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クリスタル・ウェポンズ~心臓が結晶化した私は助かるために現代ダンジョンに潜る~  作者: 彩名氏シエル
第2章「シーリー・コート」編

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第1話:Dランク昇格とちょっとした不和

本日は2話投稿しています。これは2話目です。

お気を付けください。

私 清水晶、火野さん、白雪さんのパーティは現在、Eランクダンジョンの中でも特に強いとされるユーンが出てくる野良ダンジョンに来ていた。

目的はコアの破壊である。そのためにもユーン(アンナチュラル エネミー)を倒していかなければならないのだが、

「ぎぎー!」

「ギィヤァー!」

「しゃおらぁーー!!」

「「グギャー!?」」

火野さんが一人で敵を圧倒していて手を出す隙間がない。

相手はゴブリンウォーリアー。通常のゴブリンと違い、多少手入れされた鉄製の武器を扱ってくる面倒な敵である。武器を振るう技術こそ低いが、長物を持っているというだけでなりたて冒険者には難敵のはずなのだが。

「どんどん濃いやー!」

「「「ぎぃあぁーーー!!」」」

私たちにとっては雑魚になり果ててしまっている。

理由は簡単だ。この前のスタンピードでレベルが上がったからである。

レベル。それはゲーム、特にRPGにおいてよく用いられるシステムである。

敵を倒すことで経験値をため、レベルが上がることで目に見えて能力値が上がる。だから敵がどんどん強くなっていっても闘うことのできるようになる、やりごたえを与える仕組みだ。

では、ゲームのようなダンジョンが生まれた現代において、そのレベルが上がるというのは何を指すか。

それは魔力量の向上に当たるというのが主流の考えだ。

ユーンを倒すというのは変わらない。その魔力、あるいは魂と呼ばれるものを吸収することで魔力の総量が上がる。これが現代で言われるレベルアップであり、魔力の総量がレベルの指標だ。

