第10話:異常の兆候
本日は2話投稿です。これは2話目です。
お気を付けください。
その後、2時間ほどグリーンスライムを狩りまくった。そこで分かったことはいくつかある。
まず、火野さんの運動神経はかなり良く、身体強化などの能力の才能も高いように見えた。スライムを3体同時に薙ぎ払っている姿にはさすがに驚いた。
逆に白雪さんは運動神経が割と壊滅的だった。もっとも、体力や筋力自体はあるのだが、体の動かし方が本当に下手なのだ。一度など、木刀がすっぽ抜けたうえでそのまま勢いを消せずに壁に突っ込んだこともあった。
それから、私のアビリティ「水晶製魔機構の心臓」から影響を受けたであろう属性纏いについてだが、戦闘ではまあ弱くはないが癖が強いという感じだった。
シンプルに固さは増していて打撃力は上がっているように思えるし、折れにくくなっている感じもする。ただ、脆い。
一度スライムを貫通して地面をたたいた時には、表面の結晶が砕け散って、周辺に破片をばらまいていた。ただ、ある程度の時間で結晶は消えてしまうようだ。今はこんな感じだろう。
そして、ダンジョンを出て少しの講義を受けた後、私たち3人は近くのバーガーショップに来ていた。先日の座学の時とは逆で、火野さんが生き生きとしている野に対して、白雪さんはぐったりしていた。
「もう……むり……。」
「おいおい、相変わらず情けないなぁ。」
「いや、これに関しては火野さんがおかしいと思いますよ……。」
わたしもぐったりしながらそういう。ここ数週間の基礎体力訓練と、魔力による強化で肉体的疲労はともかく、精神的疲労がひどかった。
グリーンスライム自体は弱い。しかし、致命的な攻撃手段があった。顔に張り付くである。スライムなのでべったりと張り付くとはがすのが困難で、そのまま呼吸ができずに窒息するのである。
だから、ダンジョンの中にいる間はずっと気を張り詰めて奇襲されないようにしていたので、精神をすり減らしてしまうのである。まぁ、白雪さんはうまく動けなかったことでも精神をすり減らしていそうだが。
「冒険者になったら私、魔法の講習受けるわ……。」
「それがいいとおもいます。」
呻くように言う白雪さんに、私は苦笑気味に答えるしかなかった。
その後はワイワイとしゃべりながら注文したハンバーガーセットを食べていく。
私がダブルチーズバーガーセット、火野さんはビックバーガーセットに加えて普通のハンバーガーを単品で。白雪さんはてりやきバーガーとカフェオレを頼んで楽しい会話は続いた。
私はこの二人に、思っていた以上に親しみを感じ始めていた。
「そういえばさ。清水って冒険者になったらどうするんだ?パーティ。」
全員がハンバーガーを食べ進めて残るはポテトのみとなった時に、そう火野さんが聞いてくる。
「どう…とは?」
私が質問の意図を理解できずに聞き返すと、翻訳でもするように白雪さんが続ける。
「パーティの当てはあるのかって聞いてるのよ。こいつ。」
相変わらず言葉が足りないと小さく愚痴るのを聞いて、あぁいつもの子とかと思う。この二人の正確もだんだんわかってきた。
それはともかく質問に答えなければ。
「得にはないですね。基本はソロで活動するつもりですし。」
そういうと、二人の目がきらりと光った気がした。
「じゃあ」
「それなら」
「「一緒にパーティ組まない?」」
二人は息をそろえてそう言った。私はあっけに取られて数秒、その意味を理解することができなかった。
しかし、内容をかみ砕いて行くうち、別段悪い話ではないと思い始めた。
まだしっかり調べ切れていないが、基本はパーティ推奨らしいし、パーティでしか受けられない仕事もあるはずだ。
そして、この二人に性格上の不安点は少ない。若干不安なところはないわけではないが、十分、許容範囲だろう。
「……いいんですか?」
反射的に確認してしまう。こういう時即決できないのは私の悪い癖だなとどこか他人事な所が考えるも、それを表情に出すこともない。
