第20話:ちょっと変わったソロダンジョン攻略
二人とボスラットを倒した日から四日、週の真ん中で私は一人でダンジョンに来ていた。ここは冒険者ギルドの管理する初心者用ダンジョンの一つで、最低限の強さであるグリーンスライムがうじゃうじゃいる場所だ。
ギルドでは基本的にパーティでのダンジョン攻略を推奨しているが、何かしらの要因で一人で潜る人もいないわけではない。しかし、そんな人をEランクダンジョンに入れても無駄死にするだけである。
そこで、講習以外であまり使われない初心者用ダンジョンでの間引きをさせつつ、実はそれなりに需要のあるスライムブロックを回収させているのである。
そんな場所にパーティを組んでいる私がなぜ来ているか……。単純に言えばお金と実験のためである。
「ピギー!?」
グリーンスライムを叩き潰しながら私はため息をついた。
「魔法がうまくいかない。」
そうなのである。私のイメージがいけないのか、攻撃力のある魔法をうまく形成できないのだ。光と闇が実体のないという固定観念のせいなのだが、自分の中でそれをうまく改善する理屈が組み立てられていないのである。
いや、それだけではない。
「しかも媒体がこれじゃ、どうしようもない。」
警棒を持っていない左手を見下ろす。そこには薄い板状の水晶が、滑り止めの着いたゴム手袋で握られていた。
そう、杖としては向かない、割れやすい水晶が私に適性のある増幅器なのだ。
実際、これを通して発動する魔法の燃費はすこぶる良い。この前の『カンテラ』が半分以下の魔力量で維持できる程度には。
「うーん、何か、こうイメージが固まらない。」
私が近づいてきたグリーンスライムに左手の水晶板を向ける。そして頭に浮かんだ詠唱のイメージを強くしながら唱えていく。
「光よ、矢となりて貫け『ライトアロー』」
水晶板の前に光の球が発生し、それは瞬時に矢の形をとって放たれる。それはグリーンスライムに命中して
「ピギュ?」
一切の痛痒を与えずに霧散した。私も水晶の増幅率を加味しても大した魔力を消費した感覚がない。
「ぴ、ピシャーー!」
飛びかかってくるグリーンスライムを警棒で叩き切ってため息をついた。
「はぁ。うまくいかないなぁ。」
そして、試行錯誤を重ねること1時間。全く進まない現状にさすがに疲れた。
だから、少し休憩してから実験の内容を変えることにした。
敵は再びグリーンスライム。私は手に持ったものをそいつにかまえ、射撃姿勢を取る。
そして、右手でコッキングを下し、狙いを定めて引き金を引いた。
ドパンッ!
スライムの身体強化によって反動を無理やり殺しながら放った弾丸はグリーンスライムの右半身を消し飛ばした。
そう、今放ったのは拳銃。リボルバーと呼ばれるタイプのハンドガンである。
なぜ、日本で所有を禁止されている銃火器を持っているかと言えば、冒険者ならば特例的に所有が許されているためである。まぁ、これはレンタル品なのだが。
ギルドでの講習には拳銃の訓練とテストが義務化され、冒険者なら誰でも使えるようになっている。しかし、使われ始めてから、致命的な問題が見つかった。それが
「「「ピギャーー!!」」」
発砲音で多くのユーンを呼び寄せてしまうことである。
まぁ、これについては説明するまでもないだろう。しかし、現在でも自衛隊のシュブ層は魔力を付与した銃火器である。
ではなぜ、自衛隊では銃火器が効果があったか。
銃火器は大人数での行動には向いていた。それだけである。
もう少し細かく言えば、発砲音で多くのユーンを呼び寄せたとしても、こちらには物量に対抗できるだけの数が自衛隊にはあった。しかし、冒険者のパーティは基本3人から5人。つまり、呼び寄せたユーンの処理が追いつくかどうかでリスクがまるで違ったのである。
しかも、これに加えて銃火器は運用コストが高かった。銃弾一発にもそれなりのお値段が付くのが現代である。
結果として、全員が使うことはできるが、使うことはない。そんな微妙な武器が現在における銃火器なのである。
まぁ、他にも理由はあるのだが、今はいいとしよう。
ではなぜ、今回持ち込んだか。まぁ拳銃を使ってみたいという好奇心がなかったとは言わない。ただ、それに加えて今の私の問題の解決手段として検討するためである。
今の、私の問題……攻撃力不足だ。パーティメンバーの二人は何かしら制約はあるにしろ決め技とでもいうべき攻撃を持っている。しかし、私にそれはない。
しいて言えば腰に吊るしたナイフだが、敵を行動不能にしないと使えないという時点で論外である。
だから試していたのだが、コスパが悪い。感想はこの一点に尽きた。
しかも持ち運びも手間で、重い。荷物をとにかく圧迫するのだ。
3発撃った当たりで興奮も冷めて、装填されていた5発を打ち切る時には採用をあきらめていた。
だめだ、魔法も拳銃もうまくいかない。今日もちょっとしたお小遣い止まりか……。拳銃使っちゃったし。
肩を落として入口へと戻っていく。気が付けば思っていたより奥へ来ていて、戻るにも時間がかかりそうだった。
あーあ、どうするか、何かこういいアイデアはないか。
注意こそおこたらないが、私の頭はだいぶ疲れ切って投げやりになっていた。
いやー、拳銃はいいアイデアだと思ったのに。いや、本当は撃ってみたかっただけなのだが、だって、仕方がないだろう。物心ついた時からアニメばかり見ていて、特に朝にやっていたロボットのビームライフルにあこがれが……。
ビームライフル……。
私は左手に握った水晶版をみた。これは私の魔法を増幅させ、イメージ通りの現象を補助してくれる。
ついで、腰の拳銃を見た。これは昇順を合わせるのにも都合がいいが、それ以上に「何かを射出する」というイメージが強い。
これに私の水晶加工能力を組み合わせたら。
……銃の外装は父のモデルガンでももらおう。
私は一気に上機嫌になりながらダンジョンの出口へ歩み出した。




