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クリスタル・ウェポンズ~心臓が結晶化した私は助かるために現代ダンジョンに潜る~  作者: 彩名氏シエル
第1章 『水晶製魔機構の心臓』編

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第19話:ごくありふれたEランクダンジョン攻略 ー 2 ー

あの後から、私たちは順調にダンジョン内を進んでいた。

出てくるのは巨大ネズミことE_ラットに加えて、大きなコオモリであるE_バットが定期的に上から奇襲してくる。

ただ、ラットもバットもあまり知能が高くないので、二人が闘っている間にもう一人が警戒をしていれば問題はなかった。

実際、ラット5体と闘っている間に2体が奇襲してきた時は

「『コールドブレス』」

白雪さんの放った冷気を吹きかけられ、ぼたぼたと落ちていった。

このダンジョンは洞窟で分かれ道があり、何度か行き止まりについてはそこにマーキングして間違いをつぶしていき、どんどん遠くへ進んでいく。

そして、そんな横穴の一つを偵察していた私は、行き止まりに銅色の宝箱を発見した。

「……!」

珍しい。前にも言ったかもしれないが、Eランクダンジョンに宝箱はあまりない。まぁ、ないわけではないらしいが、これまでの探索で見かけたことはなかった。

私は素早くその部屋に敵対存在がいないことを確認すると、すぐに引き返して二人へ報告した。

「敵はいなかったけど、宝箱がありましたよ。二人とも。」

「っっしゃ。」

小さくガッツポーズを取る火野さんに、あまり表情を変えないが嬉しそうな雰囲気を放つ白雪さん。

「じゃあ、取ってきますのでここで引き続き監視お願いしますね。」

私はそう言うと、横穴の中へ戻っていく。後ろで「あぁ、俺の宝箱……」という残念そうな声が聞こえた気がしたが、気にしないことにした。

私は戻ると、宝箱へと近づいて行く。罠がないか確認するために、ペンライトを使って鍵穴を確認したり、周囲に釣り釣り糸が伸びていないかを確認していく。

そして、裏側に箱につながっている釣り釣り糸を見つけた。完全に罠である。

私はそれのつながっている先を探し当てる。宝箱の蓋に紐がつながっていて、紐が引っ張られたら上の方にある穴から矢か何かが放たれる仕組みになっていそうだ。

私は持ってきていた止血用テープで釣り糸を固定すると、釣り糸を切って罠を不発させて、宝箱の蓋を開けた。

そこには10枚程度の紙札が入っていた。

「呪符か……」

呪符とは、使い捨ての魔道具の一つで、ダンジョン産以外にも人が作った物もそれなりに流通している。私が求めている「賢者の石板」もこのダンジョン産の魔道具に含まれている物だ。まぁ、こんなところにある呪符なんかだと性能に天と地ほどの差があるが。

それでも、それなりの価格で売れるので今回は当たりだと内心でガッツポーズを浮かべる。

私はそれを回収して背中のリュックに折れないように入れると、通路へと戻っていった。

「何があった?」

「呪符。」

「それなりに売れそうね。」

私たちはそう話しながら奥へと進んでいった。

そして、なんだかんだ5時間ちょっとたって、私たちはコアルームへ続く扉の前に立っていた。

「フォーメーションは?」

「俺が前で、」

「私が後方支援。こいつが入ってから30秒後に入る。」

「私が遊撃で入るときは最初隠れますね。」

直前の確認を終えて火野さんが扉を開く。

「チュゥーアァーー!!」

そう叫んだのはE_ラットよりもかなり大きな、二足歩行の焦げ茶色のネズミだった。その手には斧を持っている。

ダンジョンのボスはそのダンジョンに出てくるユーンを強化したものが多いらしい。今回もそのパターンのようだ。

「うおりゃぁ!!」

火野さんが勢いよくボスラットへ突っ込んでいく。両手で持ったロングソードには炎を纏っていて、攻撃力を上げていた。

私は火野さんの影に隠れるように部屋に入ると、ボスラットへ回り込んでいく。

「はああぁぁぁ!」

「チューー!!」

ロングソードと手斧がぶつかり合い、火花が散った。そして、両者は飛び退る。ボスラットは至近距離で炎にあぶられたせいか、手に火傷を負っていた。

その時、30秒遅れて白雪さんが入ってきた。

「貫け!『アイスニードル』!」

白雪さんが詠唱して杖を横に振ると、複数本の直径5㎝ほどの氷の針が生じた。

「……!行け!」

狙いを定めてその針が放たれた。

それに合わせて私も加速し、ボスラットの右側面から迫っていく。火野さんは白雪さんが入ったと同時に誰もいない方向へ飛び退っている。

「チュー!?」

ボスラットは明らかにどちらへ対処すればいいか迷っていた。そして、それが致命的な隙につながった。

複数の氷針がボスラットの毛皮を貫通して血しぶきを上げさせ、私の水晶を纏った警棒が肩を砕いた。

それでも致命傷ではない。私はバックラーで体をかばいながら後方へ飛び退る。ボスラットはこちらを殺意のこもった瞳でにらみながら追跡しようと足を振り上げて、

「うおおおおおーーー!」

私と反対側へ飛び退っていた火野さんが、無防備になった背中を切りつけた。

「ぎゅああああ!!??」

悲鳴を上げるボスラット。私は再び近づくと、左手のひらを苦しんでいるボスラットの顔に向けた。

「発生し、炸裂せよ『フラッシュバン』」

手のひらからすさまじい光が一瞬だけ放たれ、ボスラットの視界をつぶす。

ボスラットは混乱したように目を抑えて転げまわり始めた。

「二人とも、避けて!」

私と火野さんが大きく飛び退って白雪さんを見ると、その周囲には多くの氷のつぶてが浮いていた。準備は完了しているらしい。

「『リトルフェイルシュート』」

そして、それらの氷の塊たちが一斉にボスラットへ殺到し、全身を打ち据える。

数十秒後、そこには光の粒が立ち上っていて、大きな魔石と黒光りする手斧が残されていた。

「攻略完了ってな!」

完全に消滅したのを確認して火野さんが自慢げにそう宣言した。

私とこちらへ近づいてきた白雪さんは苦笑いしながら部屋の奥へ向かっていく。

「さて、これを回収すれば終わりっと。」

もう手慣れたもので、白雪さんは緊張することなく赤い宝石……ダンジョンのコアを埋まっている壁から取り除いた。

すると、周囲が激しく揺れ出し、一気に闇が侵食してくる。

そして気が付くと私たちはダンジョンの入り口のあった崖にいた。入り口の亀裂は消滅していて、ダンジョンが消滅していたことを示している。

私は手早く電話で攻略報告を行うと、ギルドへ納品するべく帰り道を三人で歩き始めた。

これが私たちの新しい日常である。

ふと、そんな言葉が脳裏をよぎって、わたしはフッと笑ってしまった。

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