プロローグ:在りし日の会話
皆さま、お久しぶりです。連載を再開します。
第2章「シーリーコート」編、開始です。
本日は2話投稿となります。
こちらはその1話目です。
誰しも、忘れられない物事というものがある。
それは何気ない日常だったり、自分の失敗談だったり、あるいは目を逸らしたくなるような風景だったりする。
私、清水晶の場合――それは中学時代に関わった、ある先輩の存在だった。
星崎翼。
中学生とは思えない思考力と知識量、迷いのない行動力。
周囲の生徒から見れば、それは疑いようもないカリスマだった。
実際、激戦区として知られていた生徒会選挙で、彼女は圧倒的多数を得て会長に就任している。
私が生徒会に所属していたのも、彼女が原因だ。
当時、いじめで孤立していた私を、半ば強引に引きずり込んだ。
「あなたはこっちに引き込めそうだったから」
理由を聞いた私に、彼女はそう言って笑った。
その“こっち”がどんな場所だったのかは、後になって嫌というほど思い知らされることになる。
そんな、欠点らしい欠点の見当たらない先輩が、ある時こんなことを言った。
「人は誰しも願いを持っているの」
――生きたい、食べたい、眠りたい。
――美しくなりたい、他人より上に行きたい、認められたい。
原始的なものから、高等生物らしい複雑なものまで。
人は願いの集合体でできている、というような口ぶりで。
あの時、彼女は笑っていた。
楽しそうで、優しげで、まるで真理でも語っているかのように。
「でもね」
そう前置きして、星崎翼は続けた。
「自分の願いと、置かれている環境の認知が歪んでいたら――どうしようもないのよ」
そして、私の目を見て言った。
「だからあなたも、その不信に満ちた目、早く棄てなさい。
そんなもの、無駄だから」
優しい声だった。
正しいことを言っている表情だった。
それでいて――どこか、すべてを見下し、同時に自分自身すら嘲笑しているような響きがあった。
不信を捨てろ。
疑うな。考えすぎるな。
そう“理解すれば”、人間なんて大して気にならなくなる。
あの人の言葉は、今でも私の中に深く刻まれている。
いろんな意味で、忘れられない人だった。
……そして、今。
なぜこんなことを思い出しているのかといえば。
「おっしゃぁ!!いくぜぇ!」
「ちょっと待ちなさい!あぁ、もう。『クリエイトアイス:バレット』」
「二人とも。周囲に敵影なしです。やっちゃってください。」
なんてことはない。暇だっただけである。
読んでいただきありがとうございます。
第2章は毎週日曜・火曜・木曜・土曜、20時投稿予定です。
よろしければお付き合いいただけると幸いです。
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