二人は「もちろん」と言ってうなずいてくれる。
「じゃあ。よろしくお願いしますね。」
私はそう言って二人に手をさしだした。二人も手を出して、固く握手をした。
「あ、ただ、ソロ活動もする予定なので、そこは要相談で。」
私がそう言うと、二人は「真面目だなぁ」って苦笑いをしていた。
正式にパーティ結成が決まってから2週間。私の心臓が透明になってから約1か月が過ぎた。
昨日行った定期診断では、特に体に変わったところはないらしい。相変わらず心臓は透明のようだし、魔力の生成量は常人よりもかなり多めだ。そして、それ以外の影響は不気味なほど見られない。
医者も相変わらず首をかしげていた。今、国の魔法分野の研究所とコンタクトを取っているらしく、何か月後かは分からないが、その内研究協力が来るかもしれないと言っていた。
正直言うと、実験動物扱いはごめんなので、いくらお金が出ると言われても憂鬱だった。
そして、今日は冒険者講習の最後の試験日だ。それは職員同伴の元最低ランクの野良ダンジョンに潜って、底のコアを改修する…つまりは実戦でダンジョンを攻略してもらうということだ。
保護者の同伴なしでやっていいのか?という疑問は「人手不足」の一言で粉砕されてしまった。
ただ、ダンジョンの中でも下限の場所で、緊急用に連絡員が付いているので、すぐに助けを呼べば30分以内に助けが来るとのこと。
私たちは準備を整えると、初めての整備されていない、事前情報もないダンジョンへ潜っていく。
それから、全員の武器は若干変わっていた。
火野さんの木刀には鉄心が入り、左手にはプラスチック製のラウンドシールドが付けられている。
白雪さんは、ギルドから借りたクロスボウを持っていて、どうやら魔法の代わりにと言われてしまったらしい。一応腰に木刀は吊り下げているが、あまり使いたくはなさそうだった。
わたしも、木刀は腰に吊り下げ、代わりにしなりやすい伸縮式警棒を持ち込んでいた。私の属性纏いは木刀のような固い者よりも、警棒のように若干しなる者の方が相性がいいらしい。
そのダンジョンに出てくるのは定番の魔モンスターこと、ゴブリン。緑色で小柄な小鬼である。
私たちは順調にダンジョンを踏破していった。
私が先の通路を偵察してユーンを発見して二人に伝える。
そうして、白雪さんが冷気をまとったボルトで先制攻撃を放つと、勢いよく火野さんが突っ込んでいって敵にダメージを与えていく。
私は火野さんに意識が集中している間に不意打ちを仕掛けたり、一匹つり出して白雪さんに狙わせたりと、補助的な役割を果たしていた。
様々な訓練と試行錯誤を繰り返した結果、いつの間にかこういう形でまとまっていたのである。
「この調子なら、大丈夫そうじゃね?」
「油断しないでよね。この後には始めてガーディアンとの戦いがあるんだから。」
ガーディアンとは、ダンジョンの最奥でコアを守っている存在であり、ダンジョン内でもっとも強いことが多い。ボスモンスターと言った方が分かりやすいかもしれない。
「まぁ、油断しなければ倒せるって赤井三にもお墨付きをいただけましたし。いつも通りいきましょう。」
しかし、そこからはおかしなことが起こった。明らかにユーンの数が少なかったのだ。いつもは奥に行けばいくほど多くのユーンに遭遇するというのに。
嫌な予感を覚えた私たちだったが、わけもわからないまま戻るわけにもいかない。
結局、その後は大した戦闘も行うことなく、コアルームと呼ばれる、ダンジョンの最奥にたどり着いてしまった。
そして、そこには…。
倒れ伏し、干からびた死体となった複数のゴブリンと、
「grrrrrrrroooooooo!!!」
明らかに異様な黒い文様を浮かべた3周りも大きなゴブリンが雄たけびを上げている姿だった。
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