第17話:杖の適性
本日は2話連続投稿しています。
こちらは2話目となります。
無事に魔法を習得し、講習を終えて私と白雪さんは隣のビルへ来ていた。
「うーん、なんかしっくりきません。」
私は黒い木製の杖に魔力を通しながら首をかしげていた。
講習の終わりに白井さんに個人的に言われたのだ。
「今後、魔法を主軸にしていける才能があなたたちにはあります。だから早めに補助具の杖を購入することをオススメします。」
そう言われたので私たちは隣のビルにあった冒険者用の武器・防具を取り扱っているテナントの一つで杖を試していたのである。
しかし、どれだけ試しても、私だけがうまく使える補助具を見つけることが出来なかったのだ。
相談した店員さんいわく、魔法の補助具にはいくつか素材によって適性のようなものがあるらしい。
基本は木製なら誰でもある程度の適性があるのだが、私の場合は本当に何も試してもうまくいかなかった。
こう、魔力を通すとうまく流せないというか、すり抜けてしまうというか、とにかく最後までエネルギーを先端にまで伝えることが出来なかったのである。
そうして店員さんと白雪さんと一緒になってあれでもないこれでもないと試し続けること1時間。結局店舗にある初心者用の杖は全て適性外だった。
「……。」
「ま、まあまあ。大丈夫だって。杖なしでも魔法は使えるし。そもそも清水さんは魔法主体じゃないし……だから……ね。」
ずーんと落ち込んでいる私に、白雪さんが慰めの言葉を言ってくれる。
店員さんは申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。今日はあきらめて家に帰ろう。エナドリ飲んで全部忘れよう。
そう思っていると、レジの奥に置いてあるものが目に映った。
それは見たことのあるもの……布の上に置かれた水晶だった。
なぜかそれにものすごく目が引き寄せられた。
そういえば、私のアビリティ……。
ここでもか。ここでもあれが面倒なことをしているのか……。
げんなりした思いで私は店員さんに声をかけた。
「あの……。あれ、試していいでしょうか?」
私がレジ奥の水晶を指さしながら言うと、店員さんは困ったような表情で言った。
「水晶ですか……。オススメは出来ませんね。」
「どうしてでしょうか……?水晶ってなんか魔法との相性よさそうですけど。」
白雪さんがそう聞くと、店員さんはより困った表情になる。
「そうなんですが……逆に良すぎると言いますか……。魔法の増幅率が高すぎてかなり集中しないと制御できないそうでして。」
「あぁ……媒体の法則ですか……。」
媒体の法則とは魔法が使われるようになって出てきた概念であり、魔法の増幅率が良ければよいほど魔法の制御が難しくなるというものだ。
海外の軍人がダンジョンで、手に入れたものすごく豪華な杖で火魔法を使ったところ、大爆発を起こして大きな騒動になったこともあるらしい。
で、それに照らし合わせると水晶は、地上で手に入る増幅器の中では誰でも高い増幅率を出しやすい代わりにとにかく制御が難しく、しかも脆いということで冒険者には不人気だそうだ。逆に神職の人にはよく購入されているらしいが。
「それで大丈夫です。」
そう言って、店員に水晶を取ってきてもらい、隣の試験場で魔力を通してみる。もう何回も試している工程なのでそこによどみはない。
そして、魔力は思い通りに水晶を通っていき、先端にまで満ちた。そしてほとんど外に漏れることもない。
「……これっぽいです。」
二人はかなり驚いていた。
なんだかんだあって私と白雪さんは何も買うことはなく店を出た。私はこの前のダンジョンで水晶が出ていたし、白雪さんもこの前のダンジョンのタトゥーゴブリンのドロップで手に入れた杖を試してから買うそうだ。
そして、私たちは火野さんを迎えに近くの訓練場へ歩いていた。
杖の購入に時間がかかったため、事前に少し遅れる旨の連絡を入れ、待ち合わせ場所にたどり着くと、そこでは火野さんと見覚えのあるような男子が言い争っていた。
「お前、どんなずるしてギルドに取り入ったんだよ。言えよ。このチーターめ。」
「だーかーら!そんなことしてねぇっつってんだろう!」
「そんなわけあるか!!俺みたいな3色と違ってお前みたいな単色が特異なボスを倒せるわけがねぇだろうが!!」
