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クリスタル・ウェポンズ~心臓が結晶化した私は助かるために現代ダンジョンに潜る~  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第17話:[The Beginning of]

遅れてしまいすみません。

私は火野さんとの話し合いを終えると、一人でホテルに向かった。彼は家からここまで毎日通っているらしい。

途中のコンビニでスポーツドリンクと適当な総菜パンを明日の朝食代わりに買って、ビジネスホテルに入った。

カードキーで部屋の扉を開けると、適当に荷物を置いてベッドに倒れ込む。

今日も疲れた。もう寝てしまいたいが、一応シャワー浴びて、寝間着に着替えないと。

しかし、どうにも動く気に慣れずに適当にスマホをいじる。よく見るチャンネルに新しい動画がないか見ているが、どうにも見る気が起きずに数分プレビュー画面を見ては閉じてを繰り返す。

そういえばと思い、検索欄に「ルル ダンジョン 動画」と打ち込んでみる。すると、確かに動画がそれなりに出てきた。

そこに映っていたのは、確かに愛原ルルだった。あの染めたどぎついピンク色の髪の毛、どこか媚びた表情、体格のわりに出た胸。間違いない。

とりあえずもっとも再生回数の多い動画を倍速で見てみる。

……。

正直、全くと言っていいほど面白くなかった。

いや、これは正しくはないか。私にとっては全く面白くない動画だった。

確かに、動画編集の技術も高いし、アピールポイントもしっかりしている。一定の視聴者が付くのも納得の内容ではあった。

ただ、極端に男性受けを狙った内容である点を覗けば。見ていて面白さや凄みの前に気持ち悪さが来るほどに極端な内容だった。

内容的には、最近人気のダンジョン攻略配信を切り抜いた物だった。

ただ、こう、MMORPGの姫プレイを見せられているような、ちょっとしたことでもルルの取り巻きの男たちがワッショイして、ルルがその大きめの胸を協調するように張るというシーンが多い。

他にも、こう、ちょっと配信ポリシーギリギリの発言とか、そういうのをにおわせる言動が嫌にめだつ、同性として眉を顰めざるを得ない感じのものだった。

嫌、別に私はそういうのに偏見があるわけではない。そこに一定の受容があるのも把握しているし、むしろシラフでそういうのをやっている人にはある種の敬意もある。個人的にそういうのが合わないというだけで。

ダンジョンは異空間だが、電波が通じないわけではない。ちょっと大きめの通信機器を持ち込めば十分に配信が可能だ。どうやら、これはそれを専任の編集者が編集した動画らしい。

……男性受けだけを考えたような、こんな動画を編集させられたこの人に私は同情を禁じ得なかった。

あと彼女の言動を聞いている限り、完全に距離感がバグっているタイプだと分かった。平気で取り巻きの男とボディタッチするし、演技には見えない感じに身を摺り寄せていたり、カメラに向かってニヤニヤしながら「最近気になってる人がいるんだよねぇ。」と発言していた。

あと、たぶんこれは火野さんのことではない。この動画が投稿されたのが半年ほど前なので、全く別の人だろう。

とうとう動画を見る気もなくして、まくらのとなりに電源を落としたスマホを放り投げて個室シャワーへ向かう。

あの動画の感想としては「くだらない」の一言につきた。

改めて、このお女には関わらないのが一番だと、心のそこからそう思った。

ーーーーーーーーー

さて、火野さんとの情報交換から2日、訓練開始から5日。

今日も今日とて、私は訓練の日々に明け暮れていた。

「さすがにこれぐらいは防げるようになったかしら。」

「おかげさまで……。」

周囲一帯から光の弾丸が降り注ぐ。背景が暗闇のせいでそれは流星群が迫ってきているようにも見えた。

私はそれらを空間把握の応用で反らし、避け、打ち払っていく。

しかし、間断なく光の弾丸を打ち続ける彩芽は余裕の表情を崩すことはない。周囲が星夜のようになっている中、悠然とたつ美しい彼女は夜の妖精の名にふさわしい気配をまとっている。

これこそが、綾小路彩芽が「夜の妖精」と呼ばれる所以だった。

この技の原理は言葉にすれば簡単だ。空間魔法によって周囲一帯を把握。そして、支配下にある空間上の魔力と光を圧縮、射出することで立体的に攻撃をできるのだ。

それに加えて、光と魔力は空間に満ち溢れている。たとえ一定の場所で消費されても即座に充填されてしまうのだから始末に負えない。

私はなんとか自分の支配領域を維持しながら、そこに入ってきた魔力の塊を感知することでどうにか拮抗に持ち込んでいた。

しかし、そろそろ集中力も限界に近づいてきている。最初は単調だった攻撃も今は緩急がつき、誘導やフェイントまで絡めてきている。

ただ、私は私で、決してこの5日間、さぼっていたということはない。彼女に師事し、アビリティについても相談して、新しい活用法を見つけることができた。

私は左手の中に生成したとあるものを握りこみ、ゆっくりと、慎重に魔力を込めていく。ついでに詠唱を加え、それの性質を偏らせていく。

「これは爆弾、こめられ死力よ、我が言葉の後、爆ぜよ。」

そうして、即席の魔道具を作製し、弾丸の隙間にそれ……私の魔力から生成した水晶球を投げつける。

そして、一方から集中して放たれた8発の光の弾丸と接触する直前に、

「『クリア・グレネード』」

炸裂した水晶球とぶつかって相殺された。

それをみてサブマスターが笑みを深める。

「上出来ね。今日はここまでにしておきましょう。」

そう言って、手を大きく横に振る。そうすれば、周囲の闇が取り払われ、穴だらけになった床と壁があらわになる。

私はその場にへたり込むと、肩で大きく息をついた。

先ほどの水晶球、あれはさっきも言ったように私の魔力から生成した物だ。私のような特殊なアビリティ持ちの中には、魔力から他の属性魔術と同じように、特異なものを生成できる者がいるらしい。

本来の使い方はともかく、鉄を生み出せるアビリティ持ちもいるのだとか。

それを聞いてから試行錯誤したところ、割とあっさり生み出せてしまったのだ。とても透明度の高い、水晶の塊を。

ただ、これは込めた魔力がつきると消滅するという不可思議な性質を示した。そのため、さっきの爆弾のような、使い捨ての道具にしか使えないということである。

「その技、かなり便利ね。今後も使えそうだし。」

「そうではあるんですけど……。もうちょっと貫通系の、兎に角しとめる技が欲しいです。」

「と言ってもねぇ。魔力を込めた爆弾で威力不足ってなると、あとは弾丸にして飛ばすとかしかないんじゃないかしら。」

「うーん、弾丸ですか、でもどうやってあのレベルまで加速させるか……。」

二人そろって頭を悩ませている中、広い訓練場の扉を開いて、ここの職員が入ってきた。

一瞬、部屋の惨状に顔をひきつらせたが、すぐに平常に戻ると、こちらへ駈け寄ってくる。

「あの、訓練中申し訳ございません。サブマスター、あの、その、ちょっとトラブルが……。」

職員が持ってきた話を聞いて、私とサブマスターは顔を見合わせると、大きなため息をついてその場へ向かうことにした。

そして、向かった先では、

「もー、何でうなずいてくれないのよぉ。」

「あー、もう、離れろって一点だろ!」

愛原ルルに絡まれている火野の姿があった。

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