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クリスタル・ウェポンズ~心臓が結晶化した私は助かるために現代ダンジョンに潜る~  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第7話:光 + 闇 = 空

家に帰って休憩を済ませて、両親に今日会ったことをしゃべりながら夕食を食べる。

まぁ、当たり障りのない事しか話してはいない。いきなり娘が大企業の幹部に会ったと言われても困るだろう。主に父親の胃が。

それはともかく。もろもろ済ませて部屋に戻る。いつもならここからは課題をするか、ダンジョンについて調べるか、ラノベを読むかという感じなのだが、今日はさっさとやってしまいたいことがあった。

そう、昼間に渡されたUSBメモリである。あまり見たくもないのだが、いつまでも抱えて居たくもない。精神衛生的に思い切ってさっさと読んでしまおうと思ったのだ。

そうして真っ黒な、高級感あふれるUSBメモリを私の中古のパソコンに差し込み、フォルダを開く。

「……?」

そこには一つのフォルダとテキストファイルがトップに表示されていた。

フォルダの名前も気になるのだが、それ以上にテキストファイルのタイトルが目に留まった。

『星崎翼についての質問があるので、可及的速やかに読んでください』

……。

これを読んで私の胸中に広がったのは「なぜ、先輩が?」という疑問より「なにやらかしたあの人。」という、驚愕とも、疑念とも、絶望ともつかない疲労感のある納得だった。

いや、うん。何というか。ここで出てくることに妙な納得感を感じているというか。でも行方不明のはずのあの人がなんでここで出てくるのか疑問を感じているというか、生きてたんだ、いや死んでるとは思ってはいなかったけれど。

……ふー。一通り感情を出し切って落ち着いた。

さて、考えていても仕方がないし、さっさと開いてしまおう。

そう思って開いたテキストファイルだが、もし彼女のことを知っているなら以下に関係性を簡単に記入してほしい。別に何かを疑っているわけではないから安心してほしい。という感じのことが書かれていた。

私は簡単に、中学時代の先輩後輩の関係であったこと。同じ生徒会に所属していたこと。先輩が高校に上がった時に行方不明になったのは知っているがそれ以降の消息は知らないこと。そんなことをつらつらと記述してセーブする。

これに何の意味があるのか、翼先輩は何をやらかしたのか疑問はつきないが、今考えてもしょうがない。これを返した時についでに聞こう。

それはともかく、今度はフォルダの方だ。

こっちには「極秘ファイル:空間干渉系の魔法基礎理論」と書かれていた。

……。

クウカン?カンショウ?キソリロン?

ちょっと待ってほしい。いや、うん。なんとなく字面でどんなことができるかは分かる。

テレポート(空間転移)とかアイテムボックス(四次元ポケット)とかそんな感じのことを魔法でできるようにするための理論の中核なんだろう。

……そんなものをただの高校生に渡すなと言いたい。もう渡された後だからあれこれ言うこともできないが。

だって、これさえあれば様々なことができる。アイテムボックスなんていう物流に革命を起こす道具の可能性だけでも十分な爆弾だ。

しかし、それ以上に、テレポート(空間転移)ができてしまうと既存の警備盲が完全に意味をなくしかねない。対策がなければピンポイントでターゲットのいる室内に爆弾を転移させるだけで要人を殺し放題になってしまう。

そんなものがなぜ私なんかに来たのだろうか。本当にやめてほしい。

しかし、読み進めていくうちになぜ私にこれが渡されたか分かってきた。

前提としてこの空間に干渉する魔法……空間魔法は高い光と闇の属性を扱えないとそもそも発動することができない。

そして、その高いというのがネックで、属性検査で光と闇のプライマルカラーぐらいは欲しいらしい。

これは別紙に書かれていたのだが、プライマルカラーの中で光と闇はそれ単体でも結構希少らしい。これは国の一定以上の規模のクランに渡されるデータに入っていた統計によるものらしいのでまぁ信用してもいいだろう。

それで、私は別に属性検査の結果について隠していない。調べればすぐに分かることだろう。

だから、この理論の検証をしてほしいとのことだった。1000字のレポートで5000円。私の心臓を調べるためには300億円必要なのでお金はいくらあっても足りないから、これはいい報酬になりそうだ。

あと、ものすごく気になったのはこの理論の提唱者の最初に「星崎翼」という名前があったのだが。

本当にあの人は何をやっているのだろうか。いや、中学時代から規格外ではあったのだけれど。

この空間魔法の理論の中には様々に私にとって興味深く、今後に大いに生かせそうなものが多くあった。だから、しっかり検証していこう。

私は、一通りの資料を読み終えると、座ったまま背もたれに体重を預ける。そのまま手を前にかざして手のひらを見ながら小さくつぶやく。

「光よ。球体として出てこい『ライト』、闇よ、球体として出てこい『ダーク』」

そう言って魔力を操作すると直径5㎝程度の光と闇の球が出てくる。私はそれをゆっくり、ゆっくり近づけていく。

そして、接触するとそれらが中和されるように混ざりあっていく。

数秒後には外見上は何もない状態にまで進行した。

しかし、私としてはそんな生易しい状況とは思えなかった。

というか、必死にその状態を維持していた。

空間魔法の理論によると、光と闇が混ざりあった魔力は外見上は何もないように見える。しかし、そこには空間属性とでも呼ぶべきエネルギーの塊が形成されている。

しかし、それは言ってしまえば液体と液体を混ぜ合わせて何かしらの気体を発生させているようなものらしい。だから、周囲の空気に溶けないようにそれを維持する必要があるそうだ。

しかし、考えてみてほしい。右手と左手にそれぞれ液体を保持し、それを合わせたらその液体は気体となる。そしてその手でその気体が漏れないように密閉しなければならない。

そんなのが一朝一夕でできるはずもなく、私はバランスを崩してその空間属性の魔力を拡散させてしまった。

失敗である。そして、その一回の試行錯誤で私の集中力は相当削り取られてしまった。

肩で息をしながらフラフラとした足取りでベッドに向かい、倒れこむように横になる。

気が付くと深夜12時を回ってそろそろ2時になろうかという時間だった。私はそこまで集中していたらしい。

布団の中に入ることも忘れて、私は気絶するように眠りについたのだった。

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