子の方がいい。お兄ちゃんって言われたい。

020:名無しの冒険者

警察の方ー!警察の方はいらっしゃいませんかー!!変態が二人もわいています!!

021:名無しの冒険者

>>019>>020

出荷よー

022:名無しの冒険者

そんなー

023:名無しの冒険者

にしても内容が鬼畜過ぎる。これ普通のなりたてCランク冒険者でも辛いぞ。

024:名無しの冒険者

KWSK

025:名無しの冒険者

\>>023

KWSK

026:名無しの冒険者

詳しくったって……普通のことだろ。

大体冒険者ってのはいろんなところでダンジョン潰すか、管理ダンジョンでドロップ品集めて収入を得る。

ただ、それでも事前情報は与えられるし、それに沿って準備もする。

で、今回話を聞いてると、事前準備なしで実力を見せろって言うわけだ。

こりゃひどい。

027:名無しの冒険者

うわー。

028:名無しの冒険者

しかも、よりによって悪魔系かよ。

029:名無しの冒険者

すまん、ダンジョンにわかなんだが、悪魔がいるダンジョンってなんかやばいんか?

いや、悪魔が普通に強いことは知ってるんだけど、あくまでCランクだろ?

030:名無しの冒険者

分かりやすく言えば、あいつらは悪知恵が働く上に鬼畜の類なのよ。

だから、センスだけでCランクになった冒険者が突っ込んで大けがして返ってくるのがある意味伝統ね。

さて、あの子はどこまで行けるかしらね。

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