そんな感じでヒートアップしていて、割って入ることもためらわれた。周囲の人たちも遠巻きに彼らを見ていて、ひそひそと何か話をしていた。
私と白雪さんは顔を見合わせると、私は顔を近づけて小さく言った。
「私が周囲の人に状況を聞いてくるんで、職員さん呼んでもらえますか?」
「分かったわ。」
そう小さな声で白雪さんが答えると、遠回りでスタッフを探しに奥へ向かっていった。
私はそれを見送ると、近くの同い年ぐらいの女子グループに近づいて行く。
「あの、すみません。」
「何?」
「あれ、どういう状況ですか?」
私が火野さんの方へ指を差して聞いてみると、女子たちはいかにも聞いてほしそうに教えてくれた。
「あの食ってかかってるほう、富田って言うんだけど、あいつがここらじゃ有名な問題児でさぁ。なんかプライマルカラー?のトリプルって話で、それをめっちゃ鼻にかけてるの。」
あぁ、あいつはクラスメイトの富田だったか。道理で見たことがあると思った。
話してくれたロングヘアの女子に続けてショートカットの女子が続ける。
「で、それを傘にやりたい放題。訓練場を独占したり、無理やり人をどかしたり、この前なんてかわいい子を無理やり勧誘してたよ。」
そう言って、面倒そうに首を振った。そうしてその女子たちは次々と話していく。
「で、最近あの突っかかられているほうの男いるじゃん。あいつなんか冒険者試験で変なユーンに遭遇したらしくって、ちょっと有名なんだよね。属性纏いも派手だし。」
「で、自分より目立ってることが気に食わなかったらしくってさ。ああなってるってこと。」
「で?そう言うあんた誰よ。」
「なるほど。ありがとうございます。実は……。」
私がこちらの事情を話そうとすると、
「お、清水じゃんか。こんなところでどうしたんだよ。」
さっきまでものすごい形相で火野さんをにらんでいたというのに、急にこちらへ気持ち悪い笑みを浮かべながら富田が話し掛けてきた。
「……。」
私は唐突に話し掛けられてどう返せばいいか分からず黙り込んでしまった。
話していた女子たちは巻き込まれないように数歩下がってしまい、富田と一対一になってしまう。火野の方を見れば呆然とこっちを見ていて役に立ちそうになかった。
「おい、何ぼーっとしてんだよ。」
「……あぁ、すみません。で、どうしましたか?」
私がそっけなく言うと、富田は一瞬顔を顰めた。しかし、すぐにあの気持ち悪い笑みを浮かべると、私の胸の当たりを見ながら話始める。
「お前もあいつがずるしてると思うよな?」
そう言って火野を指さす。火野はどこか所在なさげに周囲を見回していた。
私は少し考えて、あえて富田に分かりやすいように説明することにした。あとあと嘘をついているとバレても面倒なので全て正直に答える。
「何のことです?……あぁ、ダンジョンで特殊なユーンと遭遇したという話なら、事実ですよ。」
私がそう言うと、今度こそ富田の顔がゆがんだ。
「何言ってんだ。そんなわけないだろ。」
「事実です。なにせ、私もその場に遭遇していますし。彼とはそれからパーティを組んでいるので。」
そこまで言えば、富田は目を見開いた。
「は?お前が?あんな奴と?」
段々と驚愕の表情がいらだちへ変わっていく。そして、殴ろうとでもいうのか、手を振り上げた時、
「あっ!あそこです!」
白雪さんが複数の職員を連れてこちらへ小走りで近づいてくる。中には講習を担当してくれた赤井さんもいて、鬼の形相で富田をにらんでいた。
富田は職員たちが近づいてくるのを見ると、「ちっ」と舌打ちして扉へ駆け出した。
「待ちなさい!」
そう言って何人かの職員が追いかけるが、すぐに路地に入ったらしく、ビルを出たときには姿はなくなっているようだった。
「大丈夫か?火野、清水。」
そう声をかけてくれたのは赤井さんだった。その顔は苦々しいもので、富田を良く思っていないのは明らかだった。
「お前らも面倒なのに目をつけられたな。気をつけろよ。ああいうのは相手にしないのが一番だ。」
そう言うと職員が話し合っている所へ向かって歩いて行く。
私たちは顔を見合わせると、何かを言う気にもなれずに今日は帰ることにした。
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