そんなことがあるのか?というのがこれを聞いた時の私の心境だったが、実際にレベルが上がっている今、これが正しいものだと強く実感していた。

正直、魔力の総量はスタンピード前と後でかなり違っている。倍とまではいわないが、体感1.25から1.5倍ぐらいになった。

それはつまり、スタンピードで闘った私たちの魔力量は平均的なEランク冒険者を軽く超えているということで。

その結果が今目の前で行われている蹂躙である。

「よっしゃー!!」

「危ないわよ、バカ!『クリエイトアイス・バレット』!」

「うおっっと、あぶねぇ。助かったぜ澪。」

「もう、気をつけなさいよ。」

「増援なし。一旦ここで休憩しましょう。」

私たちはドロップアイテムである壊れかけの武器や金属片、布や魔石を集めてリュックに入れると、岩陰に座り込んだ。

「あんあ、さっきから突っ込みすぎ。もうちょっと後ろ気にしなさいよ。」

「悪い悪い。」

「もう。」

イチャイチャしている二人を無視して私はここまでのマップと事前情報を見比べていた。

「二人とも、そろそろボス部屋かもしれないです。」

「え、そんなに進んでたのか。」

「分かったわ。もうちょっと長めに休憩してから行きましょう。ほら、水とカロリー○イト。」

「おう、サンキュー。」

「ありがとうございます。」

そうしてそれらを食べて一息ついてから、私たちはボス部屋があると思わしき方向へ進んでいった。

ーーーーーーーーー

「ギヒャハハハハハハハハ!!」

ボス部屋の扉を開けると、そこには黒ずんだ鉄色の皮膚を持った大きなゴブリンがこっちを見て涎を垂らしていた。

アイアンゴブリン。鉄のような皮膚というか、軟化した鉄としか言いようのない皮膚を持ったゴブリンである。

知能は高くないが、兎に角頑丈で力が強い。だからボスとしてはEランクの中でももっとも厄介な一体と言われている。

だから、私たちは今回も油断せずに行くことにしていた。

「私が先制します。『クリア・フラッシュ』」

私が水晶拳銃から光の弾丸を連射しつつ、部屋の左奥へと駆け込むと、アイアンゴブリンはそれを無視して突貫してくる。

私の狙撃精度が悪いのもあるが、当たっても致命傷にならないと一発で判断されたらしい。

しかし、それでも打ち込み続け、あと一歩でアイアンゴブリンの手が届くという間合いで、私は振り返ってアイアンゴブリンの固い腹を後ろ蹴りにした。

「ぐふっ!?」

いきなり加えられた衝撃にアイアンゴブリンは数歩後ろによろける。私も伝わってきた想定以上の衝撃に顔を顰めながら勢いに逆らわずに大きく飛び退いた。

そこに、白雪さんの詠唱が響く。

「氷よ。槍となりて打ち抜け『クリエイトアイス・ジャベリン』」

2本の氷で出来た投げやりがアイアンゴブリンを襲う。顔を狙ったその攻撃は交差させた腕で防がれてしまったが、両腕には深々とした刺し傷が残されていた。

「グアアアアア!!」

怒りの咆哮を上げ、杖をかまえる白雪さんをにらむアイアンゴブリン。しかし、彼は見落としている。私たちは3人で入ってきた。

「っしゃ!」

鋭い呼気とともに、火野さんがロングソードに炎を纏わせて、アイアンゴブリンの視覚から突貫した。私たちの中でアイアンゴブリンに致命打を与えられるのは火野さんだけだ。

正確には私と白雪さんだと準備に時間がかかりすぎるうえ、若干目立つという弱点があった。だから一撃で最大打点を与えるため、今回は火野さんに隠れてもらっていたのである。

彼としては一番前で闘いたそうにしていたが、作戦の意図を伝えると若干しぶしぶながらうなずいてくれた。

そして、それまでため込んでいた火勢を解き放ちながら振るわれた長剣は、見事にアイアンゴブリンの首を切り飛ばした。

ーーーーーーーーー

「おめでとうございます。あなた方はDランクへ昇格しました。」

今後のお活躍を心より応援します、と頭を下げる職員さんを後ろに私たちは冒険者ギルドの受付を後にした。

「いやー、これで俺たちもDランクかぁ。」

「浮かれない、浮かれない。まだ、Dランクよ。」

「まぁまぁ、これでも早い方ですし。」

その足で同じ施設内のカフェテリアスペースへ移動すると、それぞれが注文を済ませて先ほどのランクアップについて話し合う。

「にしても、やっぱり楽勝だったわね。試験。」

「それは……まぁ、お上的にはできるだけ多くの人に長く続けてほしいでしょうし。」

「あぁ、つまりは釣り餌ってわけね。」

「そこはモチベーションの維持のための方策、と言いましょうよ。」

「さして変わらないじゃない。」

そう、Dランクへの試験はさほど難しい事ではない。最初の講習で学んだことの振り返りさえしっかりしていれば筆記試験は突破できるし、順調に訓練を重ねていけばさっきのアイアンゴブリンも倒せる程度である。

だから、一部ではEランクからDランクへ上がるには能力が育つよりも適切なダンジョンが見つかるのを待つ方が長いなんて言われることもある。

「なぁなぁ、これから俺らってDランクダンジョン潜れるわけじゃん。」

たわいもない雑談をしている中、火野がそう切り出した。

「そうなりますね。でもまだ武装のアップグレードの資金がたまってないので、あと何回かEランクに潜って……。」

「それなんだけど、一気に弱めのDの所潜ったほうが早くないか?」

「まぁ、それもそうなんですが、ちょっと安全マージンが……。」

私が困ったように言うと、火野さんはなぜか頭を下げてきた。

「頼む。できればD行ってみたい。それでだめだったらEランクのところ行くからさ。」

私は白雪さんのほうを向いた。彼女の意見を聞こうとして、声をかけるのをためらってしまった。

なぜなら、彼女の表情が引きつっていて、右手を中途半端に上げた状態で固まっていたからである。

「白雪さん、大丈夫ですか?」

「あ、え?あぁ、うん。大丈夫よ。次のダンジョンの話よね。私としてはどっちでもいいわよ。」

どこか早口でそこまで行って、残っていたイチゴのフラペチーノを勢いよく飲み始める。

なんとなく話し掛けにくい雰囲気を出しているので、私はそれ以上話し掛けることはせず、火野さんに向き直った。

火野さんも不思議そうな顔をしていたが、こっちが振り向いたのを見て居住まいを正す。

「では、次に合う日時が決まった時に、都合のいいダンジョンがあればランク関係なく行くということで。まぁ、危険そうならすぐ逃げればいいですし。」

「ま、まぁ、そうだな。」

ちらちらと不機嫌そうな白雪さんを意識しながら答える火野さん。

どこか気まずい雰囲気が流れ、このまま解散しようかという流れになった時、私の後ろから声をかけられた。

「あの、清水晶さんでいらっしゃいますか?」

私が振り返ると、そこにはスーツ姿の女性が、緊張した面持ちで立っていた。


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