第5話 ユル
ユルは、以前アレックと経験したあの感覚をまた感じていた。奇妙な感覚。アレックはあれを「笑い」と呼ぶ。気持ちがよかった。
ユルはアレックの緑の瞳を見つめていた。ずっとこの色だっただろうか? 公式記録の記述を思い出す限り、目の前のこの顔は、最高行政官ウルのものと一致しない。それなのに、世界中が彼をウルとして扱っている。
自分も含めて。
昇進が速すぎた。最初は、長年の勤務がようやく報われたのだと思った。やがて、ウルが気づかれていないと思って自分の体を見ていることに気づき始めた。彼女とて、それを夢想しなかったわけではない。不可能だと知っていただけだ。
最高行政官の身上調書、正確には「親密な関係およびその他特記すべき実践」の欄に、ウル自身の筆跡でこう書かれていたのだから。「男性を好む」
旅の途中、ウルは赤い標柱を指さした。
「なんであれは赤いんだ?」
ユルは質問を無視することにした。百三十本ごとに赤い標柱が立つことなど、行政見習いでも知っている。王国の物流と業績測定の一部であり、千ナクの距離を示す目印でもある。
ウルは二度と聞かなかった。
ユルはその後も、存在してはならない視線を感じ続けた。行政官が自分の胸元を見ているところ、箱を取ろうと屈んだ腰に目を留めるところを、何度か目撃した。あまりに頻繁なので、数え始めた。三時間で約十回。彼女としては、もっと多くてもよかった。
どうやらこの男、本当に女が好きらしい。
その夜、彼女は実験を設計した。
薄い生地の寝間着を使った。彼の世話をし、うまく話を運んで、対等な口をきける関係に持ち込んだ。
衣装合わせを口実に、何度も服を脱がせた。
彼は一度も手を出さなかった。逆光に立ったときに凝視する以外、この男は何もしなかった。ただし、大量の汗はかいていた。
ベッドが一台しかないように部屋を組み直す必要もあった。近づき、抱きつき、体をこすりつけた。
何もなし。
悲しいほどに、何もなし。
では、この疼きは? これをどうすればいい?
すべては帝国のため。誘惑と諜報は訓練の一部だ。とはいえ、それを楽しんではならないという法律はどこにもない。法が明示的に禁じていないからできることを、また一つ発見して、ユルは微笑んだ。
翌朝、アレックは片付けを手伝った。書類仕事はすべて彼女がやった。以前ならありえないことだ。ウル様は書式の記入に執着し、そのうえ全員に、なぜ正しく記入することが重要かを講義して回る人だった。
ウル様は肉体労働を一度もしたことがなかった。品位に欠けるとみなしていた。代わりに、自分の作業が終わってユルがまだ働いていると、行政論理学の授業を始めるのだった。
「秩序こそが帝国の結束を保つ」が口癖だった。
彼を逮捕する寸前までいった。人格詐称の容疑で。剣まで抜いた。道を切り開き続けるふりをして。
そしてあれが起きた。アレックが魔法を使ったのだ。何者であろうと、あれを使えるのは最高行政官だけ。
ドラゴンとの戦いが終わって初めて、ユルはアレックの顔を見た。ヴェールが剥がれ落ちたかのようだった。ウルではない。緑の瞳、まっすぐな鼻、癖のある金髪はふわふわで乱れていて、しかも年齢が自分にずっと近い。もしかすると、年下かもしれない。
その唇に近づきたい誘惑に駆られた。笑いがそれを後押しした。実行していただろう。だが、邪魔が入った。
「やっと見つけた。ずーっと探してたんだから」
女が現れた。髪は行政官の色。色をめぐる違反の中でも最大級のもので、それは決して軽い話ではない。
体に張りつく生地のドレスを着ていた。裁断が奇妙で、挑発的に肌をのぞかせる穴がいくつも開いており――効果はあった――丈は、帝国金庫に収めるべき二本の脚を誇示するに足る短さだった。
その顔を見ることは、行政史家たちが「芸術を見ること」と記述したものに近い感覚だった。金色に近い大きな瞳と、違法なまでに赤い、厚い唇。もし頼まれていたら、彼女と寝るために必要な三十四件の手続きを、迷わず全部済ませていただろう。
この女が混沌の種だとは、行政的損失もいいところだった。
アレックは目を見開いて彼女を見ていた。
「ミシェル?」その声の何かが、ユルに悪寒を走らせた。
彼は女を上から下まで眺め、ぐるりと一周した。
「そうよ、私」
アレックの目つきの何かが変わり、薄い笑みが浮かんだ。
「やっと見つけた。一瞬、あのイカれたラウラを追いかけてるのかと思ったよ」ユルには理解できない、彼が時々使うあの口調だった。
「あら、そう? なんで彼女のことなんか? 私のことしか考えてないんだと思ってた」赤毛は脚の重心を移し、腰をくねらせながらアレックを見た。
