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クリスタル・ウェポンズ~心臓が結晶化した私は助かるために現代ダンジョンに潜る~  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第8話:Cランクダンジョン「松トレントの森」

なんだかんだあったクラン「シーリー・コート(夜の妖精)」への訪問から6日。私たちはさっそく指定されたダンジョンに向かうことにした。

USBメモリ?向こうにいつ返せばいいか問い合わせたら「当分そっちで持ってて」と言われてしまい、近くのホームセンターで買った金庫の中に3重ロックで保管しています。最近パソコン画面がトラウマになりそうです。

それはともかく、今回私たちが来たのはCランクのダンジョン「松トレントの森」。名前の通り松のトレント(木の怪物)が主な敵になるらしい。

基本的に出現したダンジョンは、すぐに消されるので名前は付けられないのだが、こういう監理ダンジョンには多くの人が通うということで便宜的に名前を付けられていることが多いらしい。

「そう言う割には人いないんだが。」

そんな説明をしていると火野さんが周囲を見回しながらそう言った。

確かに周囲に人の姿は見えない。ダンジョンの入り口とは別方向からはひとの活動音はするが、冒険者立ち入り禁止の張り紙がされていた。

「ここって取れるものが優秀なんですが、不人気なんですよね。」

「どうしてよ?高額のドロップアイテムがあって、入り口周辺なら私たちみたいなDランクでも対応できるんでしょ?むしろ人でいっぱいになると思うのだけど。」

澪がそう言い、火野さんもうなずく。私は頭をかきながら言いにくいことを言った。

「ドロップアイテムが大きいんですよ。ここ。そもそも二人とも、ここで取れるものは木ですよ?」

「そりゃ、トレントだから木が取れるだろ。いまいち意味が分からないんだが。」

火野さんはさらに首を傾げたが、澪はなんとなく察したのか信じられないという表情を浮かべている。

「あ、あの、晶?もしかしてだけど、木って。」

「ご想像の通り、木の丸太丸々一本ドロップするそうですよ。直径50㎝、長さ80㎝が下限で、倒したトレントが大きければ大きいほど、強ければ強いほど大きくなるそうで。奥へ行ってボスを倒すためには全部のドロップを棄てる必要があるらしいですね。」

そう説明すれば、二人はポカンとした表情で硬直してしまった。たぶん木と言っても具体的にイメージできていなかったのだろう。

今まで行っていたダンジョンが洞窟型かつドロップもリュックに入れられるものだけだったから想像もしていなかったに違いない。

私も調べた時はうまく理解できなかったから気持ちはわかる。

「じゃ、じゃあどうするんだよ、今回。確かここで特定素材30個ぐらい集めるんだろ?30本の丸太とかどうやって運ぶんだ?」

慌てふためいて火野がそうまくしたててくる。白雪さんもこっちを不審げに見やってきた。私は落ち着き払った表情のまま続ける。

「大丈夫です。というか二人ともちゃんと資料読みました?まさか収入の所ばっかり見てたり、値引きされる衣服の場所ばかり見てたりしていないですよね?」

私が揺さぶりのために笑顔でそう言えば、二人は目をそらした。どうやらドンピシャらしい。

深々とため息をついて今回の目的を話す。

「そもそもこのダンジョンで取れるのは松のトレントの素材ばっかじゃないですよ。むしろそれ以外を主に探す感じです。」

それを聞いて二人はあからさまにホッとした表情を浮かべた。私は若干の悪戯心を持ちつつ歩き始める。

「さて、ここからはダンジョンに入りながら話しますので。生きましょう。」

そうして、私たちはダンジョンへ入っていく。そしてその20分後。

「だましたなぁ、清水ーー!?」

「人聞きの悪いことを言わないでください。あと後ろ後ろ。」

「ちょ!?うおおおおーーーー!!」

「キャーーー!?」

二人は阿鼻叫喚の地獄を見ていた。

周囲から絶えず植物の弦や葉の着いた枝が襲い掛かってくる。足元からも伸びてきた刃のように鋭い草が切りかかってきた。

その草を踏みつけて根源部分をナイフで切断しながら質問する。

「何が嘘だましたんですか?私はちゃんと松のトレントには手を出さなくていいって言ったじゃないですか。」

「そうね!確かに倒してはいないわね!!でも襲い掛かられてるじゃない!?『アイシクル・バースト』!」

「しかも採取する植物も襲い掛かってくるとか……っあぶねぇ。」

火野さんが上から打ち下ろされた枝を大剣で受け止めながら、足元の草を踏みつぶしてしとめていく。ただ、二の腕と足には多数の切り傷がついていた。

周囲から殺到する大半の葉は澪が兎に角氷をばらまいて妨害している。ただ澪は澪で余裕はなさそうで途切れることなく詠唱を続けている。

「今回の狙いはヘンプグラスという、ぶっちゃけて言えば麻のユーンです。こいつからは魔力を含んだ質のいい麻の繊維がドロップするんですよ。」

「先に言いなさい!」

「ちゃんと事前に書類読んでって行ってたはずなんですがね。……シッ。」

左手のバックラーで草をそらしながらナイフをつきこむ。これで10体目。私のノルマはあと5体と言ったところだ。ただ、やっぱり攻撃力と防御力不足を実感してしまう。

私が1体倒している間に火野さんは2・3体倒していくし、驚いている割に傷の深さは私の方が深い。

「いや、そう言われちゃうと何も言えないんだが。さすがに分かってたなら言って欲しかった。」

「次からは気を付けてくださいね。……ある程度集まりましたし、一旦下がって休憩しましょう。」

そう言って私たちは大量の松トレントとヘンプグラスの群生する森から離れて何もない草原で休憩に入った。

ただ、その時火野さんが遠くを見ながら呆然とつぶやいた。

「なぁ、あれ何だと思う?」

そう言って指さしたのは森の奥、ほぼ中心と言っていい場所にそびえたっている巨大な塔のようなものだった。

「あぁ、あれはですね。ここのボスの『長寿トレント・松』ですよ。何でもとんでもない長さと太さで普通に折るにもめっちゃ時間がかかるうえに、爆弾松ぼっくりを間断なく落としてくるとかで実質Bランクでも最強の一体だそうです。」

「「ほへー。」」

3人そろって超巨大な松の木を見上げてから私たちは採集(討伐)を再開した。

そのあと、さんざん森の入り口で暴れまわり、調べたら思ってたよりも麻……魔麻が集まっていたので、二人が疲れていることもあって今日は帰ることになった。

ダンジョンを管理するための建物の売却所でヘンプグラスの葉を数えてもらい、報酬を銀行口座へ送ってもらう。

そして、帰り道の駅近くで火野に声をかける人がいた。

「あ、火野くん。この前の話考えてくれたぁ?」

それはいつか見た、ピンクに髪を染めたかわいらしい少女だった。

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