幕間1 カルロス
カルロスは、いつもの朝と同じように起き上がった。製紙工場へ行くためだ。
早めに着いて、時間どおりに書式を記入した。心の準備が必要だった。今日は、仕上げたロールの記録を塗り替える日になる。
それに、最高品質賞与まであと一歩だった。あの賞与があれば、工場を数週間離れられる。休暇を取るには、その時間が要る。
人生で最初に覚えているのは、最高行政官を見たことだった。なぜ自分が何者かを覚えているのか、なぜこの製紙工場で働いていると知っているのか、自分でもわからなかった。
どうやら、それ以前の人生はすべて失われているらしい。それなのに不思議と、どこに住んでいるか、名前が何か、専門が何かは知っていた。
紙を作ること。
「よう、カルロス」
ライバルのカルナスが笑いかけてきた。
カルロスが来る前、カルナスは「紙の王」と呼ばれていた。誰もが、どうして彼があれほど優れているのか知りたがった。ファンクラブまであった。
だが、カルロスが現れてすべてが変わった。
カルロスが紙作りの工程に入ると、それは呼吸と同じくらい自然だった。彼の手で仕上がる紙は、ほとんどのベテランがうらやむほどの出来だった。
カルロスの紙は、崇高だった。
しかも、まったく違う技法を使っていた。まるで別の世界から持ち込まれたかのような技法を。
あっという間に、彼はカルナスと肩を並べた。
工場は二つに割れた。
一方には、カルロスを熱烈に支持する革新派。彼らは、紙作りとは進化しうる職人技だと信じていた。
もう一方には、カルナスを支持する保守派。彼らは紙作りの伝統を語り、その伝統こそが社会の崩壊を防いでいるのだと主張した。
「お前が来てから、この場所は活気づいたよ。だが勘違いするな。今日は俺が先にノルマを終える。しかもA1品質でな」
カルロスは笑った。
「A1? 最高品質が怖いのか?」
カルナスは挑むような目で彼を見た。
「その勝負、受けて立つ」
そういう瞬間が、カルロスの人生に勢いをくれた。
忘れてしまったという事実を忘れさせてくれた。
そして、自分がどうしてここに辿り着いたのかを探る気力にもなった。
なぜなら、紙作りに関して、カルロスはただ者ではなかったからだ。
そして今日、ついにそれを証明する。