「アレック、種を捕らえなくては」ユルは彼に義務を思い出させ、剣を抜いた。
「落ち着けユル、全部俺の掌の上だ」赤毛の目を見つめたまま、彼は言った。
「おとなしくしてなさい、お嬢ちゃん。再会の余韻を味わってるんだから」赤毛はアレックを見つめたまま言った。
ユルは二人を引き離そうと近づき始めた。混沌の種には感染性がある。それでも、二人の間に割って入りたかった。そう考えた瞬間、太ももに熱を感じた。あれは混沌の種。柄を握りしめながら、自分に言い聞かせた。
「本当に大丈夫だ、ユル。全部掌の上だから」ユルはアレックの顔を見た。なぜかはよくわからないが、すべてうまくいくとわかった。剣を鞘から抜かずに、見守ることにした。
「あのなミシェル、おとぎ話だらけの道中でどうしてもラウラを思い出しちゃってさ、もしかしてお前があいつなんじゃないかって思ったんだ。今見れば全部勘違いだったけど。残念だな、挨拶したかったのに」
「ほんとに!?」赤毛の顔が、純粋な喜びに変わった。
「もちろん。あいつとの話、恋しいし」
赤毛は煙になった。その向こうに、赤毛より背の高い女が現れた。ナク一体と四分の三ほどの背丈。黒い瞳が、微笑みながらアレックを凝視していた。ユルはその顔に、完璧に記入され封緘された書類の山を眺めるときのサルバトーレを思い出した。
服装は実に独特だった。白いブラウスに黒のベスト、太ももの付け根までしかないパンツ。とても長い靴下には黒の縞、そして――赤まで! 混沌の種であろうとなかろうと、あれはアレックに対する重大な侮辱だ、とユルの目には映った。黒い留め具の革靴だけが、全身で唯一まともだった。
完全なる忌まわしさ。混沌の種の、真の姿。
「ラウラ?」ユルの口から名前がこぼれた。
「私のこと話したの?」ラウラは満面の笑みだった。
「もちろん。話さない理由がないだろ」
「私って、あなたにとってそんなに大事じゃないと思ってた」
「お前の創作物だって気づくのに、大して時間はかからなかったよ」アレックが言った。
ラウラは微笑み、離れて、その場でくるりと一回転し、それから小さくお辞儀をした。
「光栄です。見つけてもらえることを願って作りました」
「一生演劇部なんだな、お前。舞台装置をたどってここまで来た。あのドラゴンは本当に見事だったよ」アレックは至高の鞄に手を入れながら、ラウラに近づいた。
アレックが手を差し出し、彼女はそれを取った。アレックはゆっくりと彼女を引き寄せた。十分に近づいたところで、鞄から「忘却器」を取り出した。
「ごめんなラウラ。みんなは知らないんだ。ミシェルの左目の下には小さなほくろがある。最初からお前だってわかってた」
ラウラは衝撃に固まり、反応が間に合わなかった。アレックは無表情な目で、忘却器を彼女の頭に当てた。忘却器は服から色を、ラウラの瞳から表情を、抜き取っていった。
種がひとつ、出てきた。
アレックはそれを取り、ポケットにしまった。
ユルの脚は震えが止まらなかった。書式に記入しなくては。ペンを取ろうとして、指から滑り落ちた。アレックが彼女を見て、ペンを拾い、手渡して、微笑んだ。
一秒後、まったく別の表情になったラウラが二人を見た。その服の青を認め、直立した。
「あなた方に敬意を表して書式を一枚記入したいところですが、インクを切らしております」完璧なプロトコルに従って、彼女は言った。
「必要とあらば、使用分を配給いたします」ユルはまだ震える声で応えた。
「市民よ、あなたは除染された。通常の職務に戻りなさい。案件は後日追跡調査される」アレックは手を振り、立ち去るよう合図した。
娘はまっすぐで正確なお辞儀をして、集落の方へ歩き始めた。
ユルはプロトコルのことを考え始めた。書式に記入し、種を専用の瓶に保管し、首都へ帰還する。到着後、種を金庫に納める書類仕事に二週間、混沌への曝露の除染に一ヶ月。
寒気がして、体がこわばった。アレックを見て、それだけ長く彼から離れることを考えたからだ。回避する方法はないだろうか? 熱が戻ってきて、お腹がくすぐったくなった。あのプロトコルの対象は、種を抽出した本人のみ。今回の場合、それは彼女ではなかった。
ユルは笑い出した。以前と同じように、色のオーラが現れた。どうやら笑いの一部であるらしい。
「大丈夫か?」その様子を見て、アレックが聞いた。
「初めての公印を授与された日より、いい気分です」笑い続けながら、彼女は言った。
アレックも一緒に笑い、二人は集落への道を歩き始めた。
ユルは、アレックの手が自分の腕に寄りかかるのを感じた。顔が青ざめていた。
彼の様子が、おかしい。




