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クリスタル・ウェポンズ ~ 心臓が水晶になった私、助かるために現代ダンジョンへ潜ることにしました~  作者: 彩名氏シエル
第1章 『水晶製魔機構の心臓』編

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第12話:ちょっと変わったソロダンジョン攻略

二人とボスラットを倒した日から四日。週の真ん中で、私は一人でダンジョンに来ていた。冒険者ギルドの管理する初心者用ダンジョンの一つで、最低限の強さのグリーンスライムがうじゃうじゃいる場所だ。


ギルドは基本的にパーティでの攻略を推奨しているが、何かしらの事情で一人で潜る人もいないわけではない。そんな人をEランクダンジョンに入れても、無駄死にするだけだ。そこで、講習以外であまり使われない初心者用ダンジョンで、間引きをさせつつ、実はそれなりに需要のあるスライムブロックを回収させているのである。

そんな場所に、パーティを組んでいる私が、なぜ来ているのか。単純に言えば、お金と実験のためだ。

「ピギー!?」

グリーンスライムを叩き潰しながら、ため息をついた。

「魔法がうまくいかない」

そうなのだ。私のイメージがいけないのか、攻撃力のある魔法を、うまく形成できない。光と闇は実体がないという固定観念のせいなのだろうが、それを改善する理屈が、自分の中で組み立てられていないのである。

いや、それだけではない。

「しかも媒体がこれじゃ、どうしようもない」

警棒を持っていない左手を見下ろす。薄い板状の水晶が、滑り止めの付いたゴム手袋で握られていた。杖としては向かない、割れやすい水晶が、私に適性のある増幅器なのだ。

実際、これを通して発動する魔法の燃費は、すこぶるいい。先日の『カンテラ』が、半分以下の魔力量で維持できる程度には。魔力が少なくて済むということは、心臓への負担が減るということでもある。その意味では、手放せない相棒だった。

「うーん、何か、こう、イメージが固まらない」

近づいてきたグリーンスライムに、左手の水晶板を向ける。頭に浮かんだ詠唱のイメージを強くしながら、唱えた。

「光よ、矢となりて貫け『ライトアロー』」

水晶板の前に光の球が生まれ、瞬時に矢の形になって放たれる。それはグリーンスライムに命中して、

「ピギュ?」

一切の痛痒を与えずに、霧散した。水晶の増幅率を加味しても、大した魔力を消費した感覚がない。

「ぴ、ピシャーー!」

飛びかかってくるスライムを警棒で叩き切って、ため息をついた。

「はぁ。うまくいかないなぁ」

試行錯誤を重ねること一時間。まったく進まない現状に、さすがに疲れた。少し休憩して、実験の内容を変えることにする。

敵は、再びグリーンスライム。私は手に持ったものをそいつに構え、射撃姿勢を取る。右手でコッキングを下ろし、狙いを定めて、引き金を引いた。

ドパンッ!

身体強化で反動を無理やり殺しながら放った弾丸は、グリーンスライムの右半身を消し飛ばした。

今放ったのは、拳銃。リボルバーと呼ばれるタイプのハンドガンである。日本で所有を禁止されている銃火器を、なぜ持っているのかと言えば、冒険者には特例的に所持が許されているからだ。……まあ、これはレンタル品なのだが。ギルドの講習では、拳銃の訓練とテストが義務化されていて、冒険者なら誰でも使えるようになっている。

しかし、使われ始めてから、致命的な問題が見つかった。それが、

「「「ピギャーー!!」」」

発砲音で、多くのユーンを呼び寄せてしまうことである。

現在でも、自衛隊の主力は、魔力を付与した銃火器だ。ではなぜ、自衛隊では銃火器に効果があったのか。大人数での行動に向いていた、それだけである。発砲音でユーンを呼び寄せても、物量に対抗できるだけの数が、自衛隊にはあった。しかし、冒険者のパーティは、基本三人から五人。呼び寄せたユーンの処理が追いつくかどうかで、リスクがまるで違うのだ。しかも、銃弾は一発にもそれなりの値段がつく。運用コストが高い。

結果として、全員が使うことはできるが、使うことはない。そんな微妙な武器が、現在における銃火器なのである。

ではなぜ、今回持ち込んだか。拳銃を使ってみたいという好奇心がなかったとは言わない。ただ、それに加えて、今の私の問題の解決手段として検討するためだ。

今の私の問題……攻撃力不足である。パーティメンバーの二人は、何かしらの制約はあるにしろ、決め技とでも言うべき攻撃を持っている。しかし、私にはそれがない。強いて言えば、腰に吊るしたナイフだが、敵を行動不能にしないと使えないという時点で、論外だ。

だから試していたのだが、結論は、コスパが悪い。この一点に尽きた。しかも、持ち運びが手間で、重い。荷物を圧迫する。

三発撃ったあたりで興奮も冷めて、装填されていた五発を撃ち切るときには、採用をあきらめていた。

だめだ、魔法も拳銃もうまくいかない。今日も、ちょっとしたお小遣い止まりか……。拳銃も撃っちゃったし。

肩を落として、入口へ戻る。気がつけば、思っていたより奥へ来ていて、戻るにも時間がかかりそうだった。

あーあ、どうするか。何か、こう、いいアイデアはないか。

注意こそ怠らないが、私の頭は、だいぶ疲れて、投げやりになっていた。

いやー、拳銃はいいアイデアだと思ったのに。いや、本当は撃ってみたかっただけなのだが、だって、仕方がないだろう。物心ついたときからアニメばかり見ていて、特に朝にやっていたロボットのビームライフルに、憧れが……。

ビームライフル……。

私は、左手に握った水晶板を見た。これは、私の魔法を増幅させ、イメージどおりの現象を補助してくれる。

次に、腰の拳銃を見た。これは照準を合わせるのにも都合がいいが、それ以上に、「何かを射出する」というイメージが強い。

これに、私の水晶加工能力を組み合わせたら。

……銃の外装は、父のモデルガンでももらおう。

私は一気に上機嫌になって、ダンジョンの出口へ歩き出した。


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